東洋大ランナーの素顔 箱根路でブレーキを連発したOBの記者が見た

3日、芦ノ湖をスタートした際の東洋大6区・今西駿介(カメラ・相川 和寛)
3日、芦ノ湖をスタートした際の東洋大6区・今西駿介(カメラ・相川 和寛)

 昨年12月7日、東洋大陸上競技部OB会主催の練習見学会に一OBとして参加。箱根駅伝直前の鉄紺ランナーの素顔を見た。

 戦いが終わった今、酒井俊幸監督(43)の了承を得られたので、その一部をお伝えしたい。

 エースで主将の相沢晃(4年)は走りが軽やか。表情は終始、穏やかだった。その時、私は2区で前人未到、1時間5分台の区間新記録が誕生することを確信した(決して後付けではありません。1月1日付け紙面で書いています)。

 対照的に準エースの西山和弥(3年)は肩に力が入りすぎていることが気になった。直立不動で、OBのおじいさん、おじさんたちに「出雲駅伝、全日本大学駅伝ではふがいない走りをしてすみませんでした。箱根では必ずしっかり走ります」とあいさつした。私は思わず言った。「西山君、OBにそんなに気を使う必要はないよ。ここにいるOBで、君ほど強かった選手はいないんだから」。西山は、本来の力さえ発揮すれば快走できるはず。今回は1区14位と苦戦したが、来年、最後の箱根駅伝で自分自身が納得する走りをすることを期待している。

 練習見学会に、私は小学校3年生の息子を連れていった。駆けっこ大好きの息子は目を輝かせて、3年連続で6区に挑む今西駿介(4年)に話しかけた。

 「僕も将来、箱根駅伝6区を走りたいです。55分台を目指しています」

 東洋大時代、1年8区14位、2年3区13位、3年3区14位とブレーキを連発した私の息子が6区55分台とは、いくら親バカでも考えにくいが、今西は優しく答えてくれた。

 「6区を走りたい、って珍しいね。でも、うれしいよ。55分台とか言われると57分台なんて大したことなく思える。57分台を出せるように頑張るよ」

 前回、58分12秒で区間3位だった今西は、57分34秒で箱根の山を駆け降りた。区間賞は東海大の館沢亨次主将(4年)に譲ったが、区間2位の今西も従来の区間記録を23秒更新した。1月3日早朝からテレビにかじりついていた息子は今西の激走に泣いた。

 今西君、ありがとう。

 最後に定方駿(4年)。地道に努力を重ね、最終学年にして、今季学生3大駅伝開幕の出雲駅伝でようやくデビューを果たし、6区3位と健闘した。続く全日本大学駅伝は7区2位。いずれも主要区間で他校のエース級と堂々と渡り合った。定方の父・次男さん(55)、兄・俊樹(27)も東洋大OBで箱根路を駆けた。私を含めて、その日、集まった、おじさんOBにとって、定方駿は親戚の子のように気になる選手だ。だれもが最初で最後の箱根路で快走することを信じていた。しかし、その後、調子が下降。9区に登録されていたが、当日変更で出番なしに終わった。

 レース後、酒井監督は苦渋の決断の理由を明かした。

 「駿は走っても、おそらく区間下位だった。温情で起用できない。それに、ブレーキしたら、出雲、全日本の主要区間で好走した定方駿の名に傷がつく。箱根を一度も走れなかったという悔しさをバネにして実業団で頑張ってほしい」

 酒井監督の厳しさと優しさだった。

 東洋大は優勝候補の一角に挙げられていたが、快走した区間と苦戦した区間の差が激しく、10位。11年続いていた表彰台(3位以内)を逃した。それでも、シード権は死守した。

 出場した選手も、控えに回った選手も、鉄紺ランナー全員が胸を張ってほしい。東洋大低迷期のOBは、彼らを、ただ、誇りに思う。

 文字通り、山あり谷ありの10区間217・1キロを走り切った翌日、選手は午前6時に集合し、走り出した。1月4日、本拠地の埼玉・川越市の日の出は午前6時53分。つまり、第96回大会の激闘から一夜明ける前に第97回大会に向けて、スタートを切った。

(箱根駅伝担当・竹内 達朗)

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