ノムさんとサッチー、飾らない夫婦の距離感に触れた6年前の“事件” 

自宅から急きょ来ていただいた野村沙知代さん。この時ノムさんは「笑顔、笑顔」と“演技指導”していた(2014年3月)
自宅から急きょ来ていただいた野村沙知代さん。この時ノムさんは「笑顔、笑顔」と“演技指導”していた(2014年3月)

 「なんや、ワシじゃないんか」現れたノムさんの姿に、目が点になった。

 フジテレビの長寿番組「笑っていいとも!」が終了することになった2014年3月、かつてこの番組に出演していた人のその後を連載するため、1996年に「サッチーとスポーツ新聞を読もう」コーナーに出演していた野村沙知代さんにインタビューを申し込んだ。待ち合わせは行きつけのホテルニューオータニの喫茶店。しかし待っていたのはサッチーでなくノムさんだった。

 沙知代さんはメディアに出なくなってかなりたっていたので、申し込んだ経緯の途中で勘違いされたのかもしれない。御大の登場に「今日の取材は…」と恐縮しながら説明すると、ノムさんは携帯を取り出し「ワシじゃないんだと…」と沙知代さんに説明。田園調布の自宅からタクシーを飛ばして来てくださることになった。

 丁重におわびとお礼を述べると「ほかに用事もないから」と残るという。担当をしたこともなく初見のノムさんと約30分、交わした会話はアガりすぎてほとんど覚えていないが、開幕前に各球団を巡った情報を元に分析した生解説を披露していただいた。もしかしたら、勘違いで待たせた私への、必死の時間かせぎと気遣いだったのかも。

 沙知代さんの取材の間、ノムさんは席を外すこともなく隣のテーブルで、無関心を装いながらも時折楽しそうに聞いているように思えた。おそらく沙知代さんにとって最後となった取材。「私に聞いたって…あんまり覚えてないわよ」と取材を受ける妻の姿が、新鮮に見えたのかもしれない。

 その距離感、絆…図らずも、飾らない夫婦の日常を拝見できた6年前のあの日。帰り際にお二人が中庭の見える喫茶店に場所を移して語り合う姿を再びお見かけした。あの自然な笑顔を忘れない。(記者コラム・軍司 敦史)

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