【五輪の深層】スポーツは人を大きく成長させてくれる…ソウルから支え続け32年の組織委参与・上治丈太郎氏

 五輪代表枠へしのぎを削る選考レースも、いよいよ佳境である。

 多くのアスリートにとって五輪はW杯、世界選手権などの先に位置づけられている夢、目標だ。このところ特に、各競技の国際連盟は1か国の出場枠の制限を設け、各種目のランキング上位から2人ないしは3人程度に抑えている。先日もし烈な争いが話題を呼んだ卓球の個人種目は、来年1月発表の世界ランクで出場選手が決定する。バドミントンは来年4月末までレースが続く。各競技の国内枠の競争は、ある意味メダルを取るのと同等かそれ以上と言われるほどであり、柔道なども代表的な例である。

 代表選手の万が一の事態に備えたリザーブ(補欠)の選考も非常に大切な作業だ。五輪代表の一員となれば生涯、尊敬もされる。出身地や所属先で壮行会なども開かれ、お祝い金などを贈られることもある。それでも試合に出られずに大会を終えるケースはある。

 監督やコーチは勢いを買うか、実績を買うかで本当に悩む。非情と言われようが、結果を残すためには決断を下さなければならない。青春時代を血のにじむような厳しい練習に耐えて過ごして代表の座を射止めながら、試合に出られない選手を見ると心が痛む。

 卓球の平野美宇選手は、リオ五輪でリザーブに回った経験をバネにして飛躍的に強くなった。しかし、今回も最後で個人戦の代表の座を逃し、大粒の涙を流した。できれば3人出られないものか…と思ったのは私だけではないだろう。

 少し話はそれるが、正月の風物詩である箱根駅伝は29日に区間エントリーが発表される。選手は家族や親族、恩師らに何区を走るか報告する。だが4年間の猛練習を行い、やっと箱根路を走れるというのに、感情が高ぶるあまり、当日の朝に寝不足になってしまったり、けがをする場合がある。監督は頑張りを理解しながらも、タスキがつながらないことは避けなくてはいけない。当日朝のメンバー変更はさながら修羅場である。変更を通告された選手が泣き崩れる姿には、なぐさめの言葉も見つからない。

 ただ、今回のラグビーW杯で給水係として8強入りに貢献した徳永選手を思い出してほしい。彼は完全にサポート役に徹し、ヘッドコーチからの指示などを簡潔かつ的確に主将に伝えることで存在感を示した。「ONE TEAM」に不可欠な人材だった。

 “元五輪選手”の肩書やタイトルは、その後の人生に大きく影響を及ぼす。特にメダリストはなおさらである。だが、リザーブになったり、代表に入れなくても人生が終わったわけではない。大事なのはそのときにどんな対応、振る舞いをするかだ。そのときにこそ、スポーツは人を大きく成長させてくれる。戦いの末にどのような立場になっても、これまで自分が歩んできた道のりに胸を張ってほしい。

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