メジャー開幕に難敵、新型コロナウイルス

スタンドを埋める観客の前でオープン戦を戦うエンゼルス・大谷(3月7日)
スタンドを埋める観客の前でオープン戦を戦うエンゼルス・大谷(3月7日)

 今年は実に1968年以来、52年ぶりの一斉開幕。その日に向けて選手たちの調整ペースも上がり、期待も日に日に高まってくる。だが、現実のこととして日ごとに迫ってくるのはむしろ、新型コロナウイルスの脅威だ。アメリカ国内ではカリフォルニア州を始め9州で非常事態宣言が発令されている。そこにはほぼ3分の1のチームがフランチャイズを構える。

 15チームのキャンプ地があるフロリダ州にもその影は忍び寄っている。パイレーツのキャンプ地ブラデントンの隣町マナティー郡でも感染者が出て、パイレーツはすぐさまキャンプ施設の完全消毒を実施。選手たちはもちろん、特に球場のボランティアには退役軍人のシニアが多いこともあって神経を尖らせている。

 MLB機構はその対策として、まず全球団に通達を出した。感染を避けるためにファンから差し出されたペンなどでのサインに応じない。また、握手も避ける。さらに地元衛生機関との連携、コミュニケーションを常に図るといった強制力のない要請レベルのもの。

 しかし、他のプロスポーツではアイスホッケーのNHLではシーズン中ということもあってクラブハウスでのメディアの取材を制限し、選手のコメント取りも公式のインタビュールームのみに限定された。また、バスケットボールのNBAではファンとの交流をミニマムにする一方で、さらなる感染拡大を視野に入れて無観客試合の可能性を検討しているとも伝えられている。

 こうした動きに、MLB機構も一歩踏み込んでアメリカ疾病対策センター(CDC)の基準に従う形で感染リスクの高い国と地域からの訪問者は、入国後2週間は各球団の施設に立ち入らせないように各球団に要請した。また、クラブハウスへのメディアの立ち入りの制限は現状では行わないが、今後の状況次第では可能性もあるという。

 このように多方面で感染拡大防止策が講じられているさなか、オリオールズの主力で人気選手のブランドン・マンシーニが「野球とは関係ない医学的治療」のためキャンプ地を離れた。数日間インフルエンザに似た症状に悩まされていたとの説と、キャンプ地がパイレーツ同様にマナティー郡に近いことから「コロナ」を疑う声もある。球団からの発表がないだけに周囲のざわつきは収まらない。

 過去に例がなかったわけではない。2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)のときはブルージェイズのフランチャイズ、トロントが流行地になり、アメリカ側からの団体ツアーのキャンセルが相次いだこともあったが、試合開催には何の支障もなく、夏には収束した。その年の4月に取材に訪れたが、入国検査官がマスクをしていた以外は球場での体温検査などもなく、通常の取材が出来た。しかし、今度はモノが違う。開幕を無事迎え、安全なシーズンになるようにあらゆる英知を結集し、力を合わせて難敵を封じ込んで欲しいものだ。(出村 義和=スポーツジャーナリスト)

出村 義和
 (でむら・よしかず)1971年、ドジャースタジアムでMLB初観戦。ベースボールマガジン社でアメリカ総局勤務、週刊ベースボール編集長などを務める。独立後、ニューヨークをフランチャイズに19年間MLBを中心に多岐にわたるジャンルで取材、執筆を行う。帰国後、JスポーツでMLB中継の解説者も務める。

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