【五輪の倫】女子飛び込み16歳金戸凜、親子3代の夢と涙

飛び込み・国際大会派遣選手選考会女子3m板飛び込み(決勝)で4位に終わり、父でコーチの恵太さんに抱きしめられ号泣する金戸凜
飛び込み・国際大会派遣選手選考会女子3m板飛び込み(決勝)で4位に終わり、父でコーチの恵太さんに抱きしめられ号泣する金戸凜

 体の奥深いところに必死に押し込めていたものが、一気に流れ出たのだろう。16歳の金戸凜が東京五輪出場を逃した。親子3代の五輪を目指した飛び込み一家の期待の星は、2月の国際大会派遣選手選考会で敗れた。父である恵太コーチの胸でこらえきれず泣いた。

 その名の通り、強い女の子である。昨夏、韓国・光州の世界水泳。高飛び込みの予選を5位で通過しながら準決勝は17位に終わり、五輪切符はその手をすり抜けた。持病である右肩を準決勝1本目で痛めたのが全てだった。「悔しいけど、肩を言い訳にはしたくなかった」と語るその顔には、笑みさえ浮かんでいた。この子は強い、と思った。同時に、強すぎるとの思いもかすめた。「3代目」としての注目度は、時として実年齢以上の成長を強いる。

 世界水泳後も、金戸の右肩はたびたび脱臼を起こし、選考会では得意の高飛び込みへの出場を回避せざるを得なくなった。生まれつき関節が緩く、入水の衝撃や、飛び込む前の腕を振り上げる動作でさえ外れてしまう。最終的に高飛び込みを断念したのは「体のことを考えると、コーチとして止めなくてはいけない時がある」という父の言葉だった。

 選考会の前日。世界水泳で抱いた思いについて、もう一度聞いた。答える顔は悲しげだった。

 「ダメだったけど、予選でいいところまで行けて、もうちょっとで届きそうだったのがすごく悔しくて。その届きそうだった高飛び込みがお休み、となると、五輪に出たかったな、って思いがあります」

 個人とシンクロ種目で3メートルの板飛び込みに出たが、五輪のチケットはまたもその手をすり抜けた。涙は、16歳の少女が、いかに張り詰めた中で競技に向き合ってきたかという証しであろう。

 親子3代の夢は4年後へ。パリに、今度こそ凜(りん)とした花を咲かせてほしい。時間ならある。肩を癒やす時間も、涙を乾かす時間も。

 ◆太田 倫(おおた・りん)1977年10月6日、青森県生まれ。42歳。横浜市立大から2000年入社。18年から五輪、主に水泳競技、スケートボード、空手などを担当。

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