VARの可視化でサッカーが変わる?会場に映し出されるVAR映像が選手に与える影響を読み解く

後半、VAR画面を見る佐藤主審
後半、VAR画面を見る佐藤主審
VAR画面
VAR画面

 手元のモニターをじろりと睨む佐藤隆治主審を除くスタジアムにいた全員が、大型ビジョンを凝視していただろう。

 後半25分15秒。浦和DF鈴木大輔の右手がボールを掻き出すシーンが映し出された。記者席の左手、湘南サポーター側から「うぉぉぉ!」という地鳴りにも似た大歓声。右手側からは「あぁ…」というため息。ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の介入により、PKが認められた。

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 VARは昨季もルヴァン杯などで試験的に導入されていたが、今季はひと味違う。主審が「オンフィールド・レビュー」を行う映像が、スタジアムの大型ビジョンで確認できるようになったのだ。

 サポーターだけでなく、選手も大型ビジョンの映像を確認することになる。VARの導入でサッカーは大きく変わったが、このビジョンを通じた「可視化」が選手の心理に与える影響も大きそうだ。

【選手に残る“残像”】

 浦和MF関根貴大の決勝点は見事だった。2―2の後半40分、ペナルティエリア外でボールを受けると、スルスルとゴール前へ侵入。左足を振り抜きネットを揺らした。

 しかしよく見ると、関根はDFをひとりも抜いていない。背後から駆けつけた1人を含めれば3人のDFが対応にあたったが、誰1人足を出して止めようとしなかった。疲労のたまる後半40分という時間帯を加味しても、あまりに不自然な守備対応だった。大型ビジョンでハンドをさらされた鈴木大輔の“残像”が選手の脳裏に焼き付き、深層心理の部分でPKを恐れた対応になってしまったのかもしれない。

【PKキッカーへの重圧】

 主審がVARのジェスチャーをしてから3分9秒後に試合が再開したが、湘南FWタリクのPKはバーを叩いた。試合が止まっていた189秒の間で、映像を通じて状況を把握したスタジアムは静寂の空間からお祭り会場へと変貌を遂げている。キッカーとしては実に難しい状況に違いない。

 PKの成功率に選手の心理が深く影響することは、“連鎖反応”で9人が続けざまに外した先日のゼロックス杯が(ある意味)証明している。VAR導入でPKの機会が増えることは想像に難くなく、サポーターが映像を目にすることで、スタジアムでこの日のような異様な雰囲気が醸成されることにもなる。何事にも動じないキッカーの需要は上がるはずだ。

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 VARの恩恵にあずかる形で得た決定機をフイにした湘南は、“ぬか喜び”の形となった。逆に浦和にとっては、鈴木大輔が「ホッとした」と振り返った通り、シーソーゲームの慌ただしい展開の中で心を整え、切り替えられるだけの材料になった。従来のPKゲットから失敗の流れよりも、その反動は大きいだろう。結果論ではあるが、決勝点は浦和に生まれた。

 今後は、1試合に何度もVARが介入し、「オン・フィールド・レビュー」が複数回行われる試合も出てくるはずだ。選手にとっては、その「間(ま)」の使い方、「映像」の受け止め方も大事になってくるだろう。(岡島 智哉)

後半、VAR画面を見る佐藤主審
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