徳勝龍Vの瞬間、付け人・鳩岡は病室にいた うれしさと悔しさ「一緒に花道で喜びたかった」

鳩岡
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優勝者インタビューで涙をこらえる徳勝龍
優勝者インタビューで涙をこらえる徳勝龍

 初場所千秋楽(26日)で、徳勝龍は史上最大の下克上となる幕尻Vを果たした。その付け人を務めるのが、幕下・鳩岡。2人のルーチンは、取組直前に土俵上の関取と目を合わせて、花道からアイコンタクト。勝って帰ればグータッチで祝福。だが、一番近くで支えてきた徳勝龍が歴史的Vを果たしたとき、鳩岡は都内病室でタブレットを眺めていた。

 拓大卒の25歳。物腰柔らかく、周りからは親しみを込め、「ハトちゃん」「ポッポ」と呼ばれる。大卒力士の朝乃山、北勝富士ら角界をけん引する同年代の力士とも親交は深い。今場所は、最高位の幕下21枚目として臨み、開幕4連勝で勝ち越し。同部屋で序二段Vの宇良、幕内Vの徳勝龍と共に勢いに乗っていた。その時、悲劇が起こった。

 5番相撲(20日)の全勝対決・琴太豪戦で、立ち合いに左腕を手繰られ、背後を取られると、寄り倒された。右膝を折り曲げるようにバタッと倒れ、鳩岡の表情が一変。自力で起き上がれない姿を見て、私はすぐに花道へと走った。いつもは一対一で和やかにかわず会話も、この日ばかりはすでに大勢の記者に囲まれていた。車椅子で運ばれ、悲痛な表情が見えたとき、私は何も聞くことができなかった。その日の夜、連絡すると、「しばらくかかりそうかな」。文体から伝わる無念さに、私は励ましの言葉も浮かばなかった。

 右膝の負傷は手術を必要とし、千秋楽の翌日27日に予定された。鳩岡と徳勝龍は、多い時では週2、3回食事に行く仲で、「先輩であり、ライバル」と意識する存在だという。付け人になってから約1年。関取の苦しい時期を共に過ごし、最高の喜びを分かち合えるはずだった。

 そして迎えた悲願の瞬間。幕尻として初めて千秋楽結びの一番に挑んだ先輩が、大関・貴景勝を撃破。「うれしいけど、一緒にいられずに悔しい。もしかしたら宇良さんと3人で優勝できたかもだし…。負けたくない気持ちも」と様々な感情が駆け巡った。歓喜の余韻を画面越しに見つめると、「関取と一緒に花道で喜びたかったな。俺も関取の受け取った後の賜杯を持ちたかったな」。病室で自然と涙がこぼれた。

 神懸かった快進撃の徳勝龍とは対照的な鳩岡。この経験はきっと彼の糧になる。また土俵に戻ってくる。徳勝龍のような大逆転ストーリーがここから始まる。(記者コラム・竹内 夏紀)

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