【箱根への道】全身脱毛症公表の日体大・藤本珠輝、同じ病気で苦しむ人に贈る山の区間賞

日体大伝統の「エッサッサー」のポーズを取る藤本(カメラ・池内 雅彦)
日体大伝統の「エッサッサー」のポーズを取る藤本(カメラ・池内 雅彦)
日体大
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◆日体大 前回13位(72年連続72回目)予選会3位、出雲不出場、全日本14位

 第96回箱根駅伝(来年1月2、3日)に72年連続で出場する日体大が16日、横浜市の健志台キャンパスで取材会を行った。予選会チームトップの藤本珠輝(1年)は昨夏に全身脱毛症を患っていることを公表。ウィッグを着用し、ハチマキで固定するのがトレードマークになっている。同じ症状で苦しむ人たちを勇気づけるためにも、希望する5区で区間賞の走りを見せる。

 トレードマークには理由があった。予選会で転倒しながら個人14位に食い込んだ藤本は「全身脱毛症でウィッグ(かつら)を着けている。ヘアバンドとかも試したけど、固定するにはハチマキが良かった」と明かした。

 最初の発症は小学5年の時だった。髪が抜け始め1~2か月で眉毛、まつげなど全身の毛が抜けた。原因はストレスや免疫異常などと言われているがはっきりせず、様々な方法で頭皮に刺激を与える治療を試みた。零下196度の液体窒素をかけたり、紫外線を当て「肌がただれた」。「めちゃくちゃ痛い」注射を直接何本もする方法、薬効成分入りのパッチを腕に貼り「あちこちかゆくなって」体調を崩す…。1~2年で完治と再発を繰り返し、周囲には「ちょっといじられたり」するつらい経験もした。

 高2まではニット帽をかぶって生活していたが、「変な目で見られるし、暑いし」を理由に、昨年8月末の再発を機にウィッグを着用するようになり、病を公表した。自ら「ポジティブ」という性格もあり、今は笑顔で「同じ症状の人から手紙が来たりするようになった。発信してよかった」と言い切る。

 大学で初の駅伝となる箱根は、軽々と走る青学大・神野大地に憧れた5区を希望する。1万メートルは30分台だが11月の上尾ハーフでは1時間2分46秒のチームトップ。横山順一監督(56)は「狙ったレースで結果が出せる」と高く評価している。目標は西脇工の先輩、中谷圭佑(駒大→コモディイイダ)と同じく1年生での区間賞。古豪復活へ「あってよかった」ハチマキとともに山を駆け上がる。(大和田 佳世)

 ◆藤本 珠輝(ふじもと・たまき)2001年1月14日、兵庫・加古川市生まれ。18歳。中1から陸上を始め、西脇工3年で全国高校総体5000メートル15位、全国高校駅伝1区で「田沢(駒大)に勝った」。2019年に日体大体育学部に入学。上半身強化で体脂肪率7%で2キロ増え、165センチ、54キロ。

 ◆全身脱毛症 通常、髪の毛を含む体毛は「生える」「伸びる」「抜ける」を繰り返すが、「抜ける」が正常範囲を超えると「脱毛症」となる。原因は多岐にわたり、はっきりと原因が分からないこともあるとされる。

 ◆日体大 1926年創部。箱根駅伝には49年に前身の日本体育専門学校が初出場して以来、72回連続出場中。87回連続の中大に続き、歴代2位。継続中としては最長。優勝10回。全日本大学駅伝は優勝11回。出雲駅伝は最高2位(2010年)。学生3大駅伝通算21勝は駒大と並んで史上最多。長距離部員は選手58人、学生スタッフ8人。タスキの色は白。主な陸上部OBは91年東京世界陸上男子マラソン金の谷口浩美さんら。

 ◆戦力分析 昨季、迷走を続けた名門が復活の兆しだ。昨年9月に渡辺正昭元監督(57)がパワハラ問題で解任され、棒高跳び専門の小林史明監督(45)が就任。結局、13位に沈み、4年ぶりにシードを逃した。今年5月、横山部長兼任監督と小野木俊コーチ(25)の指導体制が固まり、雰囲気は一変。予選会は3位で通過した。

 登録メンバーから外れた小松力歩に代わり、チーム主将を務める山口和也(ともに4年)は「4年間で一番、雰囲気はいい。目標は優勝です」と力強い。現実的には優勝は難しいが、シード復活の可能性は十分にある。

日体大伝統の「エッサッサー」のポーズを取る藤本(カメラ・池内 雅彦)
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