尾上菊之助の迫力、松本白鸚・幸四郎親子の一世一代…YouTubeで歌舞伎無料配信

尾上菊之助が3役に挑戦した「義経千本桜」
尾上菊之助が3役に挑戦した「義経千本桜」

 歌舞伎の動画が熱い。新型コロナウイルス感染拡大防止で2月末より公演中止が続く歌舞伎界。このほど、東京・国立劇場は尾上菊之助(42)を中心に無観客で上演された「義経千本桜」、松竹は「明治座 三月花形歌舞伎」で中村勘九郎(38)ら出演予定だったメンバーによる座談会をYouTubeで期間限定の無料配信を始め、話題を呼んでいる。13日に「新版 オグリ」、17日には歌舞伎座「三月大歌舞伎」と続き、さらに注目度は増しそう。歌舞伎を見たこともない人もぜひ。早速「記者が見た」で届けよう。

 ◆国立劇場「義経千本桜」

 「お客さまが全くいらっしゃらない客席を前に、しかし、カメラの向こうにお客さまがいらっしゃることを思い描きながら、精いっぱい演じました」とコメントした菊之助。忠信、知盛、権太の“3役完演”への思いを、2月のこのコーナーでも熱く語っていた。その時の取材を思い出しながら見始めた。

 衝撃的な映像から始まる。カメラが最初に映し出すのは、誰一人いない、無人の客席だ。無観客で上演したものが映像になっている、と頭では理解していても、いざその光景を見て固まった。しかし、これからその空間で開幕するのだ、という現実。見る側も覚悟して見なければならない。

 しかし、演者の集中力はすさまじい。A、B、Cプロの計3本。5時間を超えるが、一気に引き込まれた。お客さんがいない状態であることなど忘れてしまう迫力だ。

 中でも菊之助の知盛は、長男・尾上丑之助(6)演じる安徳帝を前に見せる姿が壮絶だ。いろんな役者が花道を使うシーンで客席が映り込む。その度、「そうだった無観客だった」と我に返る。しかし想像してみてほしい。出演者の視界にあるのも一面、無人なのだ。

 通常と明らかに違うのは「音羽屋~!」などと大向こうから飛ぶ掛け声が今回はないことだ。役者が見えを切ったりすると「本来ならここで入るだろうに」と心の中でその都度、思った。

 意外な発見もあった。観客がいないとセリフも、舞台上手から「バタバタ」と鳴る付け打ちの音も、響き方がずいぶん違って聞こえることだ。舞台芸術というものが、お客さんの熱気と相まって反響し合って生まれるものであることを再確認する思いだった。

 ◆歌舞伎座「三月大歌舞伎」

 17日からはいよいよ、歌舞伎座だ。これも無料で見られるとは。中でも別れた親子の悲しい再会を描く「沼津」が待ち遠しい。松本幸四郎(47)は昨秋、開演1時間前に急きょ決まった代役で主人公、呉服屋十兵衛を未経験と思えない表現力で見せた。今回、父の松本白鸚(77)が志願して十兵衛の父、雲助平作に。息子のファインプレーをたたえる気持ちを初役で応えた。

 幸四郎は「父の平作で十兵衛をやらせてもらえるとは。夢にも思わなかったこと。実の親子でこの親子をやるのはあまりない。一瞬、一瞬を大事に。本当の親子でないと出せないものがあるはず」。一世一代という言葉を普段使わない白鸚だが「今回だけは使っても構わない」とまで話した演目だ。この映像公開が決まるまで、奇跡の一世一代が幻に…と心底落胆した。しかし、今回見られることだけでなく、映像として残ることを喜びたい。

 歌舞伎を見られる幸福。心して見なければ。いつもはさして疑問を持たずに見ていた親子の共演。今回の国立、歌舞伎座でも見ることができる。劇場が開場できない中、どれだけ厳しい状況にあっても、芸の伝承は絶え間なく続いている。そんなことも改めて考えさせられたのだった。(内野 小百美)

芸能

宝塚歌劇特集
NEWS読売・報知 モバイルGIANTS 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真 法人向け紙面・写真使用申請