◆陸上 丸亀国際ハーフマラソン(2日、香川・丸亀市Pikaraスタジアム発着=21・0975キロ)
男子は小椋裕介(26)=ヤクルト=が1時間0分0秒の日本新記録で日本勢トップの2位に入った。青学大時代は箱根駅伝で4年連続7区を担った実力者は実業団入り以降、伸び悩んだが、“脱・青学”で心身を鍛え直し、自己記録を2分以上も更新。東京五輪代表選考である3月1日の東京マラソンへ弾み。前日本記録保持者となった設楽悠太(28)=ホンダ=は1時間0分49秒で6位だった。(晴れ、気温13・5度、湿度31・6%、西の風1・1メートル=スタート時)
誰よりも、小椋自身の表情が驚きに満ちていた。残り400メートルを切って藤本拓(30)=トヨタ自動車=をかわして日本人トップに浮上。トラック勝負の2位争いを制し、両手を広げてゴールに飛び込んだ。設楽の持つ1時間0分17秒を3年ぶりに更新する日本新記録に「自分でもびっくり。1時間1分台が目標だったので…」と笑顔が広がった。
弱さを認め、バネにした。2度目のフルとなった19年3月のびわ湖で2時間12分10秒。MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)出場権を求め、翌月のハンブルクに出走したが、低体温症で2時間40分50秒と惨敗。「実力が足りなかったということ。このままでは勝負できない」。何かを変えないと―。ヒントは同僚の高久龍(26)にあった。
MGC本戦に出場した高久の絞れた体と筋肉のつき具合を見て「後半の失速を防ぐには、筋力を増やさないといけない」と昨年5月から15種目のウェートトレを取り入れた。「“脱・青学”ですね。青学大時代はインナートレーニングが主だったので」。でん部を中心に鍛え、体重は58キロから60キロと約2キロ増。重くなった体は、走り込む中で着実にフォームを固めていった。内面も「『青学の小椋』ではなく、『ヤクルトの小椋』と呼ばれる存在に」と社会人としての自覚を持った。
指導する本田竹春監督は「発展途上ですが、真面目な選手」と伸びしろに期待する。同郷の先輩・菊地賢人(29)=コニカミノルタ=の影響でナイキ社の厚底シューズを使い始めた。初めて“実戦投入”した昨年11月のレースで、1万メートルの自己記録を約10秒更新する28分8秒80をマークし、手応えを得た。「けがのリスクも伴うシューズ。骨盤やでん部に負担がかかり、疲労骨折しやすくなる。もろ刃の剣だが、僕はウェートトレとハマった」。練習は履き慣れた他社製を用いる。厚底使用はレースのみで、今回でわずか3度目。自己改革で履きこなせるだけの筋力も身につけていた。
設楽や日本記録保持者の大迫傑(28)=ナイキ=、日本歴代5位の井上大仁(27)=MHPS=ら猛者が集う3月1日の東京マラソンが「今年一番のレース」という小椋。「2時間8分台が目標。ただ、今回のように『記録が出てしまった』という走りをしたい。五輪最後の1枠を目指して頑張ります」と下克上を宣言。地元・北海道での五輪マラソン。伏兵が「日本代表の小椋」を目指し、勝負をかける。(太田 涼)