日本野球機構(NPB)と日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)による「新型コロナウイルス対策連絡会議」の第3回会議が12日、都内で行われ、専門家の提言として具体的な応援行為の禁止が盛り込まれた。広島のスクワット応援が「感染リスク高」に指定されたほか、巨人・パーラの“シャークダンス”まで要検討対象となった。また、12球団は直後の代表者会議で最短開幕日を4月10日とする複数の日程案を協議。日本シリーズ(S)の日程を11月末にずらし、クライマックスシリーズ(CS)を含めて開催する方向となった。
2020年のプロ野球は、異質な静寂の中で幕を開ける。Jリーグと合同の第3回対策連絡会議。専門家チームから受理した感染症対策の提言書には、ファンを守る術(すべ)が列記されていた。観客に対する予防策として、応援歌の合唱や鳴り物を使用する応援スタイルの変更とハイタッチの禁止が盛り込まれ、具体的な応援行為がリスクごとに分類されていた。
「リスク高」に分類されたのは、広島のスクワット応援やDeNAの守護神・山崎が登場する際の“ヤスアキ・ジャンプ”。接触感染リスクを伴う名物応援に加え、飛沫(ひまつ)感染リスクがあるとして鳴り物や観客同士のハイタッチも挙げられた。拍手や通常の声援でさえ「感染リスク中」。なるべく自粛するよう促された。さらには、巨人の応援スタイルといえるタオル回し、果ては新外国人・パーラの両手を上下に合わせるシャークダンスまで「感染リスク要検討」に“指定”された。
専門家チームの賀来座長は「ゼロリスクはあり得ない中で、どれだけリスクを下げていけるかが重要」と強調。NPBの井原事務局長は「必ず守らないといけない提言。応援団にも啓発させていただく」と重く受け止めた。感染リスクの高い応援行為の自粛が事実上、開幕の条件となった。
専門家チームからリアルな提言を受け、12球団は代表者会議を開催。斉藤コミッショナーは「事態が流動的なために一定の日にちだけを確定的には言えない」として、開幕日の候補を複数挙げて日程案を協議した。開幕の候補日は最短4月10日で、最も遅い想定は同24日。14日など火曜日も検討対象とした。当初11月7日開幕予定だった日本Sを21日開幕に遅らせることで、延期分の公式戦をカバー。本拠地以外の球場での日本S開催も視野に入れ、CSを含めて11月末日までに全日程消化を目指す。
ウイルスとの先の見えない闘いの中、最善を尽くしてシーズンを迎えられるのか。「選手、観客、そして日本の野球・サッカー文化を守る決断と実行を」と結んだ提言に対し、巨人の今村球団社長は「先生方がおっしゃったことを100%実現するように努力する」と約束した。鳴り物は禁止され、大歓声が沸くこともない。開幕を祈り、選手、球団、ファンがそれぞれに犠牲を払い、静けさに包まれるであろうオープニングゲームに備える。(宮脇 央介)
◆具体的な応援スタイルの提言
▽感染リスク高
ジェット風船応援→×(飛沫感染リスク)
肩組み、飛びはねなど集団での動きの伴う応援→×(接触感染リスク)
立ったり座ったりを繰り返す集団での動きの伴う応援→×(接触感染リスク)
指笛の応援→×(飛沫感染リスク)
トランペット・ホイッスル等の鳴り物応援→×(飛沫感染リスク)
メガホンを打ち鳴らしながらの声援(自然に歓声が大きくなる)→×(飛沫感染リスク)
ビッグフラッグ応援(旗の下で多数が密集状態で旗を動かす)→×(接触感染リスク)
ビッグプレー、ファインプレー等での観客のハイタッチ→×(接触感染リスク)
両手をメガホン代わりにした大声での声援、応援→×(飛沫感染リスク)
フラッグ応援(多数が新聞紙大の手旗を振る)→×(接触感染リスク)
▽感染リスク中
応援団による声の指揮による歌唱+拍手応援→▲(自席で手をたたき歌う程度)
応援団の太鼓による声援、拍手→▲
プレーの度の拍手や通常の声援(両手をメガホン代わりに使わない)→▲
▽感染リスク要検討
サメダンス応援(両手の手のひらを上下に合わせる)
応援タオルを回す、応援タオルを横に広げて左右に振る