◆報知新聞社後援 第96回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)(2日、東京・読売新聞東京本社前―芦ノ湖、5区間=107.5キロ)
2年ぶりの総合優勝を目指す青学大が往路を制した。1区で吉田圭太(3年)がトップと18秒差の7位と無難なスタートを切ると、2区で驚異のルーキー岸本大紀が他校のエースに競り勝ち、6人をゴボウ抜きして首位に立った。3区の鈴木塁人(4年)は2位に後退したが、区間4位と好走。4区で吉田祐也(4年)が最初で最後の箱根路で激走。今回、2区で区間新記録を打ち立てた東洋大の相沢晃(4年)が前回にマークした1時間54秒の区間新記録を24秒も更新する圧巻の走りで首位に立った。5区で飯田貴之(2年)が首位を死守し、3年ぶり4度目の往路優勝を飾った。3日の復路も勝ち抜き、2年ぶり5度目の優勝を目指す。
新チームが始動して間もない春先、強気で鳴らす原晋監督(52)が珍しく弱音を漏らした。
「ひとつ間違えるとシード権も取れない」
前回までの箱根駅伝3、6、7区で区間記録を持つ森田歩希主将(GMO)、小野田勇次(トヨタ紡織)、林奎介(GMO)らが卒業。戦力は大幅に低下した。しかし、危機感を持って迎えた夏合宿でチームは一変。「強い先輩が多かった昨季と違って今季のチームは貪欲に練習しなければいけないとみんなが気がついた」と主将の鈴木は明かす。
いまや3大駅伝恒例となった原監督の「大作戦シリーズ」。開幕戦の出雲駅伝(昨年10月14日、島根・出雲市)では、優勝のためには練習以上の力を発揮する「駅伝男」の出現が必要として「出てこい!駅伝男大作戦」を発令。5区途中まで優勝争いをしたが、5位。「50点」と指揮官は評した。
第2戦の全日本大学駅伝(昨年11月3日、名古屋市~三重・伊勢市)ではレースを放送するテレビ朝日系の米倉涼子主演ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の決めゼリフに乗っかり「私(青学大)失敗しないので大作戦」を発令。「大混戦なので失敗したら優勝できない」と意味を説明。7区で首位に立ったが、東海大に再逆転され、2位惜敗。「大きな失敗はなかったが、70点」と原監督は話した。
箱根駅伝に向けては「やっぱり大作戦」を発令した。「やっぱり強い! やっぱり勝てる!」。昨年12月4日に千葉・富津市内の起伏の激しいコースで行われた単独30キロ走。力強く走る選手たちを伴走車の中から見ている時に、ひらめいたという。「やっぱり、いいチームになった。終わってみれば、やっぱり青学大は強かった、と駅伝ファンに言っていただきたい」と原監督は笑顔で意図を説明した。
往路は指揮官の思惑通りに進んだ。1区で吉田圭が無難にスタートすると、青学大史上屈指のエース一色恭志(GMO)と同等の力を持つとして花の2区に投入したルーキー岸本が他校のエースに競り勝ち、6人をゴボウ抜きして首位に立った。1時間7分3秒の好記録は東海大・伊達秀晃が2005年に記録した1年生の日本人歴代1位の1時間8分4秒をはるかに超え、さらに前回に国士舘大のヴィンセントがマークした1年生記録(1時間7分12秒)まで更新した。
3区で鈴木が2位に後退したが、4区でも4年生が意地を見せた。吉田祐が魂の激走。2年時、3年時はいずれもチーム11番手で出番なし。特に前回は10区に登録されながら、当日朝に鈴木に出番を譲った。「2年連続11番手という位置から逃げずに1年間、練習を積んできました」と胸を張る。各自練習の日は、常にチームで一番長い時間を走り続けてきた努力のランナーがついに晴れ舞台で輝いた。卒業後は、大手菓子メーカーのブルボンに就職。競技の第一線から退く。「10年間、この1日のために頑張ってきました」吉田祐が、最初で最後の箱根路で見事な走りを見せ、チームを加速させた。
山上りの5区は全日本の最終8区で東海大に逆転を許した飯田が雪辱を期す走りで首位を死守した。
登録メンバー16人だけではなく、青学大は全員で戦っている。昨年末の26日に16人の登録メンバーから外れた選手による1万メートル学内記録会では、同記録会の新記録の29分5秒7でトップになった高橋勇輝(2年)、同じく新記録の29分6秒4で2位の目片将大(1年)をはじめ、非公認ながら7人が中堅校ならメンバー入りラインとなる29分30秒を切った。「箱根駅伝0区」と呼ばれるメンバー外の学内記録会でチームのムードは上がり、原監督はその時点で「やっぱり指数は85%」と明言した。29日の区間エントリーではさらに90%に上昇した。大会前日に「やっぱり指数」はさらに95%に上がった。
前々回、前回と5区を走ったが、今回は左足痛のため、16人の登録メンバーから外れた竹石尚人(4年)は、往路では3区の鈴木、復路では7区の中村友哉(4年)の給水係を務める。「青学大の登録メンバーに選ばれた16人は全員、力がある。必ず快走してくれると思う。僕はサポートに徹します」と竹石は爽やかな笑みを見せながら話す。
1920年に第1回大会が行われた箱根駅伝。100周年の大会で。ワンチームで戦った青学大が「やっぱり」強さを発揮した。