「サイン盗み問題」で選手間対立、ファンの不満エスカレート

アストロズのホセ・アルテューベ(ロイター)
アストロズのホセ・アルテューベ(ロイター)

 サイン盗み問題は静まる気配がない。むしろ選手間の対立、ファンの不満がエスカレートして不穏な空気の中でキャンプインを迎えることになりそうだ。

 問題が起こった2017年当時アストロズに在籍、今オフ、ホワイトソックスにFA移籍したダラス・カイケルはこの問題について個人的な謝罪を口にしたものの、キーパーソンとなった告発者のマイク・ファイヤーズ(アスレチックス)を「チーム内の暗黙の了解を守らなかった男について多くの選手は快く思っていない」と、非難した。

 これに対してアスレチックスは「彼が批判されることを聞くとフラストレーションがたまる」と語ったボブ・メルビン監督を始め、マット・チャップマン内野手らが一斉に「勇気ある行動」と、擁護に回った。

 幸いなことに、両者の応酬はその後ないが、両チームが対戦するときに何かきっかけがあれば派手な乱闘も起こり得る。何しろ、ファイアーズはノーヒッターを2度やっていることで知られているが、血の気の多い選手としても有名なのだ。

 アストロズ選手たちに処分がないことにも不満の声が上がっている。MLB機構はまるで司法取引のように、調査段階で無罪放免と引き換えに選手たちに証言を求めたことを認めている。それにも関わらず、2017年のワールドシリーズで敗れたドジャースのコディ・ベリンジャー外野手は「選手の処分は必要」とSNSでつぶやき、打ち込まれたクレイトン・カーショー投手も「謝罪がない」ことを口にする。

 一方、アストロズ随一の人気選手、ホセ・アルテューベ内野手には本人が全面否定しているものの電子機器をユニホームに装着してサヨナラホーマーを打ったとの疑惑が拭いきれていない。イメージダウンは計り知れない。

 ファンは行動に移そうとしている。熱狂的なドジャースファンは、現地4月3日に行われるエンゼルスの地元開幕戦のチケットを大量買いしているという。対戦相手がアストロズだからだ。目的は大ブーイングをするためだ。今季はアストロズとのインターリーグが開催されないことから異例の『決起』になったという。

 かつて、ヤンキースが毎年のように潤沢な資金でビッグネームを手に入れていたころ、ヤンキース戦が行われたロイヤルズの本拠地球場の外野席から数人の観客がドル札紙幣のコピーをばらまいたことがあった。それはまだ規模も小さく、どこか笑えるところがあった。だが、今度は組織化されたグループが数百人規模で押し掛けるというから、とんでもない大ボリュームのブーイングになることだろう。不測のアクシデントも心配される。

 夢のような黄金時代から一転、暗黒時代へ堕ちる危険をはらむシーズン。解任されたA・J・ヒンチ監督の後任探しは9人のリストから絞られ、監督歴22年、通算1863勝のダスティ・ベーカーに決まったものの、誰が就任してもタフな仕事になることは間違いない。進むべき道を誤った代償の大きさは時間とともにますます実感を伴ったものになるだろう。この問題の処分はまだレッドソックスに下されていない。迅速な問題処理と、効果的なダメージコントロールが望まれる。(スポーツジャーナリスト・出村 義和) 

出村 義和
 (でむら・よしかず)1971年、ドジャースタジアムでMLB初観戦。ベースボールマガジン社でアメリカ総局勤務、週刊ベースボール編集長などを務める。独立後、ニューヨークをフランチャイズに19年間MLBを中心に多岐にわたるジャンルで取材、執筆を行う。帰国後、JスポーツでMLB中継の解説者も務める。

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