静かすぎる球場、アナの実況もぜ~んぶ筒抜け…無観客試合に迫る(後編)

15日、ロッテとの練習試合を、ガランとしたスタンドから見つめる中日のマスコット・ドアラ
15日、ロッテとの練習試合を、ガランとしたスタンドから見つめる中日のマスコット・ドアラ
2月29日、無観客のナゴヤドームで行われた中日対広島のオープン戦。ネット裏後方に放送ブースが設置されている
2月29日、無観客のナゴヤドームで行われた中日対広島のオープン戦。ネット裏後方に放送ブースが設置されている

 新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、オープン戦を無観客で行ったプロ野球。随時掲載企画「迫る」では、試合に携わった選手、首脳陣、関係者らの苦労を掘り下げている。後編は、中継を実況したアナウンサーが登場。普段はかき消されるはずのあんな声、こんな声が聞こえてしまっていた。

 無観客試合では、試合を中継するアナウンサーも思わぬ苦労に直面していた。主に中日の主催試合を中継するCBC(TBS系列)テレビの江田亮アナは「ディレクターと『選手が聞いて気分を害するかもしれないコメントは控えよう』と決めていた」と明かす。

 ナゴヤDは、放送ブースとグラウンドを隔てる窓がない。静寂の中で実況すると、声がグラウンドまでダイレクトに届く。関係者によると、中日遊撃手の京田は「静かすぎて守備位置から江田アナの声が聞こえた」と話していたという。

 1日の中日・広島戦(ナゴヤD)で、こんな“事件”があった。6回2死一塁、中日のドラフト2位左腕・橋本が広島・長野を1ボール2ストライクと追い込んだ。解説の牛島和彦さんが「ここでズバッと内角に来たら面白いですね」と話した直後、捕手の木下拓がスッと打者の内角に寄った。江田アナは思わず叫んだ。

 「木下拓が内角に寄ったぁ!」

 その声は、静まりかえったドーム全体に響いた。この球は外角へ外れてボール球となり、フルカウントまでいって二ゴロ。声が結果に影響を及ぼしたとは考えづらいが、江田アナは「遊撃手でも聞こえるんですから、打者や捕手は…。熱戦に水を差すところでした」と苦笑いだった。

 同アナによると、実況アナは「沈黙を怖がる」傾向があるという。「普段は解説者が厳しいことを言い始めた場合、客席で『〇〇選手がんばれ』といったプラカードを掲げた少年ファンを映すなどして“和らげる”ことが多いのですが、それもできませんでした。実況アナもファンの声に助けられているということを、無観客中継で身に染みて感じました」と振り返っていた。

 中日・京田内野手「特に打席に向かうとき、歓声や応援歌がなく淡々と進んでいくと、なかなかモチベーションが上がらないことが分かった」

 中日・福田内野手「本当に静かなので、相手の打球の音が明確に聞こえて外野(左翼)の守備が守りやすいという側面はあった。ただ打席に入って応援歌が流れなかったり、ヒットを打っても拍手や歓声が聞こえないのはすごく寂しい」

 DeNA・今永投手「本当に不思議な感覚の中での野球。改めてファンの方の声援という見えない力を感じた」

 広島・鈴木誠也外野手「いつもはお客さんが入った中でやっているので、モチベーションを保つのは難しい。ただ今後慣れてくると思うし、集中できていると感じる部分もあります」

 ソフトバンク・本多内野守備走塁(一塁ベース)コーチ「声で指示が通りやすい。ただお客さんが入った時は声では通りづらくなる。伝達方法はあるけど(若い選手が)気付いてくれるか心配」

 ロッテ・レアード内野手「不思議な感じがした。(本塁打後のすしポーズは)ためらいながらやった。いかにファンの応援に後押しされているかが分かった」

 ◆ホームラン、ファンの“視線の動き”で見極めていた

 首都圏のある民放アナウンサーは、本塁打の実況の難しさを指摘した。「パーンと打球が上がって(実況席から)目で追うんですけど(スタンドの)お客さんが立ち上がることで着地点を探していたことに気づきました。無観客だと一切分からない。僕も含めみんなそう言っています」。ファン全体の“視線の動き”が打球を追う手助けになっていたと知ったという。

15日、ロッテとの練習試合を、ガランとしたスタンドから見つめる中日のマスコット・ドアラ
2月29日、無観客のナゴヤドームで行われた中日対広島のオープン戦。ネット裏後方に放送ブースが設置されている
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