【箱根への道】駒大・大八木監督&国学院大・前田監督 師弟対談…24年前の出会い、思い出、指導哲学語りつくす

固い握手を交わす駒大・大八木弘明監督(左)と国学院大・前田康弘監督
固い握手を交わす駒大・大八木弘明監督(左)と国学院大・前田康弘監督

 学生3大駅伝歴代最多タイの21勝を誇る駒大・大八木弘明監督(61)と昨年の出雲駅伝で初タイトルを手にした国学院大・前田康弘監督(41)が師弟対談を行った。大八木監督の熱いゲキ「男だろ!」は大学駅伝名物。駒大時代、その熱血漢に薫陶を受けた前田監督も今回の箱根駅伝で3位になった直後に男泣きし「男・前田」を襲名した。24年前の出会い、思い出から指導哲学まで熱く語り合った。(取材・構成=竹内 達朗、太田 涼)

 今年度の学生3大駅伝は「師弟対決」で幕を開けた。出雲駅伝で大八木監督率いる駒大がゴール直前までリードしたが、土壇場でドラマが起きた。学生3大駅伝単独最多となる駒大の22勝目を遮ったのは、くしくも駒大出身の前田監督率いる国学院大だった。土方英和主将(4年)が残り600メートルで大逆転し、駒大に3大駅伝を通じて初勝利。同時に3大駅伝初優勝を飾った。

 前田監督「出雲で優勝し、チーム全員が自信を持った。それが箱根駅伝3位につながった」

 出雲で惜敗した駒大は第2戦の全日本大学駅伝は3位。7位だった国学院大に勝ったが、最終決戦の箱根駅伝では8位。大八木監督は潔く今季を振り返ると同時に国学院大をたたえた。

 大八木監督「今季、駒大は選手層を厚くすることができなかった。国学院大は1年通して勢いがあった。前田は良いチームをつくった」

 大八木監督と前田監督。師弟の出会いは24年前に遡る。1995年4月、低迷していた駒大は当時36歳だったOBの大八木コーチを招へい。翌96年4月に前田監督は入学した。

 前田監督「その頃、大八木監督は新入生を引っ張って走っていた。私は入寮した直後、熱発で寝込んだ。恥ずかしかったし、悔しかった」

  • 駒大・大八木監督と国学院大・前田監督の師弟比較

    駒大・大八木監督と国学院大・前田監督の師弟比較

 大八木監督「入学当初、前田の印象は残っていない。新入生では大西雄三と西田隆維が強かった。ただ、前田は夏以降、1年生の3番手として存在感を出してきた」

 その年、駒大は予選会からの参戦だった。当時は20キロを各校14人が一斉スタートし、上位10人の合計タイムで上位6校が本戦の出場権を獲得できた。

 前田監督「残り1キロ、大八木さんに『お前がチーム10番手だ。お前で決まる!』とゲキを飛ばされて、死ぬ気でラストスパートした。でも、ゴールしたらチーム11番手でチーム成績に関係なかった。がっくりしたけど今、思えば大八木監督は当時から選手の力を引き出すことがうまかった。今では有名になった『男だろ!』というゲキが生まれたのは、その頃だと思う」

 大八木監督「あの時の予選会は必死だった。前年度の本戦で優勝候補だった神奈川大と山梨学院大がそろって途中棄権して予選会に回ってきたからハイレベルだった」

 トップ通過の神奈川大、2位の山梨学院大に続いて、駒大は3位で無事通過。本戦では「平成の大学駅伝王者」と呼ばれる第一歩をしるした。神奈川大が大会史上初めて予選会から優勝し、山梨学院大が2位。駒大は総合6位だったが、復路優勝を果たした。大学駅伝で初の優勝だった。

 大八木監督「それまで駒大は優勝には縁がなかった。だから、まず一つ優勝することが大事だった。この勝利でチームに自信がついた」

 前田監督「復路5人全員が区間2位。チーム11番手だった私は当日交代で7区から控えに回ったが、このチームは絶対に強くなると思った」

 駒大は翌年度の97年の出雲駅伝で3大駅伝初優勝。98年には全日本大学駅伝を制した。その年度の箱根駅伝は優勝候補に挙げられたが、惜しくも2位だった。

 前田監督「あの時の2位は悔しかった。1学年上の藤田敦史さん(現駒大コーチ)は泣きながら卒業していった」

 満を持して挑んだ99年度、前田監督が主将に就任した。

 大八木監督「競技力は3番手だったが、誰に対しても意見を言える。前田は学生時代からリーダーの素質があった」

 実質的な監督だった大八木コーチと前田主将が率いる駒大は2000年の箱根駅伝でついに初優勝を果たした。それから、ちょうど20年。師弟はライバルとして、しのぎを削る。共通点は圧倒的な熱量だ。

 前田監督「指導者は選手を指導することで給料をもらい、生活している。しかし、駒大時代、大八木さんが生活のために選手を教えていると感じたことは一度もなかった。チームを強くしたい、選手を成長させたい、という強い思いだけを感じていた。これを私は一番、見習っている。学生に『この監督、生活のために俺らを指導しているんだろ』と思われたら終わりです」

 今回の箱根駅伝で国学院大最高記録(19年7位)を大幅に更新する3位でゴールした後、前田監督は選手の頑張りに感動し、熱い涙を流した。「男だろ!」のゲキが有名な大八木監督の薫陶を受けた指揮官の代名詞は「男・前田」となった。

 前田監督「私が尊敬する人はもちろん大八木監督。その大八木監督が尊敬する人に興味があります」

 大八木監督「実業家の稲盛和夫さん。自分を犠牲にしても他の人を助けるという『利他の心』に感銘を受けた。教え子の前田が今、無我夢中で頑張っていることは本当にうれしいことだ」

 お互い忘れられない思い出がある。前田監督が1年時の秋、遠征で不在だった大八木監督の代役として、当時、幼稚園児だった長女と親子競技に参加した。

 前田監督「ほかのお父さんに負けないように全力で走った。楽しい思い出です」

 大八木監督「私も娘も前田に感謝しているよ」

 2人の熱血漢はともに柔らかな笑みを見せた。師弟の強い絆を感じた。今後も互いを高めながら大学駅伝界を盛り上げていく。

固い握手を交わす駒大・大八木弘明監督(左)と国学院大・前田康弘監督
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