残念すぎる、フジテレビの中継で名前を間違えられた日本歴代4位「高久龍」という男

東京マラソンでは日本人2番手の8位だった高久龍
東京マラソンでは日本人2番手の8位だった高久龍

 今年の東京マラソンは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で一般参加を中止して行われた。主催者は沿道での観戦自粛を求めたが、約7万2000人が集まるなど、様々な問題があったが、競技面では白熱した好レースだった。

 マラソン日本記録保持者の大迫傑(28)=ナイキ=が自身の記録を21秒更新する2時間5分29秒の日本新記録で4位になった。その大迫を筆頭に日本人選手は好記録ラッシュ。19人が2時間10分を切った。その一方、世界と日本の差があることも改めて知らされた。同時に世界歴代3位の2時間2分48秒の自己ベストを持つ前回覇者のビルハヌ・レゲセ(25)=エチオピア=が2時間4分15秒で連覇。東京五輪で、さらにその先で、日本のマラソン勢が世界と戦うことの厳しさを感じた。

 レース前、私は、コロナウイルスの問題以外に、もうひとつの心配があった。あまり、悪口は書きたくないが、今年の東京マラソンの中継がフジテレビ系だったことだ。

 例年、フジテレビ系は学生3大駅伝開幕戦の出雲駅伝(10月)を中継している。6区間45・1キロのスピード駅伝は展開がめまぐるしく変わるため、中継は難しいだろうが、それを踏まえても評判はよろしくない。ちなみに今年の出雲駅伝ではフジテレビの競馬中継の都合でスタート時間の変更も検討されている。ある常連校の監督は「出雲駅伝は競馬より優先順位が低いのか…」と嘆いている。

 残念ながら、東京マラソンでもフジテレビは精彩を欠いた、と言わざるえない。

 序盤から中盤まで第2集団がほとんど映らなかった。大人数の第2集団も好ペースでレースを進めていたため、どの選手が残っているのか、知りたかった視聴者は多いだろう。

 「残念」のクライマックスは、日本人2番手の8位で高久龍(たかく・りゅう、27)=ヤクルト=のゴールシーンだろう。

 解説していた日本陸連長距離・マラソン強化戦略プロジェクトの瀬古利彦リーダー(63)が「菊地君」と間違えてしまうと、実況アナウンサーも「あっ、菊地です! 途中まで日本記録を更新するペースで走っていました」と間違いに引っ張られてしまった。約30キロでは大迫に迫った菊地賢人(29)=コニカミノルタ=との人違いに気がつかず、日本歴代4位の2時間6分45秒で走りきった「高久」の名前が呼ばれることはなかった。

 ここで、高久龍という選手の一端を紹介したい。

 栃木・那須拓陽高から東洋大に入学し、箱根駅伝などでも活躍した。

 昨年の東京五輪マラソン代表選考会(MGC)前、MGCに大学別としては最多の選手を送り込んだ東洋大が5選手の座談会を行った。そこで、高久が大学2年時の全日本大学駅伝について語った一言が印象深い。

 高久は2年時の出雲駅伝5区で3大駅伝デビュー。見事に区間賞を獲得した。その次の全日本大学駅伝でも5区を任され、区間3位と好走。トップでもらったタスキをトップのままつないだ。しかし、最長区間のアンカーに抜てきされた当時1年生の服部勇馬(26)=トヨタ自動車=が駒大に抜かれ、2位惜敗。服部は号泣した。

 「つらいところ(厳しい区間)を後輩に任せてしまいました。今でも服部が泣いている姿を覚えています。つなぎ区間を走って満足している自分が情けなかった」

 東洋大の恩師、酒井俊幸監督(43)は「そういう気持ちを持てる選手は必ず強くなります。高久は2024年パリ五輪の代表を目指して頑張ってほしい」と期待を込めて話す。

 東京五輪では服部が日本代表に選ばれた。後輩が一歩先を行っているが、高久の挑戦は続く。自分の弱さを認める強さを持つ高久は成長を続けるはずだ。酒井監督と同じく、私も期待している。(記者コラム・竹内 達朗)

コラムでHo!とは?
 スポーツ報知のwebサイト限定コラムです。最前線で取材する記者が、紙面では書き切れなかった裏話や、今話題となっている旬な出来事を深く掘り下げてお届けします。皆さんを「ほーっ!」とうならせるようなコラムを目指して日々配信しますので、どうぞお楽しみください。

スポーツ

NEWS読売・報知 モバイルGIANTS ショップ報知 マガジン報知 バックナンバー申し込み 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真販売 法人向け紙面・写真使用申請