京成杯Vのクリスタルブラックに感じた大器の片りん

京成杯を制したクリスタルブラック(左)
京成杯を制したクリスタルブラック(左)

 2019年11月に、紙面のレイアウト担当から競馬の現場へ。取材記者になって1か月半ほど経過したある日、デビュー勝ちを収めた黒鹿毛の牡馬のレースぶりが強く印象に残った。

 12月15日、中山での新馬戦(芝1800メートル)。16頭立てで出遅れながらも、直線だけで後続を置き去りにしたクリスタルブラックだ。2番枠から発馬で後手に回るが、吉田豊騎手が前へうながすと、スッと反応して中団のインへ。だが、4角で外へ持ち出されるところで、勢い余ったかのように、大きく外へ膨れてしまう。ところが、一瞬の不安は杞憂(きゆう)に終わる。直線では断トツの上がり34秒4(レースのラスト3ハロンは35秒3)を駆使してライバルをぶち抜き、2着に1馬身1/4差をつけた。

 もともと私はやんちゃな馬が好きで、過去にオルフェーヴルやゴールドシップに魅了された。2000年の皐月賞では、ゲート内で座って出なかったラガーレグルス(競走中止でした…)の単勝馬券で勝負した。粗削りという言葉がぴったりくるクリスタルブラックには、好きだった馬に何か通ずるものがあるような気がした。

 今年1月の3日間開催の翌日の14日、トレセンは全休日だったが、私は美浦で取材することが決まっていた。事前に申請した馬のみが馬場入りが可能になっており、この日は週末のレースへ向けて、コースに姿を見せたのは高橋文厩舎の5頭だけ。その中に、京成杯出走を予定していたクリスタルブラックの名前があった。

 普段と違って、ガランとした愛馬の調教をモニターで確認していた高橋文雅調教師に初戦を振り返ってもらう。「前の馬がもたもたしていたので、待ちきれなくて外を回したが、思った以上に走りが良かった」。その直後、クリスタルブラックが調整のため、坂路を駆け上がった。

 「持っていかれてる」

 モニターに映る愛馬は鞍上がなかなか制御することができないようで、首を上げたフォームのまま登坂。トレーナーはやんちゃなキズナ産駒の姿を「ククッ」と笑いながら見つめていた。

 やはり気性面が課題なのだろう。そう尋ねると、「(調教でも)やればやるだけ動いちゃうから。故障が心配なんだ」とセーブしながら調整過程を踏む苦労を口にした後にこう続けた。「でもクラシックには乗せていきたい」。未完成な心と体がかみ合わない現状ながら、能力を確信しているからこそ出た言葉。私は感じていた大物の感触を強くした。

 迎えた京成杯当日(1月19日)。クリスタルブラックは12頭立ての7番人気だった。レースでは1角から2角にかけて、坂路調教と同じように何度も首を上げて、吉田豊騎手の指示にそむきながら、後方を追走。それでも直線では、4角10番手から再び一頭だけ次元の違う末脚で伸びて、1番人気を集めていた良血牝馬のスカイグルーヴをゴール手前でとらえてみせた。

 吉田豊騎手も高橋文師もレース後に「まさか届くとは」「びっくり」と口をそろえた勝ちっぷり。名伯楽である大久保洋吉・元調教師の兄弟弟子タッグでの初の重賞制覇には強烈なインパクトがあった。

 レース後の高橋文師は「不安の方が大きかった。仕上げも能力的にもまだ100%ではない」と、まだ成長途上であることを強調していた。次走は皐月賞(4月19日、中山)直行が濃厚。無傷の2連勝で挑むクラシック。秘めた能力と体が完全に合致した時、どれだけ強くなるのか―。その時を楽しみにしながら、クリスタルブラックを追い続けたい。

(競馬担当・石行 佑介)

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