【箱根への道】青学大・原晋監督「やるべき行動の7割を抑制」…各大学駅伝チームのコロナ対策は

青学大の原監督
青学大の原監督
東洋大の酒井監督
東洋大の酒井監督

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、全ての大学駅伝チームも厳しい状況に置かれている。早大、東洋大などは3月中に選手寮を閉鎖。寮で生活を続けている大学の選手も、他者との接触を避けるため、単独の自主練習が続く。関東の大学の長距離ランナーにとって、箱根駅伝と並ぶビッグイベントの関東学生対校の5月開催が中止になるなど、6月末まで全ての大会がなくなった。各校の監督にチームの現状を電話取材した。(竹内 達朗、太田 涼)

 世界中が新型コロナの脅威にさらされている今、箱根駅伝を目指す大学駅伝チームも苦境に立たされている。わずかな救いは、感染症対策の専門家も政治家も「他人と距離を取って、一人で走ることは問題ない」としていることだろう。全てのチームが社会情勢に合わせて、単独での自主練習を続けている。

 地方への移動を抑制するという観点から、部員は帰省せずに選手寮に残るチームが多い。一方で大学本部の指示により、感染が今よりも拡大していなかった3月中に選手寮が閉鎖され、一時解散したチームもある。

 今年の箱根駅伝で2年ぶり5度目の優勝を果たした青学大は東京・町田市の選手寮で生活を続けている。原晋監督(53)は「部員はアスリートと学生という側面がある。学生としては普段であれば休日には彼女とデートしたり、カラオケしたりしていますが、それらは一切、自粛。アスリートとしては本来、やるべき行動の7割を抑制して活動しています。『3密』を避け、人と接触しないという社会のルールを守って走っています」と説明した。

 一方、今年の箱根駅伝7位の早大は3月下旬に大学の方針で、埼玉・所沢市の選手寮が一時閉鎖。部員はそれぞれの地元に戻った。相楽豊監督(40)は「競技会もできないまま解散する形となった。各自の練習内容や体調は専用アプリで把握し、調整しています」と話す。同10位の東洋大も埼玉・川越市の寮が閉鎖され、部員は帰省。「選手それぞれの環境が違うので、自分でメニューを考えて練習するしかない。今こそ、一人一人の自覚が求められています」と酒井俊幸監督(43)は強い口調で語った。

 全ての人々から日常を奪ったコロナ禍。各チームは今、できることを必死に取り組んでいる。

 一部の選手を除いて東京・世田谷の寮に残っている駒大の大八木弘明監督(61)は「食事は席の間隔を空けたり、時間をずらしたりして対応しています」と感染予防の一策を明かす。

 選手への直接指導がほとんどできないため、新たな取り組みを始めた監督も多い。法大の坪田智夫監督(42)は「これまで選手と直接対話をすることを心がけていたので、LINEはしていなかったが、この状況になって選手と始めました」。筑波大の弘山勉監督(53)は「全部員参加のテレビミーティングを始めた。こういうシステムは学生の方が詳しいので教えてもらうことも多いですね」と話す。

 授業の開始が遅れ、前期終了も大幅に遅れる。そのため夏休みは短くなり、駅伝シーズンに向けて重要な夏合宿を例年通りのスケジュールで行うのは不可能。状況が好転しなければ、関東の駅伝チームが地方で合宿を行うことは難しい。

 「状況は厳しいが、今、できることを全力でやるしかない。日本中、世界中の人々と同じく今はひたすら我慢するしかない。そう、学生に言っています。私は全力でチームを守ります」。今年の箱根駅伝でチーム史上最高の3位と躍進した国学院大の前田康弘監督(42)はきっぱりと話す。

 密閉、密集、密接の物理的な3密は厳禁だが、親密、濃密、緻密の精神的な3密を貫き、心のタスキをつなぐ。先行きが見えない中、学生ランナーはそれぞれの“箱根への道”を懸命に走っている。

 ◆東洋大五輪競歩代表池田&川野も実家戻り調整

 〇…東洋大の長距離チームには東京五輪競歩代表に内定した池田向希(4年、男子20キロ)と川野将虎(4年、男子50キロ)も所属する。選手寮が閉鎖されたため、駅伝選手と同様に実家に戻り、それぞれ自主練習。酒井監督の妻で競歩担当の瑞穂コーチ(43)が毎日、電話で連絡し、体調などを確認している。

 ◆新型コロナウイルス感染拡大の経緯

 ▽19年12月31日 中国で初の感染者

 ▽20年1月12日 中国で初の死者確認

 ▽16日 日本国内で初の感染者確認(中国籍の30代男性)

 ▽28日 初の日本人感染者確認

 ▽31日 世界保健機関が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と宣言

 ▽2月5日 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で集団感染が確認

 ▽13日 日本国内初の死者

 ▽27日 安倍晋三首相が3月2日から全国の小中高校、特別支援学校を臨時休校とするように要請

 ▽28日 北海道の鈴木直道知事が「緊急事態宣言」

 ▽3月14日 トランプ米大統領が国家非常事態を宣言

 ▽24日 東京五輪の1年延期が決定

 ▽25日 小池百合子都知事が週末の不要不急の外出自粛を要請

 ▽29日 志村けんさん死去

 ▽4月1日 政府が全世帯に布マスク2枚配布を発表

 ▽7日 安倍首相が東京など7都府県を対象に5月6日まで「緊急事態宣言」

 ▽16日 緊急事態宣言の対象区域が全国に拡

  • 昨年4月の関東私学6大学対校でデッドヒートを繰り広げた東洋大・相沢晃(右)と東京国際大・伊藤達彦。今年の大会は中止となった
  • 昨年4月の関東私学6大学対校でデッドヒートを繰り広げた東洋大・相沢晃(右)と東京国際大・伊藤達彦。今年の大会は中止となった

 ◆電話取材のみ…レースがある尊さ実感

 例年であれば、この時期は毎週末、春の対校戦や競技会が行われる。トラックシーズンの序盤戦。多くの選手が飛躍を期して、胸を躍らせ、レースに挑む。

 1年前の4月7日、私は埼玉・鴻巣市で行われた関東私学6大学対校戦を取材した。学生3大駅伝のような大観衆はなく、注目もされていないレースで目を見張る熱戦があった。メイン種目の3000メートル。東洋大の相沢晃(現旭化成)がスタート直後から飛び出すと、東京国際大の伊藤達彦(現ホンダ)だけが果敢に食らいついた。結果、8分10秒18で相沢が1位。伊藤は0秒21差の2位だった。後に思えば、今年の箱根駅伝2区で2人が演じた名勝負の序章だった。

 春先。その年に大ブレイクしそうな選手を探し出し、彼らのキラキラと輝いた目を見ながら取材することが楽しみだった。電話取材しかできない今、レースがある週末の尊さを実感する。(箱根駅伝担当・竹内 達朗)

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昨年4月の関東私学6大学対校でデッドヒートを繰り広げた東洋大・相沢晃(右)と東京国際大・伊藤達彦。今年の大会は中止となった
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