超厚底のラストシンデレラ…一山麻緒、ぶっつけ新兵器で大逆転五輪切符

スポーツ報知
2時間20分29秒の好タイムで優勝し、東京五輪代表の切符を獲得した一山麻緒(カメラ・相川 和寛)

◆名古屋ウィメンズマラソン(8日、ナゴヤドーム発着=42・195キロ)

 ハーフマラソン日本歴代9位の一山麻緒(22)=ワコール=が、日本歴代4位となる2時間20分29秒で制し、東京五輪代表の3枠目を勝ち取った。1月の大阪国際で松田瑞生(24)=ダイハツ=がマークした2時間21分47秒を上回る大会記録を叩き出し、野口みずきが持つ2時間21分18秒の日本人国内最高記録も更新する快走を披露。“ラストシンデレラ”が東京五輪のメダル候補に急浮上した。(雨、気温9・1度、湿度88%、北の風0・2メートル=スタート時)

 観客が誰もいない。静寂のナゴヤドームに、一山の泣き声が響いた。躍動感ある走りはドームに入ってより力強さを増し、両手を広げてゴールテープを切った。待ち受けていた永山忠幸監督(60)の胸に飛び込み、「早く監督の所へ行きたいと思って。夢みたい」。雨で冷え切った頬を熱い涙が伝った。

 五輪代表へ、目に見えない松田との闘い。2時間21分47秒という高いハードルに加え、冷たい雨と海外勢しかいないペースメーカー(PM)。しかし「30キロまではジョグ感覚というか、ゆとりを持って走れたらいいなと思っていた。ちょっと速かったけど、いいぞいいぞと思って…」と落ち着いていた。PMの背後で存在感を消し、同僚の安藤も「後ろ姿に余裕を感じた」と脱帽。28・8キロ地点での「いつでも、行っていい!」という永山監督の声にギアを上げると、2時間20分台を持つ海外勢も置き去りにして独走。大会記録に加え、旧コースで高橋尚子がマークした2時間22分19秒、そして野口を上回る国内最高記録を叩き出した。

 4年前の約束を果たした。出水(いずみ)中央高3年時には全国高校総体に2種目で出場するも、予選落ち。「東京五輪にマラソンで出たい」とワコールのスカウト担当に思いをぶつけ、永山監督は一度も走りを見ずに、その気概を買って採用した。「『(ワコールとして)5回目の五輪は君でいくよ』と4年前に約束しましたから」。五輪代表に既に内定している前田穂南(23)=天満屋=や鈴木亜由子(28)=日本郵政グループ=をも超えるタイムという最高の形で師弟の絆が実った。

 福士加代子に憧れて背中を追い、初めて先にゴールテープを切った。今年に入って志願し、初めて標高1600メートルの米アルバカーキで約1か月の合宿を敢行。最終調整を福士と一緒に行うために帰国を早めた。「福士さんがいなかったら、今の私はいないと思う」と感謝も口にした。

 22歳で手にした五輪切符に「うれしいけど、まだ実感はない」と苦笑い。2月の丸亀ハーフからナイキの厚底シューズを使い始め、けがも減った。今回は新製品の「超厚底」で勝負を懸けた。見事、初マラソンとなった昨年3月の東京で出した記録を4分4秒短縮。2時間20分29秒は今季の世界ランク16位相当だが、各国上位3人で見ると8番手で、悪条件を考慮すれば五輪ではより好記録を期待できる。永山監督も「今回は100点満点の準備ができたが、まだ私のやらせたいことを100%はやらせていない」と伸びしろは十分。8月8日の大一番。記録では上回った五輪金メダリストたちに、実績でも肩を並べてみせる。(太田 涼)

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