34年ぶりに帰ってくる金曜8時の「ワールドプロレスリング」…テレ朝の“決断”の裏側

IWGPヘビーとIWGPインターコンチネンタルの2冠を保持する内藤哲也。新日の誇るスーパースターの1人だ
IWGPヘビーとIWGPインターコンチネンタルの2冠を保持する内藤哲也。新日の誇るスーパースターの1人だ
リング上でにらみ合うオカダ・カズチカ(左)と内藤哲也。新日の熱い戦いがファンを熱狂させている
リング上でにらみ合うオカダ・カズチカ(左)と内藤哲也。新日の熱い戦いがファンを熱狂させている

 突然の発表に大阪城ホールを埋めた1万1411人の観客がどよめいた。

 9日に行われた新日本プロレス「THE NEW BEGINNING in OSAKA」大会。第3試合が終わったところで突然流された場内アナウンス。「テレビ朝日では、新日の熱い戦いを4月から金曜午後8時にBS朝日で放送します」―。

 巻き起こったのは、ファンの喜びの雄叫び。番組名は、ずばり「ワールドプロレスリングリターンズ」。ゴールデン帯(午後7~10時)の金曜8時から8時54分まで毎週1時間の放送。「リターンズ」という言葉に「再放送か?」と思う人もいると思うが、あくまでも近々の大会でのメインイベントなどビッグマッチの放送を長尺で流す形だ。

 期待される地上波ではなく、衛星放送だが、「金曜8時」という時間にこそ、大きな意味がある。前身のNET時代の1969年にプロレス中継を開始したテレ朝。2013年4月には放送40周年を祝った老舗中の老舗だ。70年代にはアントニオ猪木(76)、80年代には初代タイガーマスク(佐山聡=62)というドル箱スターを擁し、視聴率20%超えが当たり前。実況アナウンサーから古舘伊知郎氏(65)というスターまで生み出した。

 しかし、87年3月に生中継を終了。93年4月からは毎週土曜深夜2時からの30分間録画ダイジェスト放送の「ワールドプロレスリング」に落ち着いていた。

 唐突にも思える「金曜8時」のプロレス放送の復活劇。この一幕を速報した「スポーツ報知」のWEB記事には数多くのファンのコメントが殺到した。

 「これは熱い報(しら)せ。待っていた!」

 「たとえBSでもすごいこと。ゴールデン帯に放送されるのは、近未来の地上波放送に向けた世間へのアピールとして大きい」

 「プロレスにとって、地上波での枠拡大、もしくは早い時間帯への復帰こそ急務だ」

 看板レスラーたちも即座に呼応した。「100年に1人の逸材」棚橋弘至(43)が「金曜8時で復活しまーす! 家族みんなでご飯を食べながら是非プロレスを楽しんでください!」と呼びかければ、バラエティー番組でも人気の真壁刀義(47)も「新日のものすごい闘い見逃すんじゃねーぞ! 言いたいことはそれだけだ」と吠えた。

 そう、ファンを、一戦のレスラーたちを一気にヒートアップさせた「金曜8時」復活の裏側には、様々なドラマがあった。

 テレ朝は動画配信サービス「新日本プロレスワールド」で主要大会を全世界に向け生配信しており、この動画配信や米ケーブルテレビとの提携で、ある程度は採算が取れてしまう。一方で現在、日本唯一の地上波プロレス番組「ワールドプロレスリング」の平均視聴率は1~2%台に低迷しているのが現実だ。

 今年1月4、5日に史上初めて東京ドームで2日間連続開催され、両日合計で7万71人の観客を動員した「WRESTLE KINGDOM14 in 東京ドーム」でさえ、テレ朝が2日連続で午前2時からオンエアした地上波放送の平均視聴率は4日1・6%、5日1・1%と、やや寂しいものだった(数字はビデオリサーチ調べ、関東地区)。

 しかし、この4年間、東京ドームで、両国国技館で、後楽園ホールで、新日の熱い戦いを取材し続けてきた私は、プロレス人気復活への“胎動”を肌身で感じ取ってきた。

 会場を埋めるプ女子(プロレスファンの女性たち)の胸を熱くさせるきら星のような人気レスラーたち。Tシャツ始めグッズがバカ売れの超人気ユニット「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」を率いる現在、IWGPヘビー級とIWGPインターコンチネンタルの2冠王者・内藤哲也(37)、新日にカネの雨を降らせる「レインメーカー」オカダ・カズチカ(32)、抜群のルックスで女性人気NO1の「ゴールデン☆スター」飯伏幸太(37)、43歳になったとは言え、「エース」としてまだまだ人気NO1の棚橋だって健在だ。

 ターニングポイントとなった瞬間を、はっきりと覚えている。2018年3月に開かれた同局の社長定例会見。半年に1回出席する同局の最高実力者・早河洋会長・CEO(最高経営責任者、76)に、私は思い切って聞いた。

 「『新日本プロレスワールド』の会員数激増が証明するように新日人気は本物です。『ワールドプロレスリング』の放送時間繰り上げの考えはありませんか?」―

 その時、早河会長は「伸びている理由の一つはアメリカでの展開です。アメリカ進出が奏功しているとは思う」と冷静に分析した上で「新日の(東京Dでの)正月興行は3万人以上集めるほど、コアなファンがいる。そういう人たちが確認視聴したりするし、今、(オカダら)それなりのスターも生まれている。そういう人への関心もあると思う。力道山、ルー・テーズの頃(の人気)までは行っていないが、コアなファンに支えられているだけに今後、新たな展開も考えられると思います」と真っ正面から答えてくれた。

 当時、「新たな展開も考えられる」と含みを持たせた同会長の発言を報じた私の速報記事に続々と届いたファンからの声の数々を2年経った今も昨日のことのように覚えている。

 「放送時間の早急な繰り上げは臨めないだろうけど、まずは(現在の)30分間の放送枠を1時間にして欲しい。そうしたら、1試合堪能できる」

 「つまらないバラエティー番組を放送するより、今の新日の方が視聴率が取れると思う」

 「今の放送を録画して見ているけど、生放送でハラハラしながら見られたら最高!」

 手前味噌に聞こえたら申し訳ないが、2年前の民放テレビ局有数の実力者の前向きな発言が、同局の編成責任者の心も大きく動かしたと、私は見ている。

 そして今年、同局は1・4&1・5東京D大会の地上波当日放送に踏み切った。大会1か月前、昨年12月の定例会見で総合ビジネス担当の武田徹副会長は確かにこう言った。「熱心なファンの皆様のご要望にお応えして、両日とも当日の26時から27時30分までの枠で90分間、地上波での放送をすることにいたしました。また、BS朝日では初めて両日とも4Kで生中継で放送いたします。根強いコアなファンの方々がプロレスに関しては支えていただいていると認識しております」―。

 その言葉どおり、プロレス界で“独り勝ち”とも言われる観客動員を続ける新日の勢いは本物だ。今年8月22日には2年連続で米国の格闘技の殿堂・マジソン・スクエア・ガーデンでの大規模大会も開催する。

 そして、ついに実現した「金曜8時」のプロレス放送の復活。新日マットの熱い戦いが、ついに慎重だったテレ朝首脳を動かした。次なる目標・地上波ゴールデン帯での生放送復活に向け、この勢いは、もう止まらない。私はそう確信している。(記者コラム・中村 健吾)

IWGPヘビーとIWGPインターコンチネンタルの2冠を保持する内藤哲也。新日の誇るスーパースターの1人だ
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