【再録インタビュー】史上初の快挙でタイトル初挑戦を決めた本田奎新五段とは何者か

スポーツ報知
タイトル挑戦を決めた本田奎新五段

 将棋の第45期棋王戦挑戦者決定2番勝負第2局が27日、東京都渋谷区の将棋会館で行われ、本田奎(けい)四段(22)が佐々木大地五段(24)に勝ち、初のタイトル挑戦を決めた。昨年10月に四段昇段したばかり。棋士として先輩に当たる藤井聡太七段(17)より先に大舞台への切符を得た。来年2月1日に開幕する5番勝負で渡辺明棋王(35)=王将、棋聖=に挑む。どんな棋士か、今年8月に掲載したインタビューを再録して紹介する。当時は棋王戦決勝トーナメント1回戦に勝利した直後だったが、その後、強敵ばかりを相手に5つの白星を重ねて一気に挑戦者にまで登り詰めた。

【2019年8月19日付スポーツ報知に掲載 記録などは当時】

 静かなるスーパールーキーが静かなる快進撃を続けている。昨年10月にデビューした本田奎四段(22)は通算22勝6敗、勝率・786と大活躍中。三段時代の藤井聡太七段(17)に勝利、今月15日の棋王戦挑戦者決定トーナメントでは強豪の行方尚史八段(45)を撃破した若武者は「理想はコンピューター。人ではないです」とクールに語る。盤上哲学を聞いた。

 超大型の台風10号が東京・千駄ケ谷の将棋会館にも接近した夜、対局室「香雲」にいた本田は穏やかな顔で勝利を振り返っていた。「中盤でスキを突いて大差をつけようとする自分の将棋が行方先生にも通用して、間違った勉強はしていないと思えました」。強豪相手に、またひとつ白星を積み上げた。

 行方は順位戦A級在位6期を誇り、2015年度には名人挑戦者にもなった実力者。新人には困難な相手だが、本田は序盤からリードを奪う。「相当うまく指せて、中盤で大差をつけることができました。でも、行方先生の終盤のキレ味はすさまじいので…」。百戦錬磨の勝負術を浴び、形勢を引き寄せられたが、最後はリードを守り切った。「なんとかギリギリ残ってました…。自分は終盤が自信ないので、中盤で大きくリードしないといけないんですよ」。武器と課題を再認識する一局になった。

 デビューから9か月で通算22勝6敗。勝率・786は現役棋士166人の中、藤井聡太(・842)に次ぐ2位につけている。今期成績も19局(9位)、15勝(4位)、勝率・789(7位)、12連勝(3位)と各カテゴリーで上位を占める。「上出来だと思います。(奨励会時代にはない)長い持ち時間の将棋で勝てているのが大きいですね。四段になった頃よりは自信が出てきました。もちろん藤井さんは別格ですけど、プロでも早く指したいですね」。16年、藤井が1期で突破した奨励会三段リーグで、本田は天才少年を破っている。

 棋士間で本田について語る時、必ず言及されるのは「コンピューター(あるいはソフト)」という単語。三段時代、コンピューターソフトを研究に導入して飛躍的に力を伸ばした。「確実に強くなったと思います。ソフトの序中盤の手を研究し続けていると(実戦でも)ソフトに近づいた手を指せる感覚があるんです」。棋士の中にはソフト偏重の思想に懐疑的だったり、導入してもフィットできずに長所を損ねてしまうケースもあるが、本田にとっては「力」でしかない。「ソフトに触れずに強くなれたとは思えないですし、使うことを疑問に思ったこともないです」。もはやスタンダードとなったソフト研究を、通常より力に変えられている理由を「(研究)量しかないと思います」と即答する。

 理想の棋士像を問う時、普通の若手ならタイトルホルダーらを挙げるが、本田は「理想はコンピューター。人ではないです。目標とする棋士はいません」と断言する。将棋以外に関心事はなく、ニュースも見ない。趣味のカラオケではランキング入りの曲をほぼ歌いこなす器用さもあるが「最近はなかなか行けていないです」。液晶画面を見つめる時間がどうしても必要になるからだ。

 棋王戦の次戦は佐藤天彦九段(31)。今春まで名人位を3期守った男に挑む。「良い勝負ができたら…と思いますけど、もし勝てたらベスト8。タイトル戦も見えてくるので頑張りたいです」。不要な遠慮の言葉など用いず、率直に語る姿は頼もしい。

 印象に残る名前「奎」の由来を尋ねると「学問の星座みたいなんですけど…」と照れたように笑う。アンドロメダ座と魚座をまたぐ奎宿は、芸術や学問の才能に秀でる運勢を示す。22歳の新星が輝き始めている。(北野 新太)

 ◆本田 奎(ほんだ・けい)1997年7月5日、川崎市生まれ。22歳。宮田利男八段門下。5歳の頃、父親に教わって将棋を始める。2009年、小6で奨励会入会。15年から三段リーグ参加。18年10月、四段(棋士)昇段。居飛車党で、得意とする戦型は相掛かり。趣味はカラオケで、十八番はコブクロ。

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