【巨人】スガコバ“解散”で見えたもの 小林誠司、30歳の変化〈2〉

満面の笑みを浮かべる小林
満面の笑みを浮かべる小林

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乾燥機の温もりが抜けない洗濯物が、ウェート場で山積みにされた。汗まみれになったウエアはすぐに洗濯機に投げ込まれ、練習中には再び手元に戻ってくる。

柔軟剤の匂いがほんのり香る洗濯物の中で、小林はひと際大きなものに飛びついた。

「これ、やばい」

  • 井上のスエットパンツを履いてみた
  • 井上のスエットパンツを履いてみた

公称体重114キロ、ロッテの井上晴哉のスエットパンツで85キロの自分を覆う。その姿に、同い年の井上も思わず、噴き出した。

大阪人。何かいつも狙っているのかもしれない。

記者会見で「浮気」を語ったのは昨年12月のことだった。

山口俊と共に輝いた「2019プロ野球最優秀バッテリー賞」の授賞式。

  • 山口とともにバッテリー賞の表彰式に出席
  • 山口とともにバッテリー賞の表彰式に出席

「今シーズンは途中で状況が変わりまして、『俊さんとずっと組むんだな』と思ったんで、ちょっと浮気して…。俊さんとこの賞を狙おうと思いました」

愛嬌たっぷりにこう言ってのけた。

だが、小林の“浮気”は、ここだけじゃなかった。

  • 真剣な表情を見せる
  • 真剣な表情を見せる

新たな本命が現れた

午前の練習が終わると、しばしの休憩。携帯端末をいじりだした。

「これは絶対、丸の影響やな」

広島から昨季FAで加入した丸佳浩は東京ドームのロッカーが隣。暇つぶしにゲームをするようになったのは、チーム内でも屈指のゲーム好きの同級生がいつも楽しんでいる姿を見てきたからだ。

やや前のめりになって話し出した。

「変わりました。でかいっす。みんなにとって、でかいと思います」

  • 練習が終わり、笑顔で丸と引き上げる
  • 練習が終わり、笑顔で丸と引き上げる

丸はチームに対して自ら発信した。それによってチームが変わり、選手たち全員にプラスに働いたということのようだ。

「僕は同級生なのでしゃべりやすいし、メシもよく行きますし。いろんな話をしましたよ。試合のことを振り返って『いや、まあ結果論になるからあれだけど、俺はこう思ったよ。こういう時はああした方がいいんじゃないかな』とか言ってもらったり」

「まあまあ苦しい時もいろんな話をして、じゃあ次こうしよう、という気持ちになれた。丸には野球の話、ホントいろんな相談をして…」

イキイキと語る。これまでそういう相手は居なかったのか―。

相手とはやっぱり対等がいい

「居ましたよ! 智之にしても…う~ん…他にあんまり居ないっすね」

新たに何でも話せるパートナーの出現。スガコバからマルコバへ。これは“本気”かもしれない。

  • 小林の打撃用手袋
  • 小林の打撃用手袋

「丸はすごいっす。後輩に対しても丁寧に教えるし、野球に取り組む姿勢のオンオフはむちゃくちゃハッキリしているし、切り替えがすばらしい。4三振しても『またあした~』ってケロッとして帰る。それだけ自信があるってことですね」

賞賛の言葉は後を絶たなかった。でも、それだけで終わらない。

  • ボールを手にする
  • ボールを手にする

「僕は無理っすよ。丸とはポジションが違うじゃないですか。僕なんかは(自分の成績だけでなく捕手として)、ピッチャーの結果、チームの結果でも変わってくる。自分が打たんでも、チームが勝ったらうれしいし」

菅野と丸について問うと「いやいや、その辺のクラスのことは語れないっすよ」と言っていた。

でも、やっぱり同級生。肩を並べる存在でありたいのかもしれない。

  • ダッシュする小林
  • ダッシュする小林

体と心のメンテナンス

全身の力を一気に抜いて、トレーニング機材から離れた。肩で息をする。

汗を拭き、ペットボトルの飲料を口にした。

  • 筋力アップを狙う
  • 筋力アップを狙う

続いたのは「ブイーン」という鈍い音。

「去年買ったんですよ」

30歳で初めて手にしたマッサージ器。

  • 30歳になり、マッサージ器も購入
  • 30歳になり、マッサージ器も購入

これまでシーズン中もマッサージを受けたことのない男が、30代になってさすがに体をケアするようになった。

さぞかし強靭な体なんだろうと思いきや、そうでもないらしい。

「痛いところはいっぱいあるよ。ホンマに全然ある。でも痛い痛いって言って、いいことないでしょ。出来るなら黙ってやってた方がいい。出来るのに痛い痛い言っているのが一番カッコ悪い」

「休んだら終わりっすから。出なくなったら、野球選手終わり」

体だけじゃない。心だって弱る時はある。エゴサーチこそしないが、自分のことがネットニュースに上がるとコメント欄につい目が行く。酷評を見るのは、しんどい。

ジャイアンツの正捕手として生きること

「そりゃ、倒れそうになってますよ。でも、折れるくらいの心なら、もうとっくに折れてる。ジャイアンツに居る、っていうことが多少なりとも影響してるとは思いますけど、つらい部分は相当あります。でも、ありがたいことでもありますからね」

小林誠司という男は、やはり強いのかもしれない。

  • どんな練習にも全力だ
  • どんな練習にも全力だ

「いやいやいや、そりゃもう、負けたくないからです。絶対負けないと思ってやってるし。まだまだできると思ってやってる。もっとやれる。もっとやらなあかん」

巨人の正捕手になってみせる。

「自分が正捕手と確信できるところまで突き詰めたい。(炭谷)銀さんに勝ちたいと思ってやります。大城に負けるつもりもないので」

2020の戦いが始まる。

  • 小林のミット
  • 小林のミット

取材・柳田寧子 撮影・義村治子

◆小林 誠司(こばやし・せいじ)1989年6月7日、大阪・堺市生まれ。30歳。広島・広陵高では野村(現広島)とバッテリーを組み、2007年に春夏連続甲子園に出場、夏は準V。同志社大では4季連続優勝に貢献。日本生命から13年ドラフト1位で巨人入団。178センチ、85キロ。右投右打。年俸1億円。

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