◆トランポリン 世界選手権 最終日(1日、東京・有明体操競技場)
五輪テスト大会を兼ねて男女個人の決勝が行われ、女子はW杯ランク3位の森ひかる(20)=金沢学院大ク=が55・860点をマークし、男女を通じ個人で日本勢初の金メダルを獲得した。男子は堺亮介(22)=星稜ク=が日本勢最上位の5位。ともに各国・地域最大1の東京五輪出場枠を獲得し、決勝の日本勢最上位で五輪代表に決まった。
両手を強く握り締め、森は祈るように得点を待った。「まじで五輪の枠お願い」。1人を残し、日本勢最高の首位に立ち五輪が確定。両腕を何度も突き上げた。最終演技者が終わると史上初の金メダルも決まった。「演技が良くなかったし『これは(金は)ないな』と思ったんですけど、まさかでビックリ、ビックリ!最高です」。日の丸の旗を背負い、ぴょんぴょんと跳びはねながら五輪会場を回って喜びを爆発させた。
五輪切符の争いは土井畑との一騎打ち。演技直前まで先に演技を終えたライバルがトップに立っていたが、結果は一切見なかった。「自分の演技をする」。少し空中でブレがあったが、世界トップクラスの大技「トリフィス」(前方3回宙返り、半ひねり)を2本決め「勝負強さはアピールできた」とうなずいた。
4歳の時、都内のイトーヨーカドーの屋上にあった200円で7分跳べるトランポリンで遊び、とりこになった。母・美香さん(49)には「次はいつ行けるの?」と毎日のように聞いた。すぐに教室に通い始め、小学生になるとアルバムには「夢はオリンピック選手になること」と書いていた。
転機は高校1年の11月。より良い環境を求め、12年ロンドン五輪代表の岸彩乃らを輩出する強豪・金沢学院大のクラブを拠点とするため、転校を決意。母も仕事を辞め、一緒に移住した。最初は不慣れな環境に耐えきれず「何度も帰りたいと思った」。泣きながら毎日、東京の友達に電話した。それでも「私は本当にバカですし、何もできないので、トランポリンしかない。決断は良かった」と振り返る。
練習場には「絶対にオリンピックの枠を取る」と目標を貼り、この日を迎えた。重圧と闘い「1か月くらいぐっすり眠れていなかった。勝手に涙が出てきた」。五輪を決めたここからが本当の勝負。「エースと呼ばれるためには勝ち続けないといけない」。約8か月後、この会場でもう一度、頂点に立つ。(小林 玲花)
◆森 ひかる
▼生まれとサイズ 1999年7月7日、東京都。20歳。159センチ
▼競技開始 4歳
▼主な成績 2013年の全日本選手権で、当時史上最年少の14歳(中2)で初優勝。17年世界選手権シンクロ銀メダル、18年世界選手権個人5位、シンクロで日本勢女子史上初の金メダル、19年世界選手権で日本勢男女通じ初の個人金メダル
▼趣味 ネイル。今大会は歌舞伎をイメージしたレオタードに合わせたデザイン
▼愛犬 トイプードルの「ジャンプ」。競技生活を支えてくれる癒やし
▼ご褒美 試合後は金沢にある回転寿司「すし食いねぇ!」に母と行く。好きなネタはサーモン
▼性格 負けず嫌い。幼い頃は父・博之さん(54)と勝つまで相撲をしていた
▼家族 両親と双子の兄