気温20度。本来なら絶好の開幕日和だった。しかし春の訪れを感じることはできても、球春到来を告げる歓声は、甲子園球場から聞こえなかった。スマートフォンで球場の外観を撮影する人はいたが、周辺は閑散。球場内では、センバツに向けて一、三塁側のカメラマン席の横に設けられたブルペン用マウンドが撤去されていた。
球場外周には、歴代の春夏優勝校名を刻んだ「高校野球記念レンガ」が設置されている。昨年優勝した東邦(愛知)の右横には、どの高校が刻まれることになったのかと、思いをはせた。
球場近くにある甲子園素盞嗚(すさのお)神社には、出場予定だった倉敷商(岡山)や智弁学園(奈良)、鶴岡東(山形)の選手が願い事を記した絵馬があった。全国制覇を祈念するボール形の絵馬を見ると、胸が痛んだ。「夏、必ずここに来ます!」「コロナが終息しますように…。穏やかな日本にもどりますように…」というメッセージは、全ての球児の願いだろう。
これまでの努力が無駄にならないように、夏は49の地方大会が無事に開催されることを祈るばかりだ。(大阪アマチュア担当・伊井 亮一)