4万人が目撃者…オカダ・カズチカ、1・4東京ドームで見せた涙の理由

4日の東京ドーム大会のメインイベントで飯伏幸太を下し、歓声に応えるオカダ・カズチカ(カメラ・中島 傑)
4日の東京ドーム大会のメインイベントで飯伏幸太を下し、歓声に応えるオカダ・カズチカ(カメラ・中島 傑)
5日のメインイベントで内藤哲也に必殺のレインメーカーをたたき込むオカダ・カズチカ
5日のメインイベントで内藤哲也に必殺のレインメーカーをたたき込むオカダ・カズチカ

 日本プロレス界初の2日連続での東京ドーム大会開催。前代未聞の格闘技の祭典の大トリを2日連続で務めるのは、この男しかいなかった。

 新日本プロレス新年恒例の「WRESTLE KINGDOM14 in 東京ドーム」。4日に4万8人、5日は3万63人を動員。2日間合計で7万71人が詰めかけた一大イベントで2日連続のメインイベンターを務めたのが、新日にカネの雨を降らせる「レインメーカー」ことオカダ・カズチカ(32)だった。

 4日のメインでは、IWGPヘビー級王者として、昨年のG1クライマックスを制した「ゴールデン☆スター」飯伏幸太(37)を迎え撃った。顔面へのナックルパートに後頭部への蹴り、セカンドロープを使ってのジャーマンスープレックス。狂気すら感じる飯伏の強烈な攻撃に苦しめられたものの、最後は必殺のレインメーカー3連発からの開脚式ツームストンパイルドライバーで飯伏の頭部をマットにたたき付けると、とどめのレインメーカー一閃。39分16秒の激闘を勝利で飾って見せた。

 試合直後、この日のセミフィナルでジェイ・ホワイト(27)を下し、IWGPインターコンチネンタル王座を奪還した内藤哲也(37)がベルトを持って登場すると、5日のメインで実現することになったIWGPヘビー、IWGPインターコンチ2本のベルトをかけた2冠戦に向け、「2年前のドームでのマイクを覚えているか?」と挑発してきた。

 18年1月4日の東京Dのメインでオカダに挑戦。敗れた際に投げかけられた「内藤さん、東京ドームのメインは気持ち良かったろ? でも、勝つと、もっと気持ちいいぜ」を蒸し返した上で「俺はまた東京ドームのメインに戻ってきたぜ。史上初の(2冠の)偉業。東京ドームでの(ユニット「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」の)初の大合唱を明日、オカダを倒して、やってやるぜ。カブロン(スペイン語で愚か者)」と挑発してきた。

 内藤が言うだけ言って去った後、マイクを持ったオカダは「東京ドーム! 本当にたくさんのご来場ありがとうございました」と、まず頭を下げると、「内藤さ~ん、いや、それより飯伏さ~ん、最高に強かったよ。ありがとう」と礼を言った。

 「明日のメインイベントはオカダ・カズチカ対内藤哲也。2年前に言ったこと?史上初の東京ドームでの大合唱? そんなことはどうでもいいんだよ、コノヤロー。最強はIWGPヘビー級チャンピオンのこの俺だ~!」と絶叫した直後に驚きのシーンが待っていた。

 「でも、超満員にならなかった」―。昨年の3万8000人を大きく上回る4万8人が詰めかけたものの外野席の一部に空席があった客席を見ながら、つぶやくと、「俺は本当に最高です。ありがとうございました」と言った後、しばし絶句。その後、確かに右手の甲で涙をぬぐった。

 最後こそ「また明日、最高の新日本プロレス、最高のオカダ・カズチカを見に来て下さい。というわけで、明日もこの東京ドームでカネの雨が降るぞ~!」と威勢良く締めくくったものの、強さと明るさが売りの男の突然の涙に場内には、どよめきが広がった。

 そして、約60人の取材陣が待ち構えたインタビュールーム。汗まみれの顔で「本当にキツい戦いでした。100より上、120を出した感じ。でも、まだ明日があるんだと。これだけの戦いをして、また、明日がある、こんな過酷な競技、他にはないでしょ」と問いかけたオカダ。

 リング上での涙の意味について聞かれると、「10月からずっと超満員にすると言ってきて、かなわないのが悔しい。笑いたい人は笑ってもいいし、バカにしてもらってもかまわない。でも、その悔しさを胸に超満員に向かっていきたいと思います」と「新日の顔」になって、決意表明した。

 昨年10月のIWGPヘビー級戦。同い年のライバル・SANADAを下して防衛を果たした際、開催中だったラグビーW杯が社会現象にまでなっていたことに新日の看板レスラーは危機感を持った。試合後の会見で飛び出したのが、「ラグビーも盛り上がってますけど、今こそプロレスの底力を見せたい。東京ドームを超満員にしてみせます。ただの満員じゃなくて超満員ですよ」という発言だった。

 10代でのメキシコでのレスラー修行時代、ギャラは500円。文房具店の店先にマットを敷いて、数人の観客の前や野良犬の前で戦った経験も持つ男は誰よりも観客の数に敏感だ。どの会場でも自分の試合の前に、そっと観客の入り具合と、その反応をチェックする姿を私は見てきた。

 17年8月に単独インタビューした際には「一生懸命、命がけで60分戦っても地球上で10人しか見てなかったら、たまらないじゃないですか?」と真剣な表情で明かしたこともあった。

 そんな、客の反応に誰よりも貪欲なスーパースターが5日のメインイベントでは、IWGPヘビーとIWGPインターコンチネンタルの2冠に誰よりもこだわってきた内藤哲也(37)に敗れ、王座から陥落した。

 35分37秒の死闘。場外で内藤の古傷・左ヒザを放送席の机にたたき付けるラフファイトも展開。必殺のレインメーカーを決めても立ち上がってくる5歳年上のライバルの執念の前に絶対王者はマットに沈んだ。

 両肩をかつがれ、退場する際、リング上の内藤からの「オカダー。東京ドームのメインイベントでの勝利、ものすごく気持ちいいな。また、東京ドームのメインイベントで勝負しようぜ」と言う呼びかけに右腕を突き上げて答えたが、強がりもここまで。フラフラの状態でインタビュールームにたどり着くと、「ああっ、悔しい」と、顔を大きな両手で覆った。

 「内藤さんは何も背負うものがなかったと思っていたけど、あれだけの歓声、あれだけの期待を背負って戦ったら、それは強いよと思いますよ。今の新日本では内藤さんこそ2冠にふさわしい男だと思います」とたたえると、最後は「本当に今日も超満員にすると言って、できなかったですし…。今日のために精いっぱいやってきたので、オカダ・カズチカ、2020年は悔しい1年の始まりなのかなと。また、この悔しさをバネに明日から頑張ります」と前を向いた。

 そう、まだ32歳にして、IWGPヘビーの通算防衛回数30回を誇る最強の男のプロレス人生は、これからがクライマックス。お楽しみはまさにこれからだ。「レインメーカー」が1・4のリングのど真ん中で流した涙を私はずっと忘れない。いや、忘れられるわけがない。(記者コラム・中村 健吾)

 ◆オカダ・カズチカ 本名・岡田和睦。1987年11月8日、愛知・安城市生まれ。32歳。中学卒業後、陸上の特待生での高校進学を勧められるも闘龍門に入門。04年8月、メキシコでデビュー。07年8月に新日本プロレスに移籍。10年1月、米団体・TNAへの無期限武者修行に出発。11年12月に「レインメーカー」として凱旋帰国。12年2月、棚橋弘至の持つIWGPヘビー級王座に初挑戦。レインメーカーで勝利を飾り、中邑真輔に次ぐ史上2番目の若さとなる24歳3か月で王座についた。12年、14年にはG1クライマックス優勝。19年4月、声優で女優の三森すずこと結婚した。191センチ、107キロ。

4日の東京ドーム大会のメインイベントで飯伏幸太を下し、歓声に応えるオカダ・カズチカ(カメラ・中島 傑)
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