今年の映画賞レースの幕開けを飾る「第44回報知映画賞」の各賞が27日、発表された。表彰式は12月中旬に都内で行われる。
「キングダム」で監督賞に選ばれた佐藤信介監督(49)が国内の映画賞を受賞するのは今回が初めて。「とにかく苦労が多い撮影で、ヒットや賞をもらいたいと頭の隅にかすめることもなく、まっすぐ作った。皆さんに気に入ってもらい、表彰もしていただいて、一つ一つが新鮮。ものすごくうれしい」と喜びもひとしおだ。
累計発行部数4000万部超の原泰久氏の歴史漫画が原作。秦の王宮、独自の文化を築く山の民の城など紀元前245年の中国の風景を見事に再現した。壮大な世界観に「どうせCGで描いたんでしょ?」という声も聞こえたが、一番手間がかかったのは、王宮の隅っこや信(山崎賢人)が暮らしていた小屋の一部をCGで付け加えた作業。「一番すごいところは誰にもばれていない。それを作った最大の功労者たちの努力が最終的には消え、苦労が分からないところがいい」とニヤリ笑った。
興行収入50億円を突破し、今年の邦画実写映画で1位を記録。続編は「やりたい」と前向きで「一読者として成虫喬(せいきょう、本郷奏多)がもう1回出てくるところを見たい。原作で泣いたし、もしできたら僕は立てなくなるでしょう。あとは城攻めだけを描いても楽しいかも」。監督の“中華統一”の戦いは、まだまだ続きそうだ。(水野 佑紀)
◆佐藤 信介(さとう・しんすけ)1970年9月16日、広島県生まれ。49歳。94年、武蔵野美術大学在学中に手掛けた短編映画「寮内厳粛」でぴあフィルムフェスティバルグランプリを受賞。2001年「LOVE SONG」で商業映画監督デビュー。代表作は「GANTZ」(11年)、「図書館戦争」(13年)、「アイアムアヒーロー」(16年)など。
◆キングダム 中国春秋戦国時代、中華西方の秦の国で戦争孤児の信(山崎)と漂(吉沢亮)は天下の大将軍を目指し、日々鍛錬を積んでいた。ある日、王都の大臣・昌文君(高嶋政宏)に召し上げられ、漂のみ王宮で使えることに。しかし、王宮では王の弟(本郷)によるクーデターが勃発。ひん死の致命傷を負った漂から頼まれた場所に信が出向くと、そこには漂にそっくりな若い王(吉沢=二役)がいた。
▼監督賞 荒井晴彦、石川慶、真利子哲也を推す声も挙がったが、1回目の投票で佐藤信介が過半数に。「このスペクタクルはハリウッド級だ」(見城)、「原作の大ファンだが、原作に負けない映画で結果を出した」(藤田)、「原作をよくまとめていた」(LiLiCo)。