【東京五輪 社会学】自治医科大付属病院・感染制御部長 森澤雄司准教授、定期的に流行起こすウイルスに変化も…コロナ影響で東京五輪は

自治医科大付属病院・感染制御部長 森澤雄司准教授
自治医科大付属病院・感染制御部長 森澤雄司准教授

 新型コロナウイルスの感染拡大が終息の気配を見せないまま3月を迎えた。国内では多くの娯楽施設やイベントが中止や規模縮小を余儀なくされている。7月24日に開幕する東京五輪、8月25日に始まるパラリンピックには約200の国と地域が参加するが、国際オリンピック委員会(IOC)の理事が開催条件について言及するなど波紋を広げている。感染症の専門家に今後の見通しなどを聞いた。(久保 阿礼、奥津 友希乃)

 今夏の東京五輪・パラリンピック開催までに、新型コロナウイルスが終息するかどうかは、現時点では分かりかねます。

 終息へのシナリオはさまざま考えられますが、インフルエンザのように、定期的に流行を引き起こすウイルスになる可能性もあります。いったん終息へ向かったとしても、五輪開催時期あたりで、(感染拡大の)第2波、3波が来て、五輪どころではなくなるかもしれません。

 最も気になっているのは、どうやら新型コロナウイルスは、症状がない人からうつるという点です。つまり、症状はないが、ウイルス検査で陽性と判定される「無症状病原体保有者」から他者へ感染する、という可能性が考えられます。

 2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)流行時は、無症候の人から他者へ感染する事例は少なかったはず。そこが、SARSとは違うところです。もしも、無症候の人からうつるのであれば、現状の水際対策が意味を成すかは疑わしい。その可能性を踏まえた対策を考えなければなりません。

 治療に関しては、症状がない人よりも、当面は重症化しやすい高齢者や、基礎疾患がある人への治療法の確立を優先すべきです。現状、致死率は2%ほどですが、中国のデータを見ると、集中治療が必要なくらい重篤化すると、4割くらいの人が亡くなっている。重症者をどう治療していくのかを、明らかにしなければなりません。

 一般の方々には、誤情報に惑わされず、ウイルスを過剰に恐れすぎずに、冷静な対応をとっていただきたい。感染予防として、手指衛生を十分に行うこと、外出先で目や鼻や口を不用意に触らないなど、この機会に、衛生的な習慣が身につくのは非常に良いことです。意識的に励行してください。

 ◆東京五輪を巡る動きと関係者の発言

 ▼2月25日 IOCパウンド委員がAP通信に開催是非の期限を「遅くとも5月下旬」とし、「事態収束が見込めない場合はおそらく中止を検討する」と発言。1年延期の可能性も示した

 ▼同26日 橋本聖子五輪相は「IOCの公式見解ではない」と火消し

 ▼同27日 調整委員会のコーツ委員長が豪地元紙に「3か月以内に判断」

 ▼3月3日 

 ・IOCが緊急声明で予定通りの実施を強調し、バッハ会長は「成功に変わらぬ自信を持っている」

 ・橋本五輪相は開催都市契約について「20年中であれば延期できると取れる」

 ▼同4日 

 ・IOCバッハ会長が理事会で「7月24日開会を確信している」

 ・WHOテドロス事務局長は「今決めるのは時期尚早で状況を見守るべき」

 ・森喜朗組織委会長は「中止は全く考えていない」

 ▼同6日 組織委がアテネでの聖火引継ぎ式への子どもの派遣見送りを決定も、森会長は延期可能性について「あり得ない」

 ◆東京五輪・パラリンピック 五輪は7月24日~8月9日に開催。約200の国と地域から選手約1万1000人が参加し、33競技339種目を行う。パラリンピックは8月25日~9月6日に約4400人が22競技540種目を行う。会場は東京、神奈川、千葉などの首都圏が中心。過去の五輪では大会後も観光客が年間数百万人以上増加するケースもある。大会の経済波及効果は3兆円以上とする一方、中止の場合は7.6兆円の損失が生じるとの試算もある。

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