【評伝】中村哲さん、米軍と距離置きアフガン地元住民から信頼 市民の貧困脱却に貢献

ガニー大統領(右)と並ぶ中村哲さん(ロイター)
ガニー大統領(右)と並ぶ中村哲さん(ロイター)

 アフガニスタン東部ナンガルハル州ジャララバードで4日、福岡市の非政府組織(NGO)「ペシャワール会」現地代表で医師の中村哲(なかむら・てつ)さん(73)が乗った車が武装した男らに銃撃され、中村さんが死亡した。日本政府関係者が明らかにした。州報道官によると、同乗していた中村さんのボディーガードや運転手ら5人も死亡した。中村さんはアフガニスタンやパキスタンの国境付近などで貧困層への医療活動に長く従事。今年10月にはアフガニスタン政府から名誉市民権を授与されたばかりだった。

 「武装勢力の怖さを感じたことはない。米軍とは距離を置いているから」。中村さんが口癖のようにそう繰り返していたのは、アフガニスタンの大地に根差し、市民の貧困脱却に貢献してきた自負があったからだった。

 登山が趣味で1970年代にはパキスタンの7000メートル級高峰の登山隊に医師として帯同。84年から同国北西部ペシャワールで医療活動に携わり始めた。その後、アフガニスタン内戦の影響で多数の難民が流入してきたことで、関心は同国へ。91年に今回事件の起きた東部ナンガルハル州に診療所を開いた。

 2000年の大干ばつ後には、水不足や農地整備のため、日本人の若者ボランティアを募り井戸や用水路の建設を始めた。「最初の半年は言葉もシャベルの使い方も分からず使い物にならない」。かける言葉は厳しいが、地元に密着し市民らを優しく見守る中村さんの秘めた愛情に賛同する若者は多かった。

 米軍が突然、診療所を数台の装甲車とともに訪れ、薬の提供を申し出た際には、これを拒絶。米軍と距離を置くためだった。「米国に近いと思われたら、ここでは誰も信用してくれない」。だからこそ、地元住民に信頼され、大切な土地の開拓を許されてきた。

 これまでに掘った井戸は1600本。アフガニスタンのガニ大統領からは「最大の英雄」と評された。用水路を引いた大地は黄土色から緑一色に変わったが、「裏切られても裏切り返さない誠実さこそが、人々の心に触れる」という自著につづった思いは通じなかった。

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