テレビ各局を襲った東京五輪1年延期ショック…前代未聞の大規模編成見直しが今、始まる

新型コロナ感染拡大の中、来夏への延期が決まった東京五輪のモニュメント(日本スポーツ協会ビル前)
新型コロナ感染拡大の中、来夏への延期が決まった東京五輪のモニュメント(日本スポーツ協会ビル前)
東京五輪の1年延期で前代未聞の規模の編成見直しを迫られることになったNHK
東京五輪の1年延期で前代未聞の規模の編成見直しを迫られることになったNHK

 新型コロナウィルスの感染拡大を受け、1年の延期、来年7月23日の開幕が決まった東京五輪。当初の日程、今年7月24日から8月9日までの開催スケジュールで中継態勢を整えてきたNHKと民放各局にとって、まさに大激震。これまで練り上げてきた放送予定を一から練り直す緊急事態となった。

 私は先月19日から31日にかけ、毎月1回行われる在京キー局の定例社長会見を“ハシゴ取材”。日々、目撃したのは、五輪中継にかけてきた各局トップの苦悩の表情の数々だった。

 まずは19日、東京・紀尾井町のホテルニューオータニで行われた民放連の大久保好男会長(69)の定例会見。この時は開催延期が取りざたされ始めた時期。延期の際のJC(ジャパンコーソーシアム=NHKと民放各社がその枠組みを超えて共同制作する放送機構)の放送体制について聞かれた大久保会長は「仮定の質問にはお答えできません」と断った上で「IOCの予定通り進めるという声明通りに進めます。もちろん、担当者はあらゆる事態を想定して頭の体操をしていると思いますが、それに付随した準備を進めるだけです」と淡々と答えた。

 その後、事態は一変。24日には五輪の来年への延期が発表された。

 その前日の23日、東京・汐留の日本テレビで行われた小杉善信社長(66)の定例会見。この時点で、ほぼ延期は濃厚となっていたが、同社長は「1週間前までなら『やる予定で全て動いている』と答えていた。しかし、あらゆるシミュレーションはしてきました。延期という言葉が出てきましたので、それに関しての対応も取っていかなければならない」と淡々と話した。

 その上で「(五輪中継は)1社でやるわけでなく、オリンピックの放送権は運用含めて民放とNHKが一緒になって運用しているもの。1社だけでなく、とにかく、IOCの決定を待って、どういう状況に陥ってもすぐに動けるような態勢を取っていきたい。どうやれば一番、スムーズにやれるのかを考えています」と続けた。

 25日、東京・渋谷のNHKで行われた木田幸紀総局長の定例会見。木田氏は放送計画の見直しに着手していることを明かした上で「現場は知恵と工夫を出して、全力を振り絞って取り組んでいかないといけない。非常に厳しい状態です」と本音を漏らした。

 同局では五輪期間中の5週間、大河ドラマ「麒麟がくる」(日曜・後8時)5話分を休止することにしていたが、五輪延期で放送枠がぽっかり空いた状態に。さらに同局の「東京2020オリンピック・パラリンピック放送」スペシャルナビゲーターを務める人気グループ「嵐」は今年年末での活動休止を発表していたが、担当者は「スペシャルナビゲーターについては現時点での変更は考えていません。何も決まっていません」とだけ話した。

 同日、東京・赤坂のTBSで行われた佐々木卓社長(60)の定例会見では、編成担当の伊佐野英樹取締役が「延期が発表されたのが、昨日のことなので、これからの検討になります。レギュラー(番組)を復活させるのか、特番を組むのか、ベストなものを選択していきたいと思います」と答えた上で「(五輪中継を)朝から晩まで丸1日やる日が7月の末と8月の頭に3日間ありました。昼の時間はベルト番組があるので、それを元に戻します。夜の方はどうするか、これから検討する形です」と続けた。

 合田隆信編成局長も「7日くらいゴールデンタイムに食い込む形でした。昼間の時間もさらにあるので、かなりのボリューム感はあります。水曜日、金曜日、土曜日は1日中やることになっていました」とした。

 最後に五輪延期への思いを聞かれた佐々木社長は「世界中で新型コロナ感染が拡大している中、アスリート、観戦者が万全の状態で開催できないという中での苦渋の決断だったなと思います。最高のコンディションでオリンピックを開催していいただき、我々テレビ局もベストを尽くして、放送したいという思いは変わりません」と決意を語った。

 26日、東京・六本木のテレビ東京で行われた小孫茂社長(68)の定例会見では、同社長が「時間数で60時間強、五輪を放送する予定でした。それが今回、延期となった。この1か月くらい、延期の不安が出てから代返策を検討するよう指示を出したが、具体的にはこれからとなります」と答えた。

 27日に東京・台場のフジテレビで行われた遠藤龍之介社長(63)の定例会見。遠藤社長は「オリンピック(中継)がなくなって、そこの枠に何(番組)をかけるか。今後も新型コロナの終息にはしばらくかかるなど、各局、瞬発力や企画力がより問われる年になる」と気合の表情で話した。

 編成担当の石原隆取締役は「(五輪放送の)総時間は(公表を)遠慮させていただきますが、レギュラー番組の復帰と特番の編成で乗り切りたい。大至急でスピード感覚を持って対処したい」としたが、大きな問題なのが、同局の看板ドラマ枠「月9」だ。

 13日スタートの織田裕二(52)主演の「SUITS/スーツ2」(月曜・後9時)は7月からの五輪中継をにらんで、通常の3か月1クールでなく、13放送回以上のロングラン放送となることが決まっていた。しかし、東京五輪の延期で中継自体が“消滅”した。

 私は思わず「『SUITS』は予定通りロング放送するのか」と聞いた。この質問に石原氏は「台本も制作し、全体の流れもできていますが、それを変更するのか、その通りやる(放送する)のか、現在、検討中です」と答えた。さらに「13回以上の放送には変わりがないのか」と聞くと、石原氏は「それも含めて検討中です」と返答。看板ドラマ枠「月9」が完全に振り出しに戻っていることを明かした。

 しんがりとして31日に東京・六本木のテレビ朝日で行われた亀山慶二社長(61)の定例会見。この日は早河洋会長・CEO(最高経営責任者、76)も半年に1回の出席。五輪中継について、早河会長は「競技中継の振り分けは各局、確定していたものを変えるのか、そのまま行くのかですね。そのままいくのか仕切り直すのか。会場などの都合で競技日程が変わる可能性もある。民放連のオリンピック委員会もありますから、そこを中心に話が進んでいくのではがないでしょうか」と答えた。

 編成担当の西新取締役も五輪中継の消滅でポッカリと空いた“穴”について、「レギュラー編成に戻しつつ、詳細についてはこれから検討していくことになります」と答えた。

 まだまだ終息の気配すら見えない新型コロナ余波の中、テレビ各局が迫られているのは、前代未聞の規模となる番組編成の大幅見直し。民放に限って言えば、今回の五輪中継に巨額のCM料を投入してくれたアドバタイザー(広告主)もいったん白紙に。1年後に同じ額が保証されているわけでもないだろう。

 1年後の夏、57年ぶりに首都・東京に帰ってくる「スポーツの祭典」の完全中継に向け、各局が超えなければならないハードルはあまりにも高い。(記者コラム・中村 健吾)

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