ママさんハードラー寺田明日香、長女と成長中「コロナ飛び越えてみせます」

長女・果緒ちゃんを背中に乗せて、下半身強化メニューをこなす寺田明日香(家族との写真は本人提供)
長女・果緒ちゃんを背中に乗せて、下半身強化メニューをこなす寺田明日香(家族との写真は本人提供)
果緒ちゃんを重り代わりにトレーニングする寺田
果緒ちゃんを重り代わりにトレーニングする寺田

 陸上女子100メートル障害日本記録保持者の寺田明日香(30)=パソナグループ=が、このほどスポーツ報知のメールでのインタビューに応じた。14年8月に長女・果緒ちゃん(5)を出産し、7人制ラグビー転向を経て陸上競技に復帰。育児と両立しながら、昨秋のドーハ世界陸上の舞台にも立った。東京五輪は新型コロナウイルス禍で1年延期が決定。練習場の確保も難しい中で「ウイルスの影響も飛び越えてみせます」と言い切る“ママさんハードラー”の今に迫った。(取材・構成=細野 友司)

 史上初となる五輪延期の報に接した際の思いを、寺田は率直な言葉で振り返った。

 「世界情勢を見ると、数か月後に東京五輪ができる雰囲気ではなくなっていたので延期の可能性は高いと考えていました。驚きませんでしたし、できることをやっていけたらと思います。ただ、延期になってみて、私も高野大樹コーチも(それまでは)、お互いピリピリしていたことに気付きました。延期発表翌日の練習は、緊張の糸が切れて、少しのほほんとしてしまいました」

 その後、政府の緊急事態宣言を受け、練習拠点の競技場やジムは閉鎖に。果緒ちゃんの保育園やアフタースクール(放課後学習)、くもん(塾)、ピアノ、プールや体操などの習い事もなくなった。その分、自宅で娘の成長を間近に感じられる喜びを後押しに、練習をこなす。

 「普段、特に平日の日中は娘と一緒にいる時間がないので、娘の成長を見られる時間として、一人のママとしてもうれしく思っています。練習は、場所を探して、その中でできることをしているという状況です。コーチとも直接会うのが難しいので、遠隔でメニューの指示を受けたり、報告をしたりしています」

 選手の発信力を生かす取り組みもしている。「いまスポーツにできることリレー」と題したSNS上でのビデオメッセージを企画。各陸上選手が順番に動画をつなぎ、室内での練習法や感染防止策など、外出自粛下での過ごし方を伝えている。

 「五輪延期にもコロナウイルスにも負けず、楽しみながらトレーニングをしていく前向きな姿で、少しでも元気をお届けできればと思って始めました。アスリートならではの感染症対策もぜひ知っていただきたい。私はママアスリートということで、娘と一緒に使っているトランポリンを活用してのトレーニングを紹介しました。本当は女子と男子を分けるつもりで、女子は私から、男子は飯塚(翔太)選手で始まりました。いつの間にか男女入り交じる形になっていますが、陸上界一丸で素敵だなと思います」

  • 17年、7人制ラグビーの練習で汗を流す
  • 17年、7人制ラグビーの練習で汗を流す

 14年8月の出産と、7人制ラグビー転向を経て、18年12月に陸上界へ復帰した。

 「タックルしたりされたりする経験から、ハードル自体が怖くなくなったのは大きいですね。ラグビーで様々な動きを覚えたことで、動きのイメージと体の連動性が高くなりました。また、ラグビーはチームスポーツなので周囲を俯瞰(ふかん)して見られるようになった。陸上は個人競技ではありますが、チーム作りを覚え、周囲に頼れるようにもなりました」

 昨年9月に日本新記録(12秒97)も樹立。日本女子で初めて“13秒の壁”を破り、世陸にも10年ぶりに返り咲いた。今年で30歳。だが、積み重ねた類いまれな経験に裏打ちされ、伸びしろすら感じさせる。

 「出産とラグビーを挟み、痛みには少し耐性ができているものの、やはり10代の頃とは違って細かい痛みが出ることが多くなりました。女性が30歳を過ぎて五輪で戦うなんて、と思われがちですが、世界ではざらです。30年使ってきた体もまだ完全に使いこなせていません。人は老いるもの。私にしかない体と、技術でカバーしていこうと思います」

 「21年」東京五輪。目標は1年延びたが、その分、意識高く成長する時間を与えられたとも言える。

 「復帰した当初から一貫して『東京五輪ファイナリストになる』と言い続けてきました。目標は全くぶれていません。前向きにできることを頑張り、コロナウイルスの影響も飛び越えてみせます! 完成形・寺田明日香にご期待ください!」

  • ドーハ世界陸上に出場(左から夫・佐藤峻一さん、果緒ちゃん)

    ドーハ世界陸上に出場(左から夫・佐藤峻一さん、果緒ちゃん)

 ◆寺田 明日香(てらだ・あすか)1990年1月14日、札幌市生まれ。30歳。小4から陸上を始める。恵庭北高を経て、08年北海道ハイテクAC入り。09年ベルリン世陸代表。13年6月の日本選手権を最後に引退。14年3月に結婚、8月に長女・果緒ちゃんを出産。16年秋からの7人制ラグビーへの挑戦を経て「娘に五輪に出ている姿を見せたい」と18年12月に陸上界復帰。168センチ、57キロ。家族は夫・佐藤峻一さんと長女。

 ◆やり投げ・北口、ゴール五輪の先…「リレー」に参加

 寺田とともに「いまスポーツにできることリレー」に参加した女子やり投げの北口榛花は昨年、日本記録を2度更新。東京五輪に向けては「1年延びた分、より強くなった姿を見せたい」と力強い言葉を紡ぐ。

 15年に世界ユース選手権を制した。日大入学後は右肘痛やコーチ不在で伸び悩んだ時期もあったが、19年から強豪国チェコのコーチに指導を受け、自己ベストを4メートル62も伸ばした。

 今年も1月末にチェコに渡り、課題の下半身強化に励んでいたが、コロナ禍の影響で予定を早め、帰国した。「普段通り練習ができることがどれだけ幸せか痛感した」。トレーニンググッズを購入し、自宅や公園で体幹を中心に鍛える日々だ。「ゴールは東京五輪じゃなく、その先。一年一年、ベストを出す」とさらなる飛躍を目指す。

 ◆いまスポーツにできることリレー 指名を受けた各選手が、ツイッターやインスタグラムなどSNS上に動画を投稿する形式。女子は寺田から始まり、短距離の土井杏南(24)、やり投げの北口榛花(22、ともにJAL)とつながった。男子も、スタートの飯塚が山県亮太(27)=セイコー=へとバトンパス。その後、多田修平(23)=住友電工=へ。山県は「簡単にできる茶碗蒸しの作り方」を伝授するなど練習法以外のメニューもあり、注目されている。

長女・果緒ちゃんを背中に乗せて、下半身強化メニューをこなす寺田明日香(家族との写真は本人提供)
果緒ちゃんを重り代わりにトレーニングする寺田
17年、7人制ラグビーの練習で汗を流す
ドーハ世界陸上に出場(左から夫・佐藤峻一さん、果緒ちゃん)
すべての写真を見る 4枚

スポーツ

NEWS読売・報知 モバイルGIANTS ショップ報知 マガジン報知 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真販売 法人向け紙面・写真使用申請