沢尻エリカ容疑者は再起不能なのか?…各テレビ局トップが次々と指摘した責任の重さ

各局トップが「責任感の欠如」を指摘した沢尻エリカ容疑者。その犯した罪は果てしなく大きい
各局トップが「責任感の欠如」を指摘した沢尻エリカ容疑者。その犯した罪は果てしなく大きい
07年9月の映画「クローズド・ノート」の舞台あいさつで「別に…」騒動を起こした際の沢尻エリカ容疑者
07年9月の映画「クローズド・ノート」の舞台あいさつで「別に…」騒動を起こした際の沢尻エリカ容疑者

 「エリカ様ショック」が各テレビ局を襲った。

 11月16日に合成麻薬MDMAの所持容疑で逮捕された女優・沢尻エリカ容疑者(33)。熾烈な視聴率争いの中、常に魅力的なキャスティングを模索し続けている各局にとって、今年3月に麻薬取締法違反で逮捕された俳優・ピエール瀧(52)、10月に多額の申告漏れと所得隠しが発覚し、活動自粛中の「チュートリアル」徳井義実(44)に続く一大スキャンダルだった。

 彼ら“旬の人気者”が突然、コースアウトすることが番組に及ぼす損害は甚大そのもの。今月下旬、各局で連日開かれた社長や制作トップの定例会見も沢尻容疑者らへの苦言と叱責の言葉であふれた。

 まずは沢尻容疑者逮捕により億単位の損害を被ったとされるNHK。同容疑者は当初、来年1月5日放送開始の予定だった通算59作目の大河ドラマ「麒麟がくる」(日曜・後8時)に斎藤道三の娘、後に織田信長の正妻となる帰蝶(濃姫)役で出演予定だった。

 位置づけは準ヒロイン。長谷川博己(42)演じる主人公・明智光秀とのシーンも多数あり、突然の逮捕劇で急きょ川口春奈(24)が代役を務めることになったが、撮り直しのため、放送開始は来年1月19日以降になることが決定。前代未聞の初回の2週以上先送りという事態に追い込まれた。

 20日の総局長会見。いつもは穏やかな笑みを浮かべ、質問に答えてくれる木田幸紀放送総局長が苦悩の表情を浮かべて言った。

 「沢尻さんには極めて重要な役を演じていただくことになっていました。すでに収録も進んでいる中での逮捕ということで大変、遺憾であると思っています」。

 ここ数年の大河ドラマは出演者の不祥事に続けざまに見舞われてきた。現在、放送中の「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」では逮捕を受け、ピエール瀧が降板。三宅弘城(51)を代役にして過去の出演シーンまで遡っての撮り直しを余儀なくされた。

 10月には東京五輪女子バレーボール監督の大松博文氏役で撮影も終了していた徳井に多額の申告漏れと所得隠しが発覚。その出演シーンの再編集作業を突貫工事で行うなど受難続き。18年の「西郷どん」でも女優・斉藤由貴(53)が不倫騒動で出演を辞退したため、南野陽子(52)が代役に。看板番組の大河ドラマでは3年連続での出演者の途中交代となっている。

 さらに、1977年の入局後、90年の大河「翔ぶが如く」演出、97年の同「毛利元就」制作統括など一環して制作畑を歩んだ“NHK放送全体の顔”と言っていい木田氏は沢尻容疑者に関して、「昔に比べて、事務所の管理など俳優、タレントを取り巻く環境が変わっているのか」と聞かれると、「こういうことが起こると、視聴者の皆様にとって残念なことだし、一緒にやっている出演者、スタッフも絶対、口にはしませんが、それはそれでショックだろうと思います。みんなが力を合わせて一つの作品が作られるわけですから、たまたま出演者のことが続きましたけれども、出演者だけでなく、スタッフもこうした仕事に関わる全ての人の夢を託されている仕事ですから。それを裏切らないように、しっかりと自分の責任を見つめて欲しいなと思います」と苦言を呈した。

 25日、日本テレビ・小杉善信社長(65)の会見でも、沢尻容疑者始め芸能界で続く不祥事について聞かれた同社長が「個々の判断ということですが、社会的な責任がおありになる方たちなので、出演する側の方に関しては自分たちの置かれている立場、責任をしっかりと自覚して、プライベートもやって欲しいなと思います」と返答。「責任」という言葉を、とても強調していたのが印象的だった。

 26日のテレビ朝日・亀山慶二社長(60)の会見も同様だった。

 同局では今年5月に5夜連続放送され、大きな話題を呼んだSPドラマ「白い巨塔」、昨年7月クールの「ハゲタカ」と沢尻容疑者がヒロインを務めていた。それだけに亀山社長も「今後の捜査を見守るが、逮捕されたことは大変残念です」と苦渋の表情でコメント。その上で「今後、(沢尻容疑者が)出演するものはありません。『白い巨塔』、『ハゲタカ』にはご出演いただいたが、逮捕を受け、テレ朝動画での配信は停止しています」と明かした。

 27日のTBS・佐々木卓社長(60)の会見では、温厚で知られる同社長らしく、「沢尻さんは大変、存在感のある女優さんで大変、残念に思っています」といったん、その演技力をほめた上で「芸能人の方は多くの方に夢を与えたり、元気づける、人を幸せにする人です。そういう責任を持って欲しいなと思います」。こちらも「責任」という言葉を口にした。

 そして、28日のテレビ東京・小孫茂社長(68)の会見。日経新聞の編集局長出身で常に取材する側の気持ちに立って真摯に答えてくれる同社長がどんな言葉で沢尻容疑者らを“斬って”くれるか。そんな狙いで、私は聞いてみた。

 「他局にない先鋭的なキャスティングでヒット作を生んできたテレ東だけに、沢尻容疑者のように放送直前の不祥事で降板ということになると、今後、怖くて大胆なキャスティングができなくなるのでは?」―。

 いつも通り、こちらをじっと見つめた同社長は「一人ひとりの演者さんのリサーチをすると言っても限度があるし、どこにリスクがあるかは分かりません。だからこそ信頼関係以外にないと思っています。私たちテレビ局、制作会社、プロダクション、演者さん一人ひとりとの信頼関係の中でそういうリスクをどうやって回避していくか。業界の課題として、もう一回、演者さんを含めての信頼関係を始めの一歩にする。改めてお互いに確認し合うことしかあり得ないと思う」ときっぱり。

 続けて「このところ残念な出来事が多いので、いろいろな場でいろいろな形で注意しているが、特効薬はない。信頼関係の中でそれぞれが責任をきちんと果たしていく覚悟。それのみがテレビ局のドラマ、バラエティーなど全てを支えていると思っています」と一気に答えてくれた。

 この言葉に大いに胸を揺さぶられたので、さらに聞いてみた。

 「そうした信頼関係、期待を裏切った形の沢尻容疑者ら演者を一般論として、どう思いますか?」―。

 今度もメガネの奥の目をギラリと光らせた同社長は「私たちは直接、影響を受けていないので、個々の方をどうこう言う立場にはないと思いますが…」と前置きした上で「一言で言うと、皆さん、それぞれに責任を抱えておられますよね。我々放送する側もそうですが、相互に責任をきちんと自覚して生きていかなければならないと言うことなのではないでしょうか。この方々でなければ演じ切れない役柄もあったと思うので、本当に残念だなと思います。その役柄は二度と見られないということなので…」と「責任の自覚」という言葉を使って、ストレートに答えてくれた。

 そして、しんがりは29日に会見したフジテレビ・遠藤龍之介社長(63)だった。05年放送の同局系ドラマ「1リットルの涙」や14年の「ファーストクラス」などで主演を務めてきた同容疑者だけに、いつもは明るい返答で場を盛り上げてくれる同社長も、まず「う~ん」とうなった後、「大変に有望な女優さんでしたからね…。残念だなと、それに尽きてしまう。本当に青天の霹靂でした」と話した。

 遠藤社長の寂しげな表情にキャスティングの難しさを感じたから、私は編成担当の石原隆取締役に聞いてみた。

 「先月の徳井さんにしろ、旬の人気者が突然、コースアウトする現状では突然の降板が怖くて、まっとうな起用ができなくなるのでは?」―。

 マイクを持った石原氏は「いろいろなキャスティングをする中で正直に申し上げますと、確実な、これをすれば絶対大丈夫という方法は見つかっていない。所属している事務所の方々との信頼関係において、彼らに預けるという方法しかない。我々が直接、出演者に何かをしたり、問いかけたりは現実的ではないので、現状では所属事務所との信頼関係を強めていくということしかないと考えています」と答えてくれた。

 どうだろう。各局トップが沢尻容疑者の女優としての実力は認めつつも、その「責任感の欠如」を断罪。さらに今後のキャスティングの難しさを漏らした言葉の数々。トップたちの失望の大きさと、にじみ出る怒りを知って欲しくて長々と書いてみた。

 こうして書けば書くほど、沢尻容疑者が裏切ったものの大きさに気づかされ、各局トップたちの後ろにいる数多くの制作者たち、さらに、その届ける作品を待つ多くの視聴者、そして、ファンの失望の大きさに思い至る。

 思い返せば、07年9月の主演映画「クローズド・ノート」の舞台あいさつで勃発した「別に…」騒動など、子供じみた全くかわいいものだったが、今回の薬物騒動は完全にアウトだ。

 今回、責任感の欠如から沢尻容疑者が犯した“罪“の本質とは…。それは女優として再起不能に追い込まれても全くおかしくない規模の“裏切り行為”。この1週間、各局トップの会見をハシゴ取材した私が知ったのは、その失望と悲しみの深さだった。(記者コラム・中村 健吾)

各局トップが「責任感の欠如」を指摘した沢尻エリカ容疑者。その犯した罪は果てしなく大きい
07年9月の映画「クローズド・ノート」の舞台あいさつで「別に…」騒動を起こした際の沢尻エリカ容疑者
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