興国高サッカー部・内野智章監督が描く育成術 世界に輝く「才脳」呼び起こせ!

世界に通用する選手の育成を目指し、独特の指導を貫く興国高・内野智章監督(右)
世界に通用する選手の育成を目指し、独特の指導を貫く興国高・内野智章監督(右)

 興国高サッカー部が今冬、激戦区の大阪を勝ち抜いて全国高校選手権に初めて出場した。初戦で敗れたものの、近年はJ1神戸の日本代表FW古橋亨梧(25)ら多くのJリーガーを輩出。2006年に就任した内野智章監督(40)は「とにかく技術重視」の指導方針を貫く。従来の部活動とは一線を画すアプローチで、世界に通用する人材の育成を目指している。(取材、構成・種村 亮)

 近年の実績から注目を集める興国だが、内野監督が就任した06年の部員はわずか12人だった。それ以前は、9度の花園出場を誇るラグビー部が練習をしていないタイミングを見計らってボールを蹴っていたという。

 「元々やんちゃな学校。普通に誘ったって誰も来てくれなかった。とにかく熱心に中学校に足を運びましたけど、最初はサッカー部の先生に名刺を渡しても突き返されたり。悔しかったけど、そういうのも変えていかなあかんな、と」

 学校への興味を持ってもらうために他校にないアピールポイントをつくり出す―。熟考の結果、たどり着いたのがテクニック重視のサッカーだった。モデルとなったのは元オランダ代表や同国の強豪アヤックス、バルセロナ(スペイン)で活躍したFWヨハン・クライフと、「セクシー・フットボール」で05年度の全国高校選手権で全国制覇を成し遂げた野洲高(滋賀)、さらに個人技を生かした伝統のスタイルで今冬の日本一に輝いた静岡学園だった。

 「クライフが『とにかくテクニック。サッカーは見ている人を楽しませるものだ』と言っていたのが僕の原点。そうした中、野洲が優勝した時のサッカーがすごくテクニカルで、山本(佳司)監督(現総監督)に話を聞いた時、やっぱり自分がやろうとしていることは間違いじゃないなと思った。そこから野洲に通うようになって、全国出場を決めた時も最初に山本先生に『勝ちました!』って電話しました。静学とも以前から仲が良くて。選手権直前も互いにベストメンバーで練習試合をして勝ったんです」

 日々の練習では「脳に刺激を入れろ!」と高校の部活動では聞き慣れないフレーズが飛び、選手たちは小学校低学年が使う2~3号球のボールで器用にドリブルしていく。

 「普段、サッカーをやっていてボールの大きさや硬さって意識しないですよね? 当たり前の存在で。それを変えることで脳に刺激がいく。『あれ、いつもと違うぞ』と脳が情報を得ようとすることで、神経がより敏感になる。例えば片足立ちして目をつぶったら視覚情報が遮断されるので、バランスを保って立つために、触っている部分から脳が情報を収集しようとする。足の裏のどの筋肉を使っているか、どこに重心が乗っているかを。選手には自分の好きなタイミングでボールの大きさを変えさせる。聴覚も同じ。だからよく『ボールを触る音を聞け』と言ってます。自分が思い描いた通りのリズムの音が聞こえてくるか、と。逆に自分がトラップからパスを出すリズムを『トン、パン』とか口に出すことでも脳に刺激を送る。高校3年間はすごく短い。そのなかでどれだけ技術習得を高められるかが大事なんです」

 独自の練習方法が生まれたきっかけは、大学時代の出会いにある。

 「高知大にいる時、徳島大の荒木先生(同大学名誉教授)という方から教わったものです。『脳はすぐオートメーション化するから慣れてしまう。その慣れが技術習得のスピードを遅らせる。慣れたら、すぐ刺激を変えなさい』『トラップもキックも目をつぶれ』とか、そういった話をめちゃくちゃしてもらいました。目で見た情報は視覚を通って脳に入り、脳から神経系を伝って筋肉に伝達される。ただ、その作業が行われている間にロスがあるわけですよね。野球でも打者は弾道から自分がバットを出す先をイメージする。だから目を閉じて脳でボールの落下点を予測して、イメージしたポイントに足を出す、そういうボレーシュートの練習もしています」

 海外のサッカー先進国で見聞きした経験も、今の指導に生かされている。

 「例えばブラジルだと、小さい頃から2か月に1回くらいセレクションがあるそうなんです。小、中学校のクラブで。日本は『自主性を大事にしろ』とか言うじゃないですか。正しいんですけど、ブラジルの子たちは強制的に自主性が出る環境なんです。生き残るしかないなかで自分で考えている。じゃあこの国でどうやって上手くなる?と考えた時に、勉強して違う厳しさをつくろうと。論理的に成長速度を上げるためにどうするのかという話が脳への刺激につながってくるんです」

 選手権では初戦の2回戦で昌平(埼玉)に敗れ、全国初勝利はならなかった。その一方で指揮官は「選手権にとらわれてほしくない」と力を込める。

 「昌平に負けた次の日に(同校OBの日本代表MF)南野がリバプールでFA杯に出てたんです。1―0で勝ちましたけど、得点した選手は18歳。『世界の18歳はここに出てるで』って、選手たちに話しました。『ここ(選手権)にとらわれてたら俺ら終わるよ』と」

 今後の目標も世界を見据えている。

 「世界で活躍できる選手を増やしたい。高校からダイレクトに欧州に出ていったり、Jリーグに入っても23歳までに海外移籍できるレベルの選手を育てたいです。そうすれば移籍金など学校にとっても収入になる。よりスポーツに投資してもらえて、いい選手を育てる環境がどんどん良くなる。そのサイクルができあがると、日本サッカーは絶対強くなると思うんです。日本の育成の目を世界に向けさせる、それが僕の目標なんです」

 ◆内野 智章(うちの・ともあき)1979年5月31日、大阪・堺市生まれ。40歳。初芝橋本高(和歌山)では、1年時に全国高校選手権(95年度大会)で4強。高知大を経て愛媛FCに入団したが、原因不明の体調不良により1年で退団、引退した。05年に興国高で非常勤講師になり、翌年から体育教師およびサッカー部監督を務める。家族は妻と2男。趣味は愛車でのドライブ。

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