相次ぐロケ中止に「テレビ界の笑いの王様」志村けんさんの死…新型コロナショック直撃の民放各局の今

新型コロナウィルスによる肺炎で亡くなった「テレビ界の笑いの王様」志村けんさん
新型コロナウィルスによる肺炎で亡くなった「テレビ界の笑いの王様」志村けんさん
新型コロナ余波の中、全社員の8割を在宅勤務とし、2割の出社での放送継続に踏み切った東京・六本木のテレビ東京
新型コロナ余波の中、全社員の8割を在宅勤務とし、2割の出社での放送継続に踏み切った東京・六本木のテレビ東京

 希代のコメディアン・志村けんさん(享年70)の命を奪った新型コロナウィルスが日本の文化、芸術活動をも瀬戸際まで追い詰めている。美術館、博物館は1か月以上の長期休館。映画、演劇、音楽など幅広い分野のアーティストや関係者たちがイベントの全面中止によって、経済的に大きなダメージを受けている。

 まさに「文化芸術の危機」と言える状況の中、ドラマにバラエティーと、私たちの生活に多くの楽しみ、喜びを与え続けてくれている民放各局の番組作りもまた大ピンチに陥っている。

 私は先月19日から31日にかけ、毎月1回行われる在京キー局の定例社長会見を“ハシゴ取材”。日々、目の当たりにしたのは、各局トップたちの厳しい表情の数々だった。

 まずは19日、東京・紀尾井町のホテルニューオータニで行われた全国民放の総元締め・民放連(日本民間放送連盟)の大久保好男会長(69)の会見。新型コロナの感染拡大の中、会見は記者1人1席、席間を大きく離した状態で開催された。

 大久保会長は「各局の番組収録ですが、人を入れずに収録し、海外ロケが難しくなっているのも聞いている。イベント事業にも相当、影響がある。経営面への影響も少なからず、相当、大きなものがあると思っています」とした上で「放送事業者としては、正確な情報を伝える公共メディアとしての使命がある。放送を止めることはできない。使命、責任を果たしていく形で各社進めている」と続けた。

 23日、東京・汐留の日本テレビで行われた小杉善信社長(66)の定例会見。同局も新型コロナ対策として1社につき記者は2人まで。天井の高い会場でマスク着用厳守のもと開催された。

 業績について「長引けば影響が出てくると思います。春休みなどのスポット広告がダメージをいくつか受けていると聞いています」と明かした小杉社長。

 すでに社員の4割以上が在宅勤務を経験していると明かし、広告クライアントについて、「企業の広告出稿を控える動きを注視していかなければならない。(新型コロナ余波が)いつまで続くかを注視しながら、クライアントにも(出稿)再開の時に喜んでいただけるようにしたい」とした。

 海外ロケが売り物の「世界の果てまでイッテQ!」(日曜・後7時58分)など人気番組への影響について、編成担当の福田博之取締役は「影響はかなり出ています」ときっぱり。「特に海外ロケを頻繁に行う番組。『アナザースカイ』、『イッテQ!』も新しくロケに行けず、流すものがなくなった場合、国内ロケになることもある。ドラマのロケも現在、控えて、セットを組んで対応しています」とし、特に「イッテQ!」について「(海外ロケの)ストックがすぐなくなるという状況ではないが、ずっとストックがあるわけではない。いろいろ工夫していかなければいけない」とした。

 さらに夏の一大イベント「24時間テレビ」の放送について聞かれた小杉社長は「全然、やる予定です。もちろん。やらないといけないという使命感を我々も持っています。どんな形であってもやります」と明言した。

 25日、東京・赤坂のTBSで行われた佐々木卓社長(60)の定例会見では、ロケ番組への影響について、合田隆信編成局長が「海外ロケを行う番組がいくつかありますが、現在、海外にスタッフが行くことは一切、やっていません」と答えた。

 その上で「海外ロケ(のストック)がなくなった後は国内ロケやスタジオ収録を拡充するなど、各番組の担当者が考えているというのが実際です」と続けた。

 また、春と秋に行う「オールスター感謝祭」について、合田氏は「感染対策を最大限に配慮した形で、スタジオに160名のタレントさんが集まる形をやめ、がらっと違う演出で行います」と大幅変更を明言。同番組の人気企画「赤坂ミニマラソン」についても「赤坂では行いません。一般の方が集まらないように配慮しながら最終的な詳細を検討中」と話した。

 その日の夜行われた小池百合子都知事(67)の「新型コロナは感染爆発の重大局面にあり、今週末の外出自粛を」という緊急会見を受け、26日に東京・六本木のテレビ東京で行われた小孫茂社長(68)の定例会見。「昨夜の都知事の会見以降、バタバタになっていますが」と話し始めた同社長は「首都圏がワンステージ、深刻な方に変わったと受け止めています。最悪の事態に備えて、テレビ東京の場合はステージ5段階に入っています。明日は全社員の2割強が出社。残りの8割が在宅で通常の放送をやってみます。最終的には1割の出社でできるかと思っています」と緊急態勢で放送にあたることを明かした。

 同局のロケ番組、特に外国からの来訪者が主人公の「YOUは何しに日本へ」(月曜・後6時25分)、「世界!ニッポン行きたい人応援団」(月曜・後8時)などの番組について、高野学総合編成局長は「『YOU―』については、訪日する外国人が激減しており、ロケはしていますが、撮れ高は取れない状態です。『ニッポン―』も渡航制限が出て、ご本人の希望もあり、来日できない取材対象者が出ています」と明かした。

 その上で「番組作りに制限がかかっていますが、番組のファンの期待を裏切らないよう、各番組でこの状況の中、何ができるかを考えて放送を継続したいと思います」とした。

 さらに「家ついていってイイですか」(水曜・後9時)についても、高野氏は「小池都知事の緊急会見を受けまして、この時期に『家ついていってイイですか?』は、ちょっとどうなの? ということでこの週末に関してはロケを控えています」とし、街歩きで人気の「モヤモヤさまぁ~ず2」(日曜・後6時半)についても「ロケはやっていません」とした。

 さらに地元住民との握手など触れあいで人気の出川哲朗(56)の「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」(土曜・後7時54分)についても、「コロナ感染の問題が始まってから、ロケはしていません。人情、触れあいが大切な番組ですから、今の状況は苦しいのですが、番組ファンの安全を第一に考えています」とした上で「ロケのストックがどのくらいあるかのお応えは差し控えさせていただきますが、番組のファンを裏切らない形での企画なども今、考えているところです」と答えた。

 27日、東京・台場のフジテレビで行われた遠藤龍之介社長(63)の定例会見でも同局は受付で取材する記者の体温測定を実施。37・5度以上ある記者は出席できない形をとった。

 会見冒頭、「先月の会見で(新型コロナは)国難と申し上げましたが、感染者も50万人を超えました。きちんと命を守る報道をします。在宅率が非常に増えていて、視聴者の皆さんのストレスをどう解消するか。解消できるプログラムを組みたいと思います」と話した遠藤社長。

 新型コロナ余波の中での放送継続については「今、無症状感染の若者たちがいるのが問題になっている。テレビの使命は魅力的なコンテンツを提供して、そういう人たちに家でテレビを見るのが楽しいと思ってもらうこと。そうした形で貢献したい」と話した。

 編成担当の石原隆取締役は「エンタメ系の番組、ドラマについては、収録、撮影に関しまして、スタッフ、出演者のマスク着用、検温、消毒を徹底しています。ロケにも予防のためのアレンジを加えています。先週のフイギュアスケート世界選手権の中止を受けては映画、坂上忍さんの生番組、生の音楽番組などを急きょ編成しました」と話した上で「夕方帯の(アニメ)『ONE PIECE』の特別編成などは若者層の数字が伸びているという分析もあるので、そうした点では楽しみを提供できたと思っています」とした。

 「まだ、撮影が止まってしまって放送が間に合わないという状況にはまだなっていない」と報告した石原氏。9日スタートの石原さとみ(33)主演ドラマ「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」(木曜・後10時)は医療ドラマゆえにロケ予定だった病院が別の場所に変更になったと明かした上で「病院という設定に限らず、ロケの事情にいろいろな影響が出てきているとは聞いておりますが、今のところロケ場所が完全に使えなくなったとか、ロケが不可能になったという話は聞いておりません」と各ドラマなどの撮影状況を説明。「今後、そういったこと(ロケ不可能な状況)が起きる可能性も視野に入れていかないといけない。スケジュールを含めて撮影の準備を、スタジオの方に出来るものは持って行くとか、ロケの場所を考え直すこととか、いろいろな選択肢を持って準備している」と続けた。

 バラエティー番組については、「特にロケの場合、多く人が集まってしまうようなことにならない形に、アレンジして行うように心がけている」と強調。海外ロケについても「予定していて、それを止めて、何かに差し替えて国内でやっていることも聞いておりません。たまたま、この時期、大きな海外ロケがなかった」と現時点の影響は出ていないと明かした。

 31日、しんがりとして東京・六本木のテレビ朝日で行われた亀山慶二社長(61)の定例会見。半年に1回の出席となった早河洋会長・CEO(最高経営責任者、76)は新型コロナの影響について「(国)内外ともにリーマンショックに匹敵する経済活動の収縮が言われています」と、まず話した。

 その上で「日本が景気後退局面に入れば、昨年来のテレビ広告の低迷に加え、アドバタイザー(広告主)の広告出稿に極めて大きな影響が出る可能性があります。新年度は非常に厳しい状況を覚悟しているところであります」と明かした。

 それでも「対応策として、デジタル時代への変化を見据えて新しい時代のテレビ局を目指す経営計画を立てています。2017年度から2020年度までの経営計画『テレビ朝日360度』に従って、組織改編を作成中。リーマンショックの時は広告収入の激減を回復するのに3年から5年を要しましたが、現場中心に全社一体になって、危機を乗り越えました。今回も生半可な業績改善では立ちいかないと思いますが、そうしたノウハウを生かして乗り切っていきたいと思っています」と前を見据えた。

 一方で同局のドル箱であるロケ番組は軒並み大きな影響を受けている。

 3月15日の放送回で番組最高の平均視聴率22・2%(関東地区)を記録した人気番組「ポツンと一軒家」(日曜・後7時58分)について、編成担当の西新取締役は「ストックはまだあると思います」とだけ答えた。4月スタートの「ナスD」こと友寄隆英ディレクター初の冠番組「ナスDの大冒険TV」(水曜・深夜2時)についても「これまでナスDがいろいろ行っているので、そのVTRを流す形となると思います。その後は対策を立てて考えて行く形と思います」とした。

 さらには放送中の戦隊ヒーロー番組「魔進戦隊キラメイジャー」(日曜・前9時半)にキラメイレッド・熱田充瑠役で出演中の小宮璃央(17)が新型コロナ検査で陽性反応を示したことまで会見の場で明かされ、激震が走った。しかし、西氏は務めて冷静に「先週末に体調不良があって、検査を受ける前から撮影は止まっていますが、状況は落ち着いています。5月中旬の放送分まではすでに撮ってあります」と、ストックがあることを明かした。

 どうだろう。新型コロナとの長期戦覚悟の戦いへの各局トップや制作責任者たちの今の思いを伝えたくて、全てをリポートしてみた。日々の会見で感じたのは、決してウィルスの恐怖に負けない番組作りへの熱い思いの数々だった。

 新型コロナは数々の人気番組から貴重なロケの機会を奪い、ついには40年以上に渡ってお茶の間を笑わせてきた「テレビ界の笑いの王様」志村さんの命まで奪った。しかし、各局のテレビという娯楽の王様を守り抜こうとする熱い思いだけは、決して奪えない。それだけは確かだ。(記者コラム・中村 健吾)

新型コロナウィルスによる肺炎で亡くなった「テレビ界の笑いの王様」志村けんさん
新型コロナ余波の中、全社員の8割を在宅勤務とし、2割の出社での放送継続に踏み切った東京・六本木のテレビ東京
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