平成・令和をまたぎ高級マグロ落札 初競りの現場で目撃した“すしざんまい劇場”

1億9000万円で落札した大間産マグロを置いてポーズを決める「喜代村」の木村清社長
1億9000万円で落札した大間産マグロを置いてポーズを決める「喜代村」の木村清社長

 今月5日の午前3時、眠い目をこすりながら豊洲市場へ向かった。前夜の4日には東京で初雪が観測され、身を切るような寒さだったが、場内は新春恒例の「初競り」の熱気に包まれていた。2018年に開場した豊洲市場で行われる初競りは今年で2回目、令和になってからは初めてとあって、報道陣も30社以上、海外メディアも見学に訪れ、市場は活気にあふれていた。

 ずらっとマグロが並ぶ光景に感動していると、今年の初競りにも、黄色の長靴を履いた、マグロ大王「喜代村」の木村清社長の姿があった。同社は19年の初競りで、278キロの青森県大間産クロマグロを、なんと3億3360万円で落札した。これは、映画「007 ゴールドフィンガー」などの撮影で使われ、2010年、英ロンドンのオークションで落札されたジェームズ・ボンドの愛車、アストン・マーチンと同額、そして吉野家の牛丼並(380円)なら、365日3食食べても793年分相当の値段だ。

 そんなご祝儀価格のマグロが、この瞬間に目の前で落札されるのかという期待感が見学ブースや報道陣からも感じられた。一方で、市場関係者からは例年、「喜代村」と水産仲卸「やま幸」による一騎打ちで値段が跳ね上がるマネーゲームに「やりすぎ」という声や、「ご祝儀価格目当てに漁師が無理をしてでも漁に出て、事故でも起きたらどうする」といった苦言があがるのも現実だ。

  • 「喜代村」が目をつけたと見られる1匹のマグロの周りは、競りの動向が全く分からなくなるほどの人だかりになっていた

    「喜代村」が目をつけたと見られる1匹のマグロの周りは、競りの動向が全く分からなくなるほどの人だかりになっていた

 盛り上がるのはこの2社くらいで、マネーゲームに参加できない周囲は冷ややかな視線を送るのかと思っていたが、そんな予想はあっけなく裏切られた。午前5時ごろ、「初競り」の幕を開ける鐘が高らかに鳴ると、「喜代村」が目をつけたと見られる1匹のマグロの周りに人だかりができ、輪が何重にもなり、競りの動向が全く分からなくなるほどの人だかりになっていた。200人ほどの市場関係者が一様に手を頭の上いっぱいに伸ばし、スマートフォンで競りの様子を撮影する光景が広がったことに少し驚いた。

 注目された競りは、あっという間に決着がつき、昨年に引き続き「喜代村」に凱歌が上がった。競りの対象となるマグロを見定めた後は、木村社長は競りに直接参加するのではなく、同社員が競りの場に立ち、276キロの青森県大間産マグロを、史上2番目の高値となる1億9320万円で落札した。木村社長は「高い買い物? お客さんにおいしいマグロをいっぱい食べてもらいたいだけ!」と独特のダミ声を響かせた。高値とはいえ、見学したメディア30社以上が、その日のニュース番組や夕刊、翌日の朝刊で報じるのだから、広告効果を考えると決して高い買い物ではないだろう。

 その証拠に、競りを終えた数時間後には、「すしざんまい」築地本店前に、縁起のいい初競りマグロを求めて、約3時間待ち、200人近い人が列を成した。このマグロから約1万2000貫分がとれ、木村社長が「1貫6万円くらいの価値がある」と話した大トロは、超破格値の1貫398円で提供された。賛否はあるにしても、平成と令和の時代をまたいで、史上1番目と2番目の高値マグロを競り落とし、客に福をおすそわけしたマグロ大王が、来年の初競りの主役となることは間違いないだろう。(記者コラム)

1億9000万円で落札した大間産マグロを置いてポーズを決める「喜代村」の木村清社長
「喜代村」が目をつけたと見られる1匹のマグロの周りは、競りの動向が全く分からなくなるほどの人だかりになっていた
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