谷津嘉章が黙とうを捧げたケンドー・ナガサキさんの異色すぎる遺影…金曜8時のプロレスコラム

ケンドー・ナガサキさんの遺影を前に大いに語った谷津嘉章(右)と流智美氏
ケンドー・ナガサキさんの遺影を前に大いに語った谷津嘉章(右)と流智美氏

 糖尿病のため昨年6月に右足を切断し、義足で東京五輪の聖火ランナーに挑むことが決まったプロレスラーの谷津嘉章(63)が18日、東京・新宿区内でトークショー「谷津嘉章はやっぱり凄いヤツ」に出演した。3月29日に栃木・足利市で聖火リレーに出場することが決まったことと、初の自伝「さらば闘いの日々」(宝島社、1870円)の出版を記念してのもので、プロレスのグッズ製造・販売のチームフルスイング(利根川亘代表)が主催し、評論家の流智美氏(61)が司会進行を務めた。

 開会に先立ち、今月12日に71歳で亡くなったケンドー・ナガサキこと桜田一男さんに10カウントゴングを捧げ、追悼した。谷津は5日に東京・代々木で開催されたプロレス・コンベンション「闘強魂」で桜田さんと再会していた。「びっくりしました。この間、会ったばかりだったから。一緒に記念写真撮って『おい元気かお前。今年はオリンピックだから、がんばれよ』って言われたばかりだったんで」

 黙とうを捧げる時に谷津が持った桜田さんの遺影がシュールだった。

 通常なら遺影はモノクロで単独の顔写真だが、使用されたのは、頭頂部をそり上げた落ち武者スタイルに顔面ペイントのケンドー・ナガサキなど、これまで桜田さんが演じてきたキャラクターの顔が5種類のコラージュ。しかも赤、緑、黄色、ピンクとサイケデリックなデザインで、文字通り異色の遺影となった。

 駆け出し時代の桜田一男、海外に出てひげを生やしたミスター・サクラダ、覆面レスラーのドリーム・マシーン、中ぞりペイントのケンドー・ナガサキ、そしてスキンヘッドのナガサキだが、このスタイルでは、ドラゴン・マスターとも名乗った。これはチームフルスイングが製作したポートレートで、桜田さんの直筆サインを入れて販売されているものと同じデザインだ(プレミア必至)。

 ランボー・サクラダの姿がないのは残念だが、幻のドリーム・マシーンは貴重すぎる。頭頂部をそり上げたケンドー・ナガサキ時代、米国から全日本プロレスに呼び戻された時、桜田さんは米国でマスクマンのチャン・チュンと名乗っていた時のマスクを被らされた。日本ではドリーム・マシーンと名付けられて謎の外国人扱いだった。1982年のことで、ザ・グレート・カブキが凱旋帰国して人気爆発するのは1983年だから、ケンドー・ナガサキのスタイルで凱旋帰国していたらどうなっていたか…。時代のすれ違いと言わざるを得ない。

 帰国先を新日本プロレスに変えた1985年は、長州力と谷津らの離脱で日本人選手が不足していたため、素顔のランボー・サクラダとして初登場した。落ち武者の頭にカツラを乗せて、ベビーフェースになってはみたものの、ヒールではない桜田さんが人気を集めることはなかった。翌シリーズ「IWGPタッグリーグ戦」から、ついにケンドー・ナガサキを日本初公開。ミスター・ポーゴ(故・関川哲夫さん)とのペイント悪役コンビで本領を発揮した。”七つの顔を持つ男”はプロレスならではの、おどろおどろしさといかがわしさにあふれていて、魅力的だった。それらを一枚に凝縮した遺影だったのだ。

 谷津のトークショーでは、アマレス時代からの足跡を2部に分けて、90分2本勝負のフルタイム戦となった。

 第1部は1976年モントリオール五輪男子レスリングフリースタイルで8位入賞し、1980年モスクワ五輪は日本のボイコットで“幻の金メダリスト”となり、アントニオ猪木にスカウトされて新日本プロレス入団、長州力との維新軍を経て、新日本離脱まで。

 第2部は、ジャパンプロレス、全日本プロレス、SWS移籍と団体崩壊、社会人プロレスSPWF旗揚げ、悲劇のWJ(ワールド・ジャパン)プロレス、総合格闘技PRIDE参戦まで、波乱万丈の格闘人生は裏話を交えて盛り上がったが、すべてを話し切れないまま終了のタイムアップのゴングとなった。

 谷津と桜田さんは、SWS時代に道場・檄で同門だった。「ダラスでお世話になりましたね」米国武者修行時代に、テキサス州ダラスで悪役道を学んだ。5日のプロレス・コンベンション「闘強魂」では、ケンドー・ナガサキとキラー・カーン(小沢正志)の間に入って記念写真を撮った。「最初にプロレスを教えてくれたのはキラー・カーンの小沢さんで、桜田さんと小沢さんは同じ相撲出身で、米国でトップヒールになった」と自身のルーツをしみじみと語った。

 谷津はダラスで日本の悪役「トラ・ヤツ」というリングネームで、カブキらと抗争した。「テキサスに行った時には、もうトラ・ヤツという名前がついていた。どういうことか、ジョニー・マンテルに聞いたら『トラはショーグンだ』と教えてくれた」という。当時、米国で放送されていたテレビドラマ「SHOGUN(将軍)」の主人公が吉井虎長(三船敏郎)だった。「竹刀の殴り方を教えてくれって言われて」と竹刀を使ったケンドースティックマッチなどをこなした。

 日本では登場することがなかったトラ・ヤツも竹刀がトレードマークだった。米国でグレート・ムタ(武藤敬司)は、ザ・グレート・カブキの息子という触れ込みだったが、トラ・ヤツは、ケンドー・ナガサキの息子だったと言えるのかもしれない。(酒井 隆之)

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