2006年に廃部となったシダックス野球部のOB会が25日、都内で行われ、昨秋に就任した日本ハムの武田勝投手コーチ(41)が出席。03年から3年間、同社の監督を務めた野村克也氏(84)=野球評論家=と久々に再会し、人材育成へ思いを新たにした。
新米コーチのスピーチが始まると、かつての指導者や先輩たちから、熱く温かい視線が注がれた。
「2001年入社の武田勝です。シダックスでの5年間は、社会人として自分を変えてくれた年月でした。自分がチームのために何ができるか、考えた5年間でした。『シダックス野球部』という名を忘れられないように、広げていくのも使命だと思います」
自らの原点に思いを馳せた、武田勝らしい語りに、ひときわ大きな拍手が注がれた。
ノムさんにあいさつすると「ギリギリまだ名前を覚えてくれていたんで、うれしく思いました」と謙遜したが、老将にとっては自慢の教え子だ。野村氏は技巧派左腕の日本ハムコーチ就任に「心配なのは『しゃべれるのかな?』ということ。おとなしいからね。でも立場が変われば、人間は変わる」と語ったが、これは杞憂というものだろう。
札幌ドームでのお立ち台でのオカリナ演奏や軽妙なトーク、石川でのテレビ、ラジオでのコメンテーター業など、卓越したトーク術はノムさんにひけを取らない。勝コーチは「北海道が僕を変えてくれたんです」と爽やかに笑った。
野村氏は勝コーチに「選手を育てる上で一番大切なのは愛だ。愛なくして人は育たない」とエール。これには勝コーチも「野村監督のように、最後には人を残せるように頑張っていきたい。監督の教えをファイターズに持っていこうと思います」とキャンプインへ意気込んだ。
OB会には志太勤最高顧問や巨人・野間口貴彦スカウトら53名が出席。同部は巨人・森福の引退によって現役プロ選手がゼロとなったが、プロ、社会人、大学、高校、中学、少年野球と多様なカテゴリーに指導者を輩出している。「今度は森福にも来いと伝えたいと思います」と勝コーチ。廃部から14年経つが、ノムラの遺伝子を引き継ぐ男たちは球界の広範囲へ散らばり、各地で“野球の伝道師”となっている。(加藤 弘士)