先月29日に新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなったザ・ドリフターズの志村けんさんが生前通っていた東京・入谷のちゃんこ鍋店「玉勝(たまかつ)」店長の高橋正一さん(79)が1日、40年来の親交があった志村さんの訃報に「悲しすぎて涙も出ない」と悼んだ。
志村さんが亡くなる10日ほど前。初めて来店した2人組の客が、帰り際に志村さんの事務所スタッフと身分を明かし「入院中の志村さんに『玉勝の主人が元気か確かめてきてくれ』と言われて来たんです」と告げたという。「だから志村さんも、少したったら来ると思っていた。今思うと、自分も具合悪いのにこっちを気遣ってくれていたんですね」
志村さんは下積み時代に近所に住んでおり、約40年前にドリフターズで初めてもらった給料袋を握りしめてのれんをくぐったのが同店だった。以来、月2回のペースで通い、昨年TBS系「人生最高レストラン」でも同店を紹介。「うちは野菜が多いですが、志村さんは別注でニラを山盛りにして食べて『体調がよくなった気がする』と言って帰っていました」
食べる時はいつも無言。ドリフのメンバーに教えることなく、誰にも気を使わずいられる場所。志村さんは「ほっとする。落ち着いて食事できるよ」と話していた。5年ほど前、高橋さんが「いつも(仕事)楽しいでしょう」と声をかけると「全然そんなことないですよ。収録が終わって家に帰ると『大丈夫だろうか、ミスしていないだろうか』と心配で眠れないくらいです」と普段語らない胸の内を吐露したこともあった。
志村さんの代表的なネタの一つ「ひとみばあさん」は先代おかみである高橋さんの母がモデルだったという。「ある番組で明かしていたみたいで私も聞いて驚きました。無言で食べながらも他人の髪形など周囲を観察していたんですね」と懐かしんでいた。(浦本 将樹)