逆転ドラマに記者の原点を再認識…ボクシング全日本新人王戦

安藤教祐(左)から形勢逆転のダウンを奪う表祥(右)。田村記者もリングサイド(右)で驚きの表情を浮かべる
安藤教祐(左)から形勢逆転のダウンを奪う表祥(右)。田村記者もリングサイド(右)で驚きの表情を浮かべる

 昨年末。取材の合間に携帯電話が鳴った。未登録の番号だったが出てみると、向こう側の声は弾んでいた。「先日は新聞に載せて頂き、ありがとうございました」。記者歴も20年を超えているが、こんなに丁寧に礼を言われるなんて久々だったので、少し驚いた。声の主はプロボクシングの全日本新人王決定戦(12月22日、後楽園ホール)のライトフライ級で優勝した表祥(おもて・しょう、25)=SFマキ=だった。23日付け本紙の関西版に「表祥が涙の逆転新人王」と見出しが躍ったように、まさに逆転のドラマがあった。

 京都の地方ジムから勝ち上がった西軍代表の表は序盤、アウェーの雰囲気に飲まれてパンチが出ない。初回から東軍代表の安藤教祐(27)=KG大和=のワンツーやボディーブローを被弾。3回までワンサイドな内容に、リングサイドの記者席で「判定負けか」と思った。だが4回、狙いすました表の右フックがさく裂し安藤ダウン。場内が沸き上がった。立ち上がった相手から同ラウンド終了間際にも左フックでダウンを奪い流れを変えた。最終5回も優勢で判定勝ちし「ジム初の全日本新人王になれた」と涙。隣で66歳の沖敬介会長もうれしそうだ。

 その18年前の2001年にも、同じライトフライ級で全日本新人王に輝いた高山勝成(当時、大阪・エディタウンゼントジム所属)から礼の電話をもらったことを思い出した。高山はその後、1階級下のミニマム級で主要4団体の世界王座を全て獲得した。現在の表に、当時の高山ほどのボクシングセンスはまだないが、成功してやろうという野心や貪欲さは同じものを感じる。「会長の腰にベルトを巻いてあげたい」と語る25歳は現在、ビル清掃の仕事もしながら生計を立てる。今後も飛躍してタイトル戦線に加わってほしいものだ。

 後日、本紙カメラマンが撮影した“逆転”のダウンシーンの写真を見てみると、リングサイドで私は口を開けて驚いていた。表のほか、スーパーライト級では“越後の虎”こと本多航大(20)=川崎新田=が初回に2度倒されながらも持ちこたえ、2度ダウンを奪い返して4回TKO勝ち。MVPにも選ばれた。何度も世界戦を取材し、気付けば中堅、ベテラン記者と呼ばれるような年代になったが、新人ボクサーたちから“つまずいても最後まであきらめない”という原点を再認識させてもらった。(記者コラム・田村 龍一)

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