アントニオ猪木氏の「マスターズ」登場は、武藤敬司との歴史的和解なのか。それとも致命的対立か…即日完売の2・28後楽園

猪木氏と武藤が並ぶマスターズのポスター
猪木氏と武藤が並ぶマスターズのポスター

 アントニオ猪木氏(76)が来年2月28日に武藤敬司(57)がプロデュースする「プロレスリング・マスターズ」に登場することが決定した。

 来年2020年は、猪木氏が2月20日の誕生日に77歳の喜寿を迎え、加えて9月30日に1960年に台東区体育館での大木金太郎戦からデビュー60周年となる記念イヤーとなる。偉大な先駆者の節目の年に敬意を表しメインイベントは「燃える闘魂60周年メモリアルマッチ」と掲げて行われる。ただ、現時点でカードは未定で、しかも猪木氏がどのように登場するのかは、まったく発表になっていない。にもかかわらずチケットは発売初日の27日に「チケットぴあ」、「イープラス」、「ローソンチケット」でマスターズシート(2万2000円)、リングサイド(1万3200円)、指定席A(8800円)、指定席B(6600円)の全席種が即日完売した。昨年8月の大会もカード発表前に完売しており、異常人気のマスターズは「今、プロレス界で最もチケットが取れない」興行となった。

 こうなると問題は、イベントの中身だ。猪木氏がどのように会場に現れるのか、関係者が口を閉ざす状況で、現時点では想像する以外に方法はないが、武藤と何らかの形でリング上で対面することは間違いないだろう。そう思い両者のリングでの遭遇を調べると、2017年4月20日、後楽園ホールで行われた藤波辰爾のデビュー45周年記念興行以来、3年ぶり。ただ、この時は、武藤はメインイベントに出場し試合後の45周年セレモニーで猪木氏が登場したもので、同じリングに立ったことに違いはないが、両者に明確な接点はなかった。

 では、猪木氏と武藤が最後に対戦した試合を調べると、1987年11月28日、「ジャパンカップ・タッグリーグ戦」の熊本市体育館での猪木氏がディック・マードックとのタッグで高田延彦と組んだ武藤と戦ったのが最後になる。最後のタッグ結成も同じシリーズの12月5日、沼津市体育館の6人タッグで猪木、マードック、武藤組が藤波、木村健吾、スーパー・ストロング・マシンと対戦した記録が残っている。ただ、これはいずれも昭和時代。つまり、「武藤敬司」と猪木氏のリング上での明確な接点は、平成時代には一度もない。今回のマスターズで両者が遭遇すれば、32年3か月ぶりで平成を飛び越え令和で実現する歴史的な再会になる。

 ただ、ファンの間でいまだに語り継がれている両者の対決は「武藤敬司」ではなく「グレート・ムタ」だろう。猪木氏とムタは、94年5月1日の福岡ドームで一騎打ちし、猪木氏が激怒するなどさまざまな物議を醸し出す幻想的な一戦となった。その後、ムタは97年8月10日のナゴヤドームでの小川直也戦で猪木氏がレフェリーを務めた時にリングで再会した。福岡、ナゴヤの両ドームでいずれもムタは猪木氏へ毒霧を噴射し、燃える闘魂の顔面を緑色に染めている。そういう意味で今回、猪木氏を招き入れるのは「武藤敬司」あるいは、「グレート・ムタ」か。その部分でも興味が高まってくる。

 そして、武藤が2002年1月に新日本プロレスを退団した理由が猪木氏の存在だった。

 猪木氏は、「昭和」のプロレス黄金時代に「プロレスこそ最強」を掲げ、モハメド・アリとの異種格闘技戦を頂点にファンの幻想をかき立てる試合に挑みカリスマ的な人気を獲得した。一方の武藤は、猪木氏が背負った「最強」とは一線を画し、「平成」に入り徹底的に「最高」のプロレスを追求し格闘技からプロレスを解放し、今につながるプロレスの基盤を作った。しかし、2002年の当時、新日本の筆頭株主でオーナーだった猪木氏は「格闘技路線」を推進、これに反発し新日本を退団し全日本プロレスへ移籍した。当時を振り返り武藤は、後に「あんなことされたらオレのプロレスが崩されちまう」と明かし退団理由を「猪木さんとの方針の違いだよ」と告白している。ただ、これまで武藤が猪木氏を語ることはあったが、猪木氏がこの時の武藤の行動、さらには「武藤敬司」というレスラーへの評価を明かしたことは、それほどない。

 「昭和のカリスマ」猪木氏と「平成の天才」武藤。決別した師弟は、令和の今、「プロレス」に対しどんな答えを出すのか。2・28後楽園の再会は、歴史的和解か。それとも致命的対立の確認か。展開がまったく想像できないリングが待っている。

(記者コラム・福留 崇広)

コラムでHo!とは?
 スポーツ報知のwebサイト限定コラムです。最前線で取材する記者が、紙面では書き切れなかった裏話や、今話題となっている旬な出来事を深く掘り下げてお届けします。皆さんを「ほーっ!」とうならせるようなコラムを目指して日々配信しますので、どうぞお楽しみください。

格闘技

NEWS読売・報知 モバイルGIANTS ショップ報知 マガジン報知 バックナンバー申し込み 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真販売 法人向け紙面・写真使用申請