「メジャーを変えた男」マービン・ミラー氏が8度目の挑戦で野球殿堂入り、同氏の尽力で年俸は50年間で200倍に

マービン・ミラー氏(AP)
マービン・ミラー氏(AP)

 米野球殿堂のベテランズ委員会が8日(日本時間9日)、元選手会専務理事の故マービン・ミラー氏と2472安打、1430打点と捕手では2番目のテッド・シモンズ氏と2人の殿堂入りを発表した。選考委員は野球殿堂入りOBやフロント&メディア関係者計16人。当選に必要票数は75%の12票で、シモンズ氏が13票、ミラー氏も12票を獲得。残りの候補8人の中で次点はドワイト・エバンス氏の8票だった。

 ミラー氏は「メジャーを変えた男」と呼ばれ、2004年に刊行された2700ページに及ぶ「トータル・ベースボール」の球界の重要な100人の中で本塁打王12回のベーブ・ルース、人種の壁を破ったジャッキー・ロビンソン、ベースボールのルールを構築したアレクサンダー・カートライトに次ぐ4番目に名前が挙がっていた人物である。

 米大リーグの球団は、長い間、選手を束縛し「選手はユニホームを脱ぐ自由」しかなかった。そこで選手会が招いたのが、全米鉄鋼労連弁護士として力を発揮していたミラー氏だった。1966年に就任すると、3度のストライキを含む5度の労使紛争を指揮。理詰めの交渉に加え、オーナー側に丸め込まれるだけだった選手の意識を改革。団結力のある「史上最強の組合」と評される選手会をつくり上げ、年俸調停制度創設、年金制度改革などを実現し、75~76年オフには登録日数で6年間分、プレーすれば他球団移籍が出来る念願のフリーエージェント制度を勝ち取った。

 同氏が選手会理事就任当時、1967年のメジャーの平均年俸は1万9000ドル(約684万円、当時の外国為替レート)。それが今では400万ドル(約4億3200万円)を越える。単純計算で211倍になったのもミラー氏のおかげだ。亡くなった12年、タイガースに在籍していたJ・バーランダー(現アストロズ)は「彼の功績に、皆が感謝している。今の我々があるのは、彼の遺産があればこそだ」とコメントを寄せていた。

 過去7回の落選は、ミラー氏がオーナーの敵だった時代を知るフロント陣、そして年金制度が変わる前に在籍していた古手の殿堂入りOBが選考委員の時だったためだとされている。そのためか、生前ミラー氏は、度々の落選に「(投票は)茶番だ」として、家族に「野球殿堂に関わるな」と話していた、という。同氏の娘スーザンさんは今回、AP通信の取材に「この知らせが20年前だったら、どれだけ喜んだでしょう」と、あまりに遅すぎた事を悔しがった。

 

 それでも彼の評価が下がることはない。一緒に殿堂入りすることになったシモンズ氏は、ストライキなど1970年代から80年代の労使紛争を振り返って「マービン(ミラーは)は、一人一人の選手が心を許すのを辛抱強く待っていた。そして最後に、みんなが心を開いた時に、それをすべてまとめ(労使交渉に向かって)行動に移しました」と、述懐する。

 

 来年7月に米ニューヨーク州クーパーズタウンで開かれる殿堂入り式典。ミラー氏の遺族たちが参加するのかどうかも注目されることになりそうだ。(蛭間 豊章=ベースボールアナリスト)

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