【報知映画賞】中井貴一、デビュー秘話も語った 報知映画賞主演男優賞

本紙インタビューに答える中井貴一
本紙インタビューに答える中井貴一

 中井に聞く

 受賞を聞いた時の感想は?

 「日本だけではなく、世界でもなかなかコメディーを評価してくださることはないと思うんです。でも役者にとっては、悲劇をやる以上にとても難しいんです。コメディーで受賞させて頂けた、というのが1番うれしかったかもしれないです。難しいことを軽やかに演じるということを、この何年か自分の中に課してきていたんです。今、自分が学ぶべき時なんじゃないかと思って仕事をしてきたので、それを見ていただけたんだなと思って、とてもうれしく思います」

 報知映画賞の受賞は94年の助演男優賞以来、25年ぶり。思い出は?

 「ウチの両親はずっと報知をとっていて、報知映画賞の記事も目にしていたので、とてもすごい賞なんだという意識がある。なので助演男優賞をいただいた時、すごくうれしかった記憶があります。毎日読んでいる新聞なので、映画賞ってこれだけしかないんじゃないかと思うぐらいでしたから」

 三谷監督に、何でもやるから妥協をしないでくれとお願いしたと聞いたが?

 「この話を受けた時、1番最初に僕は三谷幸喜を男にしたいと思ったんです。三谷さんて、ああ見えていろんなバランスを考えている。予算もしかり、時間を守ることもしかり、自分への制約を大切にしている。ただ、そこで何か妥協が入ってしまうと、いいものはできない。役者と言うのは苦労することが商売。そこは譲らないで下さいとお願いしました。三谷さんが監督として評価されてもらいたいと言う思いが強かったんです」

 三谷監督はどんな人ですか?

 「同い年でこの世界にいて、三谷さんは仕事の面においては天才だと思う。俺は体育会系で、三谷さんは文化系と、小学校の頃に会ったら『なんだこいつ』と思ったかも知れないけど(笑い)、楽しい時間を共有できる。植木等さんが好きだとか、不思議となんか一緒なんですよ。この作品では三谷幸喜ここにあり、俺らの世代の天才がここにいるんだというのを見せたかった」

 試写は見ない主義。今回も見なかった?

 「必ず公開してすぐに劇場に行くんですが、今回は3日間満員で入れなかったんです。平日の朝1番の回で見たけど、それでも半分以上入っていた。意外と見にくい席で見ましたよ。とてもありがたいことなんですけどね」

 公開前に試写を見ると落ち込むからと言っていましたが、今回も落ち込んだのですか?

 「落ち込みました。三谷さんに、大変申し訳ありませんでしたとメールしました。自分の足りないところばかりが見えてしまって。実は、浅丘ルリ子さんが見に行って下さって、ものすごい面白かったと電話をくれたんです。僕は一昨日見たんですが、まだ足りないところが多くて…と言ったら、失礼よって怒られたんです。私たちは面白かったって言ってるのに反省するってどういうこと? 傲慢よって。反省するのが傲慢って(笑い)。欲なんでしょうね。なんでここで1息呑んだんだろうとか、ああしておけばよかった、とか思ったりする。一生自分の芝居に満足できないというか、自分に自信がないんです」

 子供の頃、俳優になるとは微塵も思ってなかったと言ったが、なぜですか?

 「基本的に人見知りで赤面症。セリフを覚えて人前で何かをするなんていう事は到底考えられない事でした。社会の年表すら覚えられない人間がセリフなんて覚えられるわけないと言う意識もあった」

 お父さんが俳優でも?

 「父は、皆さんの前から美しいままま消えたじゃないですか。当時は父と似てなかったので、僕は子供の頃から、お父様は二枚目だったのにね、と言われるわけです。お父様『は』という事は、あなたはそうじゃないと言われてるんだなと、刷り込まれてきてる。俳優は二枚目がなるもんなんだろうと思っていて、俺はなれないんだろうなと。育ちながら、将来の選択肢から俳優を消したんだと思います」

 しかし、佐田さんの17回忌で、松林宗惠監督にスカウトされてデビューしました。

 「いきなり『あんたや!』って言われて、なんだろう?このおじさんと思って。法事の間もずっと見てる。お袋に、あの人誰?って言ったら映画監督の人よって言われて。あんたを使いたいみたいな話をしてたと言われた。お袋からは会って自分で決めろって言われて。断るつもりで会いに行ったら、やるって言っちゃった。自分でも意味がわからないんですが。松林さんの誘導がうまかったんでしょう。『親父は、あんたにやってもらいたいんじゃないかと思ってるんだ』とか言われた気がする。話が長くて、どっかで面倒くさくなったのかな(笑い)」

 自分では二枚目とは思っていないのですか?

 「全く違うと思う。報知で『父譲りの二枚目の息子がデビュー』って出た時、二枚目って言われたことがないから自分が一番驚きました。切り抜いてみんなに見せましたもん。父とは違う、と思っていたから、今、役者がやれているのかなと思います。本当に二枚目だったら役者をやれてないと思う。自分で磨かなきゃいけないものがある、という気持ちがあったからやってこれた。父も二枚目と言うのがとっても嫌だったみたいです。父がもらったのは主演の賞でしたが『主演は立っててもとれる、助演は芝居をしないと取れないんだ』と言っていたと。父は父なりに二枚目と言われることに対して、芸をほめられていないと思っていたんでしょうね。報知で助演男優賞を頂いた時は、親孝行できたのかな、天国に持っていけるものができたのかなと思ってうれしかった思い出があります」

 今回は主演男優賞の受賞となりましたが?

 「頂けたのは、みんなに支えてもらったと言うのが大きいです。今回であるならば、最も感謝するのは美術スタッフ。びっくりする位のセットで、一歩足を踏み入れたら、中井さん、あなたは総理ですよ、と言ってくれるセットなんですよ。引き出しを開ければ全部の書類に(首相の)ハンコが焼きごてで押してある。(アドリブで)好きなものを出して下さいと言われて。涙が出ますよね。映画の現場ってやっぱりアナログなんです。人の魂みたいのが人の気持ちを作り、それがお客様に対する気持ちをかきたてていくと思います」

 役者の仕事は明確な答えがない、だから続けると言っていたが?

 「デジタルになり得ない、五感をフルに使わなければならない商売が俳優。役者がいかにアナログでいられるかがとても大事。アナログほど不安定なものはない。不安定だからこそ終わりがない。だからやめ時がわからない」

 来年で俳優生活40年になるが?

 「20代の頃、今の俺ら世代の先輩を見た時、若いんだからやれって言われないし、あの年代になったら楽になってくんだろうなと思っていたけど、逆だということが最近、分かってきた。肉体も脳も衰えていくけど、20代で生き生きしてる人たちとタイマンを張って、大きなスクリーンに映り込まなきゃいけない。若い頃の4倍も8倍も努力をしないとタイマンを張れないんだと、この年になるとわかる。先輩たちも意外と辛い思いをして胸を貸してくれたのかもしれないなと」

 趣味のようにしょっちゅうお墓参りに行かれると?

「落ち着いたらまた行こうかなと思います。この先どんな風になっても、絶対、親父には勝てないと思うんです。周りの方がどう褒めてくださっても抜けない。持論ですが、創造主に子供は絶対に勝てないんです。まだまだ足元にも及ばないけど、こういう賞をいただいたと報告したい。もっと頑張れっていってくれるのかな。役者って変な商売で、過去の栄光や印税で飯を食えないんです。今輝かないと飯を食っていけないし、お客様に夢を与えることができないんです。僕はよく恥をかくようにして生きたい。笑われるかもしれないけど、チャレンジをしながら今を生きることを、これから先も大事にしていきたいなと思います」

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