【記者の目】競歩で起きない「厚底ブーム」の理由

ドーハ世界陸上で金メダルを獲得した鈴木雄介の実使用シューズ
ドーハ世界陸上で金メダルを獲得した鈴木雄介の実使用シューズ

 陸上界を「厚底ブーム」が席巻している。ナイキ製の厚底シューズを履いた選手が、年明けの箱根駅伝で区間新を連発。今月2日に、丸亀ハーフで1時間0分0秒の日本新を出した小椋裕介(26)=ヤクルト=も厚底ユーザー。大迫傑(28)=ナイキ=、設楽悠太(28)=ホンダ=の新旧日本記録保持者が直接対決する来月1日の東京マラソンは、どれほどの好記録が出るのかと注目も高まっている。

 そこで、考える。もう一つのロード種目、競歩ではなぜ厚底ブームが起きないのか。先月の宮崎合宿で関係者に疑問をぶつけてみると「跳ねちゃって歩けない」という答えが返ってきた。厚底は高いクッション性があり、反発力を生むカーボンプレートも埋め込まれていて、地面からの反発を推進力に変える走りには向いている。だが、競歩は両足が同時に地面から離れると「ロス・オブ・コンタクト」の反則なので、かかとから接地して地面をこするように歩くのが基本。足の使い方が根本的に違う。また上下に跳ねるような動きをすれば「ロス・オブ―」の反則を取られるリスクも高まる。

 事実、世界屈指の美歩型を誇る鈴木雄介(32)=富士通=、山西利和(23)=愛知製鋼=を見れば、頭の位置が上下に全くぶれず、まるで氷の上を滑るように歩くのが分かる。ともに19年ドーハ世陸金メダルで五輪代表にも内定した2人の足元を支えるのは、ミズノ製のランニングシューズ「WAVE EMPEROR」。一般ランナーも使用するモデルで、多くの競歩選手から支持を集めている。

 鈴木は、東京五輪金メダル後の目標として、Y・ディニ(フランス)が持つ3時間32分33秒の50キロ世界記録更新を掲げた。単純計算で、1キロを4分15秒前後のペースが求められる。「歩く」という言葉に引っ張られがちだが、フルマラソンを約3時間で完走するペース。一般人は、たとえ走っても追いつけないほどの速さで、歩型を維持して「歩く」力には頭が下がる。五輪ではメダルラッシュ期待の種目。間近で見て、種目名にそぐわない「速さ」を感じてほしい。

 ◆細野 友司(ほその・ゆうじ)1988年10月25日、千葉・八千代市生まれ。31歳。早大を経て2011年入社。サッカー担当を経て、15年から五輪競技担当。16年リオ五輪、18年平昌五輪を現地取材した。夏季競技は陸上、バドミントン、重量挙げなどを担当し、冬季競技はジャンプなどノルディックスキーを担当。

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