【二宮寿朗の週刊文蹴】「栗原引退」に感じた横浜Mの変化

スポーツ報知
現役引退を発表した横浜Mの栗原勇蔵

 功労者を大切にする―。横浜に対して持てなかったイメージがちょっと変わった。ユースから昇格して横浜ひと筋18年、36歳の“番長”栗原勇蔵が引退を表明した。J1通算316試合に出場した彼の「F・マリノスで(現役を)終われるなら一番いい」という思いをクラブと本人が話し合いを重ねて実現した。クラブの歴史を考えれば、あまりなかったことだ。

 あの9年前のことは忘れもしない。松田直樹を筆頭に山瀬功治、河合竜二、坂田大輔ら長年プレーしてきた選手を次々に契約非更新としたことによって、サポーターの大きな反発を買った。「プロだからクビがあるのは当たり前」という考え方はあるにせよ、選手に対する扱いは雑と言わざるを得なかった。配慮は必要だったと思っている。

 その後も貢献してきたベテランに対するドライな姿勢は変わらなかった。だが03、04年のリーグ2連覇をただ一人知る存在となった栗原については、できれば横浜で引退させたいというクラブの意思を感じた。12試合の出場にとどまった16年シーズン後の契約交渉で栗原は大幅減俸を受け入れ、逆に感謝の言葉を口にしている。「大幅減俸にするぐらいなら、普通はクビにすると思う。提示があっただけでもうれしかった。このクラブに居続けるヤツがいてもいいんじゃないかと感じた」

 復活を期したものの、出場試合を減らして今季はここまでリーグ戦出場はゼロ。功労者に対してある程度納得させて引退に至ったというわけだ。栗原を大事に扱ったクラブの姿勢は、チーム全体の帰属意識を高めることにもつながっていくと感じる。優勝まであと一つ。「勇蔵さんのためにも」と一致団結する絵が目に浮かぶ。先の川崎戦でスタンドから見守った彼と立ち話をした。「今のウチの攻撃は止められないよ」と自信ありげに語っていた。ホームで優勝して引退。最高の花道となるか―。(スポーツライター)

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