佐野史郎、「あのとき」考えるきっかけになれば…Fukushima50連載〈6〉

今作を通じ「俳優の仕事とは何か」を考えたという佐野史郎
今作を通じ「俳優の仕事とは何か」を考えたという佐野史郎
迫真の演技で首相を演じる佐野
迫真の演技で首相を演じる佐野

 映画には名前こそ出てこないが、誰もが当時の首相(菅直人)を思い浮かべるだろう。“特殊な役”のオファーに迷いはなかったのか。「いいえ、全然。むしろ光栄でした」。出演を決意させた背景には、別の理由もある。90年代、東京電力のCMに出ていたことだ。

 「それも自分には大きかった。実人生で(東電の)お仕事をした。関わった以上、自分にも何かしらの責任があるのではないか。ちゃんと受け止めなければ、という思いもあった。でもいま、出演できて心から良かったと思っていますよ」

 原子炉は燃料が溶け始め圧力も上昇。このままでは爆発し、東日本は壊滅の危機にひんしていた。政府は福島第1原発、吉田昌郎所長(渡辺謙)に圧力を抜くベントを指示。が、業を煮やし、首相自ら原発に乗り込む。所長は言う。「こちらは決死隊を作っている」と。状況も精神も極限状態の中、ぶつかり合う。

 佐野と渡辺には“敵対歴”がある。佐野が井伊直弼を演じたときには島津斉彬を。渡辺が吉田茂役のときは広田弘毅だった。「不思議とそんな関係が多くて。もちろんこれまでの共演も思い出しましたよ」。激しく対立していても、心の奥底では通じ合うものがあった。

 「あのとき」の首相の現地入りは政治史的に“汚点”とされる。しかし佐野は、それで簡単に片付けて良いのか、という疑問を持ち続ける。「現在もまだ何が本当に正しかったのか分かっていない。自分たちがもしあの立場ならどうしたか。現場を放っておけない気持ちも少し理解できます」

 今作の若松節朗監督も、正誤は決めつけられないことを含んだ描き方をしている。「最初に話がきたとき『自分にとって俳優という仕事は何か』を突きつけられた思いがした」と振り返る。原発の問題は解決したわけでない。見る者に将来への疑問を突きつけてくる作品だ。「この映画がみんなの考えるきっかけになれば」と願う。(内野 小百美)

 ◆佐野 史郎(さの・しろう)1955年3月4日、島根・松江市生まれ。64歳。唐十郎主宰「状況劇場」などを経て86年、初映画「夢みるように眠りたい」に主演。92年TBS系「ずっとあなたが好きだった」の冬彦役でブレイク。フジテレビ系「10の秘密」(火曜・後9時)にも出演中。

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