常盤貴子、大林宣彦監督と3作連続タッグ…最新作「海辺の映画館―キネマの玉手箱」では一人六役挑戦「役者魂メラメラ」

スポーツ報知
「大林宣彦監督と奥さんの恭子さんの関係性は、教科書みたい。憧れ以上のものがある」と語った常盤貴子(カメラ・橘田 あかり)

 女優の常盤貴子(47)が、大林宣彦監督(82)の最新作「海辺の映画館―キネマの玉手箱」で、核となる移動劇団「桜隊」の看板女優を演じた。日本の戦争の歴史をたどり、無声映画などさまざまな映画表現で展開する物語。主演映画「野のなななのか」(14年)から3作連続で大林組に起用された常盤が監督との出会い、撮影のエピソードなどを語った。当初は10日公開だったが、新型コロナウイルスの感染拡大のため延期(公開日未定)された。(加茂 伸太郎)

 大林監督との出会いは、2011年の新潟・長岡まつりだった。常盤は、09年のNHK大河ドラマ「天地人」(妻夫木聡主演)で長岡出身のお船役を務めた縁で、全国的に有名な大花火大会を訪れていた。夜空を彩る花火の下で「大ファンなんです」と伝えると、返ってきた言葉は意外にも「知っているよ」だった。

 デビューして間もない20代前半の頃の映画雑誌「キネマ旬報」のインタビュー。「今後一緒にやってみたい監督」という質問に、黒澤明監督と大林監督を挙げていた。「ずっとお会いしたい監督だったので、勇気を持って声を掛けました。記事を読んでくださっていたみたいで、すごい(幸せな)ことだと思いました」

 さらに常盤を喜ばせたのが、翌年の夏に届いた主演映画「野のなななのか」のオファーだった。「花火大会の別れ際に、監督が『一緒に映画撮ろう』と言ってくださったんです。「絶対ですよ!」と言いましたけど、この世界では、かなわないことも多々ある。それが早速、声を掛けてくださって。約束を守ってくれたんだってうれしくなりました」

 大林組には「現場にマネジャーを連れていかない」というルールがある。いつか呼ばれたときにと、常盤も若い頃から実践。いい意味で業界慣れすることなく、自主自立を大切にしてきた。「性格的にその方が合っていた。マネジャーがいることが当たり前にならないように(早くに)気付けたのは重要だった。(精神的に)強くなります。社会勉強ですね」ときっぱり。「マネジャーを介すと、良い部分も悪い部分もあって(相手の)真意が分からなくなり、本心が見えにくくなってしまう。でも、大林組には、それは不必要。遠回しに言わずダイレクトに言い合うので、人と人の付き合い方ができるんです」

 本作では、日本の戦争の歴史が、無声映画やアクション、ミュージカルなどさまざまな映画表現で展開される。大林監督の故郷の広島県尾道市で撮影され、常盤は「桜隊」の看板女優を始め、女性ダンサー、原爆ドーム前の女など一人六役に挑んだ。

 「花筐/HANAGATAMI」(17年)を挟み、3作品でタッグ。監督の要求にいかに応じられるか。その思考にいかに近付けるか。現場では瞬発力が求められる。「『僕は突拍子もないことを言い出しました。どうする?』っていう挑戦状。監督も分かってやっている気がするんです。役者魂がメラメラと燃えて、やる気がみなぎりますね」

 キャリアを重ね、年下の監督、演出家との仕事も増えた。ダメ出しが減り、台本を「自分の言葉に直していい」と言われる機会も多い。それだけに、大林監督との仕事から受ける刺激は大きい。「(大林組のように)台本を直さず、自分の刻んだことのないリズム、発したことのない言葉遣いでやる方が幅が広がる。新たな一面を引き出してもらえる可能性があると思うんです」と語る。

 演出家で俳優でもある夫の長塚圭史(44)との共演シーンは急きょ追加されたものだ。長塚は先に現地入り。常盤は翌日の撮影だったが、「これまでの経験上、(共演は)あり得るなと思ったんです」。とっさの機転で予定を早め、昼に単身現地入りしていた。「行きの道中、マネジャーが「長塚さんが撮影をしているところに、常盤さんもいてほしい」と慌てて電話をしてきたときには「そのつもりだから大丈夫!」と言える状況でした。無事に間に合ったけど、カオスっぷりは他に例を見ない(笑い)。監督の脳内が現場に表れるから、どう転んでいくか分からない。でも、その中で生きていくのはある意味、楽しい」

 出会いから9年、大林監督と過ごす時間は何ものにも代えがたい財産になった。「唯一無二の映画監督を経験できるのと、経験できないのでは、全然違う。今世に生まれてきて良かったなと思える。それぐらいに運命的なものを感じています」

 ◆京都紹介番組で“面倒くさい女”に
 常盤はBS11、KBS京都、TOKYO MX共同の新番組「京都画報」のナビゲーターを担当。美・知・芸・技・食に焦点を当て、古都・京都の魅力を届けていく。「撮影に入ったら一つのことしか考えられなくなるので、レギュラー番組は苦手なタイプ」というが、「やってみようと思えたことが、ちょっとした成長。京都の人や文化を知るチャンス。“面倒くさい女”になっていく楽しみがある。今年はそのプロローグかな」と話した。

 ◆「海辺の映画館―キネマの玉手箱」 尾道の海辺にある唯一の映画館。閉館最後のプログラムは「日本の戦争映画大特集」のオールナイト上映だった。3人の青年は劇場を襲う稲妻の閃光(せんこう)に包まれ、スクリーンの世界にタイムリープ。3人のヒロインが戦争の犠牲となる姿を目の当たりにする。映画は「虚構の世界」だが、彼女たちには「現実の世界」。青年たちにも戦争がリアルなものとして迫る。179分。

 ◆常盤 貴子(ときわ・たかこ)1972年4月30日、神奈川県生まれ。47歳。91年女優デビュー。93年フジテレビ系「悪魔のKISS」、95年TBS系「愛していると言ってくれ」に主演。2003年の映画「赤い月」で日本アカデミー賞優秀主演女優賞。主な出演ドラマに「ビューティフルライフ」「グッドワイフ」(いずれもTBS系)、NHK連続テレビ小説「まれ」。映画は「引き出しの中のラブレター」「だれかの木琴」などに主演。09年10月に演出家、俳優の長塚圭史と結婚。

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