武井壮、陸上に出会った町が壊れた…阪神大震災25年「第2の故郷」神戸にいまだ感謝

阪神大震災で被災した武井壮は、その経験とこれからをインタビューで語った(カメラ・渡辺 了文)
阪神大震災で被災した武井壮は、その経験とこれからをインタビューで語った(カメラ・渡辺 了文)
神戸学院大の陸上競技部時代の武井壮(提供写真)
神戸学院大の陸上競技部時代の武井壮(提供写真)

 6434人が亡くなった阪神大震災は17日、発生から25年を迎える。神戸学院大の学生だったタレントの武井壮(46)は当時、神戸市西区のアパートで被災し、陸上・十種競技のトレーニングを継続するため東京へ避難した経験を持つ。2016年にMBSテレビ(大阪市)のスポーツ討論番組「戦え!スポーツ内閣」(水曜・後11時56分)のMCに就任。「第2の故郷」と語る関西から、恩返しのメッセージ発信を続けている。(古田 尚)

 真冬の早朝に大都市を襲った震災から四半世紀。武井は今も、当日の景色を鮮明に覚えているという。

 「テレビを見ながらそろそろ寝ようかなと思った寝入りっぱなに、カタカタカタと震度1か2くらいの揺れ。その何秒後くらいか分からないけど一気にドゴーンという音と一緒に激しい揺れになって、一瞬で部屋の中はぐちゃぐちゃ。生まれて初めて、意識していない大きな悲鳴を恐怖で上げたのを覚えています」

 揺れが収まっても冷静さは失ったまま。外から大声が聞こえ、ようやく停電を把握した。

 「テレビのリモコンで何回もスイッチを入れるけどつかない。割れているガラスを踏んで足から血が出たので、ベッド下の陸上のスパイクを履いて、電話で実家に連絡して何が起きたのか聞いてみようと思って受話器を上げたら、音もしない。外に出たら人がワーッと入り込んでいる状態で、町が全部壊れてしまって、目の前のスーパーのガラスが全部割れていた。ショックと衝撃で我を失っていました」

 大学で最初の試合を地元紙に顔写真つきで掲載されたことから、本格的に陸上に専念。3年生で十種競技を始め、記録も伸び出した頃だった。ショックは大きかったが、日本選手権が控えていたため練習の場を求め、バイクで6時間かけて東京へ向かった。

 「スムーズに記録が伸びて、日本一を狙えるかもしれないと感じていた時。大事なトレーニングの時期に地震が起きて、学校も春まで休校になりました。マンションの周りでがれきをどかしたりする作業も一通りしましたが、やっぱり生活ができない。最初は兵庫の北の方に住んでいた友人の自宅にちょっと避難させていただいたんですが、そこにずっといるのも申し訳ないので、4、5日目ぐらいにバイクで避難した記憶があります」

 東京では、強豪の日大に練習の場を求めた。

 「合宿所にお邪魔して『日本選手権を控えているので練習を休みたくない』と伝えたら、快く受け入れてくれました。各種目に日本一の先輩がいる。最高の環境に半年近くいて、日本一の人間がどういう活動をしているかを見たことで勉強になり、自信にもなった。ウチの大学はそんなに強い大学じゃなかったけど、その中でも誰にも負けないよう過ごしていた日々に、確信めいたものも持てました」

 結果的には東京へ向かったことで成績が伸び、神戸には半年後に戻った。

 「6月の日本選手権は初登場で6966点だったと思うんですけど、7000点を出すトップ選手仲間入りのギリギリまで迫れて、7月の日本インカレで7020点かな。半年で一気に記録が伸びて、全国2位になって人生が開けた。記録の伸びと同時に神戸も元気を取り戻して、インカレ後に1回、神戸に帰ったんです」

 再び戻った神戸では、市民の頑張りと町への愛情に元気をもらったという。

 「いまだに感謝しています。神戸の人たちの頑張りと、オリックスの活躍も。グリーンスタジアム(現ほっともっとフィールド神戸)の山ひとつ越えた裏側に僕らのグラウンドがあったんですが、同級生のイチロー選手がプロ野球界の話題を独占してスーパースターになっていく姿を見に行って刺激を受けたし、あんなふうにスポーツでスターになりたいって強く思った。自分も神戸を元気にできる存在に、日本一になろうと感じていましたね」

 現在は東京で暮らしながら、マスターズ陸上の競技と芸能活動を両立。初めてMCを任されたのが「戦え!スポーツ内閣」だった。震災からの復興を成し遂げた市民の努力とは比べるべくもないが、日々の積み重ねが結果につながるというメッセージを、番組を通じて伝えようと努めている。

 「関西で過ごした(大学の)4年間は僕にとって、言葉を飾るわけでもなんでもなく、かけがえのない4年間。第2の故郷です。関西で出会った陸上で人生が花開き、スポーツを扱う番組ができるのは、今までの人生を全部つなぎ合わせてくれたよう。スポーツはこんなふうに積み上げたらこう順位がつきますよという、シンプルな一例。僕らは人生を輝かせる方法の指標をいただいて、それをいかに世の中に還元するか。努力の仕方や物事への向き合い方をスポーツを通してお届けしているので、これからも皆さまに、今日よりも明日がより成長できるように“気づき”を与えられる番組になればいいなと思っています。この番組は僕にとって、素晴らしいメッセージの発信場所なんです」

 ◆武井 壮(たけい・そう)1973年5月6日、東京都葛飾区生まれ。46歳。神戸学院大時代に陸上を始め、97年に十種競技の日本チャンピオンとなる。第一線を退いた後は、米国へのゴルフ留学などを経験。自らを「百獣の王」と称し、本格的にタレント活動を始める。現在も陸上を続け、2015年の世界マスターズ陸上4×100メートルリレー(M40クラス)で金メダルを獲得。アスリートチーム「EARTHLETES」代表を務める。

阪神大震災で被災した武井壮は、その経験とこれからをインタビューで語った(カメラ・渡辺 了文)
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