山口俊の最多勝&最高勝率&最多奪三振支えたIT革命

今季フル回転で3冠に輝いた山口。大躍進の陰には、ハイテク機器の活用があった
今季フル回転で3冠に輝いた山口。大躍進の陰には、ハイテク機器の活用があった
データ解析を基に有効な球種の精度アップを図った
データ解析を基に有効な球種の精度アップを図った
山口が助言を求めた国学院大の神事氏
山口が助言を求めた国学院大の神事氏

 今週の「ALL巨人」は、来季から米大リーグのブルージェイズに移籍する山口俊投手(32)に迫る。今季は最多勝(15勝)、最高勝率(7割8分9厘)、最多奪三振(188K)の3冠とフル回転。チームを5年ぶりのリーグ制覇へと導いた。そんな圧巻の投球を支え、飛躍の裏にあったのは、最先端のテクノロジーを活用した「ピッチング・バイオメカニクス」と呼ばれる投手進化メソッドだった。

 球の伸びや、キレ。これまで漠然と語られてきたものが、トラッキングデータなどテクノロジーの進化によって、はっきりとした数字となって見えるようになった。ボールの回転数や回転軸。さらには、体の使い方のどこに無駄があり、それを効率化するためにはどう改善すべきなのか。科学的な解析手法からはじき出されたデータを用いて能力の底上げを目指す手法が、「ピッチング・バイオメカニクス」だ。

 山口は、自身初の2ケタ勝利となる11勝をマークした16年オフに、FAでDeNAから巨人へと移籍した。ちょうど同じタイミングで、巨人は高性能弾道測定器「トラックマン」の導入や、データ分析スタッフの拡充を決め、野球のIT化を本格化させていた。「それまでの感覚勝負だったり、従来のトレーニングだけでは限界があるな、と」。これが、進化へ一歩を踏み出すきっかけだった。

 まずは、打者陣の話を聞くことから始めた。自分の持ち球の中で有効なもの、そうでないものは何か。意見を集めたのち、解析データと照らし合わせて納得した。「抑える確率が高いのはどういう球種なのか。打者から聞いた話と、データが一致していることが多かった」と山口。自分の中で投げ分けているつもりでも、打者目線からすればほぼ同じ球というケースもあった。回転数や回転軸から導かれるボール変化量を示す数値が、それを証明していた。取捨選択し、有効な球種に絞って精度アップに努めた。

 登板翌日は決まって、データと向かい合った。投球の感覚と、数値とのすりあわせ作業だ。球の回転数や軸、リリースポイントの高さ、角度はどうだったか。「フォークの習得というところで、変化量など、『人と違うもの』を突き詰めて」。データ解析を駆使していく中で、今季は外部の専門家のもとにも積極的に足を運んだ。この分野のスペシャリストである、神事(じんじ)努博士(国学院大)。マリナーズの菊池雄星らも助言を仰ぐ第一人者と意見交換することで、さらなるパフォーマンス向上につなげた。

 データをもとに、武器となる球種を正しく把握、強化し、適した配球を組み立て自分に合った打ち取り方を固めていく。このような「ピッチ・デザイン」を神事博士は推奨する。「試行錯誤。すごく難しい作業でした。『こう投げたら、こう落ちる』とか、自分の感覚ともすり合わせながら。その感覚が正しいかどうかは、数字に出てくる」と山口。この秋、ロッテが米シアトルのトレーニング施設「ドライブラインベースボール」に選手を送り込むなど、野球のハイテク化は日本でも浸透しつつある。

 来年から、山口の戦いの場はメジャーリーグになる。世界中の猛者たちがしのぎをけずる、最高峰の舞台。そこに向けた新たな取り組みとは―。「平均球速値を150キロ以上にすることと、勝負できる球がもう一つ欲しい。これから長く野球をやっていく上で重要になってくる。トレーニングの方法も変わると思うし、脱力の中でもどこかでパワーを入れないと球速は伸びない。データを解析しながら、改めてやっていきたいです」。投手も打者も、それぞれが相手の一歩先に出ようと策を巡らせてきた。野球のハイテク化によって、その攻防は今後さらに激化していくだろう。(尾形 圭亮)

今季フル回転で3冠に輝いた山口。大躍進の陰には、ハイテク機器の活用があった
データ解析を基に有効な球種の精度アップを図った
山口が助言を求めた国学院大の神事氏
すべての写真を見る 3枚

巨人

NEWS読売・報知 モバイルGIANTS ショップ報知 マガジン報知 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真販売 法人向け紙面・写真使用申請