K‐1強行開催で武尊が号泣して訴えた「格闘技のパワー」を体現した愛鷹亮のどつき合い

クルーザー級タイトルマッチの1回、シナ・カリミアン(左)に右ストレートを放つ愛鷹亮。激しい攻防を見せたが、判定で敗れた(カメラ・相川 和寛)
クルーザー級タイトルマッチの1回、シナ・カリミアン(左)に右ストレートを放つ愛鷹亮。激しい攻防を見せたが、判定で敗れた(カメラ・相川 和寛)

 “K-1 年間最大のビッグマッチ”「K-1 WORLD GP 2020 JAPAN ~K’FESTA.3~」が22日、さいたまスーパーアリーナで決行された。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、西村康稔経済再生担当相から埼玉県・大野元裕知事を通じて自粛を要請される中、前座を含む全25試合を強行される異例の大会となった。

 K―1のエースでスーパー・フェザー級王者の武尊(28)=K―1 GYM SAGAMI―ONO KREST=は、ダブルタイトルマッチを戦う相手だったISKA世界ライト級王者のアダム・ブアフフ(モロッコ)が来日不能となり、セミファイナルに降格(メインはスーパーウエルター級トーナメント決勝)。3日前に発表された代役、ペッダム・ペットギャットペット(タイ)とのノンタイトル戦に2回49秒、KOで勝利しリングで号泣した。マイクを握り、何度も嗚咽(おえつ)しながら「こんな状況でいろいろ言われますけど、やっぱり格闘技ってすごいスポーツだと思う。今こそ、こういう時だからこそ、格闘技がみんなにパワーを与えていけると思うので、団体とか関係なく、世界中を元気にしていきたい。格闘技、最高!」と絶叫した。

 通常なら1万5000人規模の大会だが、この日は、観客の密集状態を解消するため9000席とし、観衆は6500人と発表された。さいたまスーパーアリーナのいいところは、客席が伸縮自在で、そのレイアウトによって、満員のように見せることができることだ。記者はインタビュールーム兼プレスルームで、モニターで試合を見て、選手が来るのを待つが、そこを抜け出して客席の最後列から見た試合がすごかった。

 セミ前のK-1クルーザー(90キロ以下)級タイトルマッチ。身長2メートルの王者、シナ・カリミアン(32)=イラン=に武尊と同門の愛鷹亮(30)が挑んだ試合だった。昨年8月の大阪大会ではノンタイトルマッチで愛鷹がKO勝利の番狂わせを起こしている。満を持してのタイトル挑戦だ。

 180センチの愛鷹は、20センチ長身のカリミアンにいきなり右を大振り。肩車した相手とスパーリングして磨いた荒技だ。1回から、この“スイング”フックの連打でダウンを奪った。2回も右を振っていくが、カリミアンの右バックブローでダウンを喫した。パンチの連打にひざを食らい、ダメージはあったはずだが、それでも右を振り続けた。3回も打ち合い続け、判定に。0-3で王座奪取はならなかったものの、会場をヒートアップさせた。

 武尊のような緻密なファイトではないが、客席の最後列からもわかる大振りパンチのクリーンヒット。これこそ、重量級の醍醐味だ。武尊がアピールしたように、格闘技を知らない世界中の人にパワーを与えることができるのは、これだろう。新型コロナウイルスという見えない敵と闘い、不安だった胸の内をリングで爆発させた武尊。愛鷹は2メートルという見えすぎる大きな敵に玉砕覚悟で、どつき合いを繰り広げたのだ。

 愛鷹は「悔しいの一言です。前回戦ったより強かったですね。自分を出し切れなかった。もっと出せたはずなので…、言い訳に聞こえちゃうんですが、正直な気持ちです」と悔し涙を見せた。そして「俺は絶対にK‐1チャンピオンになります」と言ってインタビュールームを去った。

 日本人にとってヘビー級はさすがに無理があるが、クルーザー級なら重量級での可能性が見えた。帰り際に愛鷹に声をかけた。「不本意な結果かもしれないけど、あのどつき合いでパワーをもらった人は多かったはず」「ありがとうございます。このまま階級を変えずにクルーザー級でいきます」と手を差し出された。このご時世、選手との接触は取材マナーとしてまずいと思ったが、握り返して、パワーをもらうことにした。(記者コラム・酒井 隆之)

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