出演者からの「確認書」提出に踏み切ったNHK、決断の裏側…痛すぎた大河での不祥事続出

麻薬取締法違反で逮捕され、大河ドラマ「麒麟がくる」降板を余儀なくされた沢尻エリカ被告
麻薬取締法違反で逮捕され、大河ドラマ「麒麟がくる」降板を余儀なくされた沢尻エリカ被告
麻薬取締法違反で逮捕され、放送中だった大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」を降板したピエール瀧
麻薬取締法違反で逮捕され、放送中だった大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」を降板したピエール瀧

 NHKもついに堪忍袋の緒が切れたんだな―。そんなことを思わされた突然の発表だった。

 13日、東京・渋谷の同局で行われた木田幸紀放送総局長の定例会見。この日の主な発表事項は2020年度の番組改定や新たなキャスターの発表。3月30日から和久田麻由子アナウンサー(31)が朝の「おはよう日本」(月~金曜・前4時半、土曜・前6時、日曜・前7時)から夜の「ニュースウォッチ9」(月~金曜、後9時)へ、桑子真帆アナ(32)が逆に「ニュースウォッチ」から「おはよう」に異動する“朝夜の顔の入れ替え”など、看板アナに関する華やかな発表が続いた後、NHK編成・制作の総責任者が突然、厳しい表情になって言った。

 「去年から大河ドラマで出演者の不祥事が続き、『麒麟がくる』の放送開始が遅れるなど視聴者の皆様に大変、ご迷惑をおかけしました」と、まずは謝罪した上で「こうした事態を受け、対応策を検討して参りましたが、NHKでは来年度の新番組から大河ドラマ、連続テレビ小説を含む定時番組に出演していただくレギュラー出演者について、正式な契約書をかわす前に違法薬物や反社会的勢力との関わりがないことを確認していただき、その旨を書面でご提出いただくことにいたしました」と話した。

 突然の発表に集まった約70人の記者に一気に緊張感が走る中、木田氏は「薬物については今後、刑事罰を科せられたり、捜査機関に嫌疑を持たれたりする恐れがないこと、現時点で違法薬物を使用、所持していないことを誓約していただく内容となります。反社会的勢力との関わりについても、契約書の内容を前倒ししてお示しし、確認させていただきます」と淡々と説明。「NHKは公共放送として、反社会的行為を容認することはできません。出演者については、これまでも所属事務所を通じて事前に確認を行ってきましたが、今後、より確実に確認していくということです」と続けた。

 唐突に発表された「確認書」の提出。4月から大河ドラマや朝の連続テレビ小説など放送期間が長く出演者も数多い大型番組のキャストに関して出演の正式契約をかわす前にタレントの所属事務所の代表者及び本人と「出演にあたっての(NHKからの)お願い」という形で様々な不祥事の嫌疑がかからない「ホワイト」な状態であることを書面で確約、署名させる形。NHK、出演者サイド双方が安心して撮影を進めることこそが狙いとなる。

 「あくまで出演が決まった段階での確認の手続きです。(不祥事を抱えていないという)当たり前のことを確認するということですが、疑念がある時点で契約は成り立たないということで、一種の抑止効果はあると考えております」と木田氏は前を向いて話した。

 その真剣そのものの表情が物語るとおり、この3年間、NHKは出演者の不祥事で数々の痛い目にあってきた。合成麻薬MDMA、LSDを所持したとして麻薬取締法違反の罪に問われ、懲役1年6月、執行猶予3年(求刑懲役1年6月)の判決が言い渡された沢尻エリカ被告(33)の「麒麟がくる」降板では億単位の損害を被ったとされる。

 同容疑者は準ヒロインとして、斎藤道三の娘、後に織田信長の正妻となる帰蝶(濃姫)役で出演予定だった。長谷川博己(42)演じる主人公・明智光秀とのシーンも多数あり、突然の逮捕劇で急きょ川口春奈(24)が代役を務めることになった。しかし、大幅な撮り直しのため、前代未聞の初回放送の2週先送りという事態に追い込まれた。

 昨年の大河「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」では、3月に足袋職人・黒坂幸作役で出演のピエール瀧(52)がコカイン使用による麻薬取締法違反で逮捕され、降板。三宅弘城(52)を代役にして過去の出演シーンまで遡っての撮り直しを余儀なくされた。

 10月には東京五輪女子バレーボール監督の大松博文氏役で撮影も終了していた「チュートリアル」徳井義実(44)に多額の申告漏れと所得隠しが発覚。その出演シーンの再編集作業を突貫工事で行った。違法行為ではないが、18年の「西郷どん」でも斉藤由貴(53)が不倫騒動で出演を辞退したため、南野陽子(52)が代役に。大河は3年連続で出演者の途中交代に見舞われていることになる。

 ドラマではないが、昨年6月にはBS1「ラン×スマ」のMCを務めていた「ロンドンブーツ1号2号」の田村亮(48)が反社会的勢力との闇営業問題で謹慎処分となり、出演を自粛中だ。

 呪われているかのように不祥事が続く現状。1月に行われた2022年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の制作発表では脚本を担当する三谷幸喜氏(58)が「僕はキャスティングにもすごい思い入れがあります。本当にオファーを受ける俳優さんたちに言いたいのですけれども、『俺、ちょっとやばいかな』とか、スネに傷を持っている人がいたら断って下さい。本当にみんな、切に思っています。ぜひ断って欲しいです」と、ギャグにまぶして、制作サイドの本音をのぞかせた。

 そう、今回の「確認書」提出案は悩みに悩んだNHKが思い切って提示した“最終手段”だ。正式契約書の段階ではこれまでも盛り込まれてきた内容とは思うが、今まで事前に確認がなかったのが、不思議だし、今後、老舗の芸能プロダクションやベテラン俳優たちの中から「それほど、こちらに信用がないのか?」という怒りの声、反発の声がわき上がる可能性もあるだろう。

 しかし、NHK首脳は、どこか「なあなあ」が続いてきた事務所や出演者本人との契約に確固たる一線を引くことに踏み切った。裁判で10代の頃からの薬物使用を明かした沢尻被告、同じく20代からのコカイン、大麻常習を告白した瀧の例を見るまでもなく、自身の行動の違法性を認識していながら、大河を始めとする大型作品の出演オファーを平然と受けてきてしまったのが、これまでの芸能界。自身の降板、撮り直しなどで、どれほどの迷惑がかかるのかを早い段階で認識させる意味でも今回の「確認書」導入には大賛成だ。

 皮肉なことに今後の「確認書」提出が発表された13日、大物ミュージシャンの槙原敬之容疑者(50)が覚せい剤取締法違反(所持)と医薬品医療機器法(旧薬事法)違反の疑いで警視庁に逮捕された。

 NHKは急きょ同容疑者の出演予定だった番組の内容差し替えを発表。同容疑者はBS4Kで再放送される予定だった5分間の音楽番組「名曲アルバム『おぼろ月夜』」に出演。今月24日と3月2日、3月7日に放送される予定だったが、同局は「別の内容に差し替えるなど適宜対応していく」とコメントした。

 どこまでも根深い芸能界の薬物汚染と反社会的勢力とのつながり。私個人の思いを言えば、当人たちの無責任ぶりは問われるべきとは思うが、沢尻被告が演じる帰蝶こそ見たかったし、瀧演じる足袋職人だって、最後まで見たかった。しかし、そんな一視聴者としての願いは演技以前のお粗末な行為で裏切られた。今は大役を担っていたにも関わらず、一時の快楽に溺れた沢尻被告や瀧への失望しかないのが事実だ。

 この日、NHKが発表した正式契約前の「確認書」提出は視聴者を決してがっかりさせず、さらに夢を与える番組作りのために必要不可欠なものと、私は思う。緊急発表した木田氏の真剣そのものの表情が教えてくれたのは、公共放送としてのNHKの本気度だった。(記者コラム・中村 健吾)

麻薬取締法違反で逮捕され、大河ドラマ「麒麟がくる」降板を余儀なくされた沢尻エリカ被告
麻薬取締法違反で逮捕され、放送中だった大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」を降板したピエール瀧
すべての写真を見る 2枚

コラムでHo!とは?
 スポーツ報知のwebサイト限定コラムです。最前線で取材する記者が、紙面では書き切れなかった裏話や、今話題となっている旬な出来事を深く掘り下げてお届けします。皆さんを「ほーっ!」とうならせるようなコラムを目指して日々配信しますので、どうぞお楽しみください。

芸能

宝塚歌劇特集
NEWS読売・報知 モバイルGIANTS ショップ報知 マガジン報知 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真販売 法人向け紙面・写真使用申請