世界NO1のデットーリに勝負を挑んだ22歳 リベンジの日を夢見て技術向上を誓う菊沢一樹騎手

1Rでデットーリ騎乗のセイウンパワフル(手前)がゴール前でタイキスウォードを競り落とす
1Rでデットーリ騎乗のセイウンパワフル(手前)がゴール前でタイキスウォードを競り落とす

 レベルの高い相手との「攻防」を経験することで、スポーツマンは成長していく。競馬の騎手なら、最後の直線での競り合いが最大の学びの場なのかもしれない。

 11月24日、「ジャパンカップデー」の東京競馬場は、第1レース(2歳未勝利、芝1400メートル)から大きな声援で沸いていた。凱旋門賞で最多の6勝を挙げる競馬界の至宝ランフランコ・デットーリ騎手(49)=イタリア=に挑んだのは、デビュー4年目の菊沢一樹騎手(22)。最後の直線での2人の「攻防」は、400メートルに及んだ。

 デットーリ騎手のセイウンパワフルが1番枠(1番人気)で、菊沢騎手のタイキスウォードが2番枠(3番人気)。枠順が決まった時点で「2頭が近い位置で競馬をして、最後は追い比べになる。あとは、騎手の戦い」と菊沢騎手はマッチレースをイメージしていた。2番手を進み、ラスト500メートル地点で先頭へ。その外から、デットーリ騎手が迫ってきた。

 「『やっぱり来たか』と、すごく気合が入った。とにかく勝ちたい。気持ちだけで追っていた。いったん前に出られて『だめなのか』と思う瞬間もあったけれど、馬がもうひと伸びできそうだったので、『まだ差し返せる』と諦めなかった」。激しいせめぎ合いは、最後まで続く。2頭のシルエットが重なったままゴール。首差でデットーリ騎手に軍配が上がったが、それまで経験したことのない強烈な刺激を受けた。

 「めったにできない世界の名手との追い比べ。あれだけ無我夢中で乗ったのは、本当に久しぶりだった」。その日の夜から、ビデオでデットーリ騎手の騎乗フォームを徹底的に研究した。最大の気付きは、馬との一体感だった。「美しく、低く、パワフルなフォーム」―。騎手の理想型として追い求めることを心に決めた。

 通算勝利度数が100回以下の見習い騎手。それでも、デットーリ騎手に対して“一対一”の勝負を強く意識していた。相手が世界的な名ジョッキーなら、負けても仕方ない…。そのような考えは持ちたくなかった。同日の第3レースで、デビュー6年目の石川裕紀人騎手(24)が、英国の名手ライアン・ムーア騎手(36)との競り合いを頭差で制した姿を見て、さらに気持ちが高揚した。「ムーア騎手は、石川先輩の憧れ。何年か前に追い比べで負けたシーンを見たことがあったけれど、今年、あれだけ激しい勝負をして勝ったのは、さすがだなと。もし、何年か後にデットーリさんと戦う機会があるとしたら、しっかり勝って(借りを)返したい」

 目標は明確に定まった。あとは、アクションを起こすのみ。まず、トレーニングの意識を変え、パワーアップに重きを置く内容にした。「変わろうという意識は常にあったけれど、どう変わればいいのか分からなかった。デットーリさんと並んで追い比べをする映像があって、こんなにも違うのかと、はっきり感じることができたのが大きかった」

 ジャパンカップの翌週からは、毎週ひとつずつ勝ち星を挙げている。デットーリ騎手と再び競馬場で戦える日を夢見て、努力を積み重ねる日々。22歳の若者が進化する過程を、しっかり見届けたい。(記者コラム・浜木 俊介)

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